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青の章
青の章20
しおりを挟む 方向を変えて少し進むと、何とも言えず芳しい香りが漂ってきた。
(何ダロウ?コノ香り知ッテル気がスルーー)
下を見下ろして見ると、青紫色の花畑が広がっている。綺麗な花畑だ。
これも壊そうと思い雷を落とそうとしたが、なぜか雷を落とすことができない。
自分の身体の問題かと、近くの森に尾を振ればたちまち轟音とともに雷が落ちた。
(ナンデダ?)
自分の使命は、この世界を半分破壊することだ。その為に自分を含めた四神が霊獣として、この世界に降臨した。それ以外に自分にとって大事な事はないのだ。
(本当にそうだっけ? )
ふいに、まるで人間のような声が自分から聞こえてきた気がした。
今の声は何だろうと耳を澄ますと、突如下の方から、違う人間の声が聞こえてきた。
「葵──!」
声がした方を見下ろすと、赤い大きな鳥の背に乗った青年が、紫色の髪をたなびかせ自分に向かって大声を上げている。
「葵っ、聞こえるか!? ええい、もっと近くに寄れないのか!?」
「ちょっと、毛を引っ張らないでよ! 無理だよ。今のアオちゃんの雷くらったら、いくら王様でも死んじゃうよ!」
(アレは、朱雀ダ。上にイル人間ハ? 誰ダ?)
「ええい!まだるっこしい!! 」
その人間は朱雀の背から飛び降りると、自分の真下まで走って近づいてくる。
「ちょっと、王様!? 何やってんの!? 」
「葵! どうした!? また喋れなくなってしまったのか!? では、あの合図はどうだ!? 俺の龍だという、あの瞬きの合図は!? 」
(──瞬キ?)
瞬きって、何ダッケ?
(俺とあの人だけの大事な約束)
またしても、自分の中から声が聞こえた。
そうだ、俺は瞬きを知っている。
でも何故瞬きなんて。
紫の瞳が真っ直ぐに自分を見つめる。
何でこの瞳を見ていると、こんなにも心がざわつくのだろう。
なんとなく、このおかしな人間が言うことが気になって、試しに一つ瞬きをしてみた。
紫の髪の人間は固唾を飲んでじっとこちらを見つめてくる。
不思議な色合いのその瞳をもっと近くで見てみたい。
ググっとその人間の近くに寄りながら、もう一度瞬きをしてみた。
近くで見てみると、その紫色の瞳が大きく揺らいでいる。
(ああ、また──)
葵は最後にもう一つ瞬きをする。
「葵!!」
大きく腕を広げたフェイロンの胸の中にフワリと飛び込むと、思ったよりも力強く抱きしめられた。
「フェイロンったら──、また泣きそうになってるじゃないか」
自分こそ何だか泣いているような声が出てしまった。いつの間にか硬い鱗から柔らかな肌へと変化した手でフェイロンの頬を撫でる。
「泣きそうにもなるだろう。お前とまた再会出来たのだ」
フェイロンは優しい声音で葵を胸に抱きながら、額に優しく唇を落とした。
懐かしく芳しい紫龍草にも似たその香りを胸いっぱいに吸いながら、暫しその感触に酔いしれる。
二人でしばらく見つめ合った後、ずっと気になっていた疑問を口にした。
「今まで何処にいたの? それに、何故朱雀に乗って…… 」
(何ダロウ?コノ香り知ッテル気がスルーー)
下を見下ろして見ると、青紫色の花畑が広がっている。綺麗な花畑だ。
これも壊そうと思い雷を落とそうとしたが、なぜか雷を落とすことができない。
自分の身体の問題かと、近くの森に尾を振ればたちまち轟音とともに雷が落ちた。
(ナンデダ?)
自分の使命は、この世界を半分破壊することだ。その為に自分を含めた四神が霊獣として、この世界に降臨した。それ以外に自分にとって大事な事はないのだ。
(本当にそうだっけ? )
ふいに、まるで人間のような声が自分から聞こえてきた気がした。
今の声は何だろうと耳を澄ますと、突如下の方から、違う人間の声が聞こえてきた。
「葵──!」
声がした方を見下ろすと、赤い大きな鳥の背に乗った青年が、紫色の髪をたなびかせ自分に向かって大声を上げている。
「葵っ、聞こえるか!? ええい、もっと近くに寄れないのか!?」
「ちょっと、毛を引っ張らないでよ! 無理だよ。今のアオちゃんの雷くらったら、いくら王様でも死んじゃうよ!」
(アレは、朱雀ダ。上にイル人間ハ? 誰ダ?)
「ええい!まだるっこしい!! 」
その人間は朱雀の背から飛び降りると、自分の真下まで走って近づいてくる。
「ちょっと、王様!? 何やってんの!? 」
「葵! どうした!? また喋れなくなってしまったのか!? では、あの合図はどうだ!? 俺の龍だという、あの瞬きの合図は!? 」
(──瞬キ?)
瞬きって、何ダッケ?
(俺とあの人だけの大事な約束)
またしても、自分の中から声が聞こえた。
そうだ、俺は瞬きを知っている。
でも何故瞬きなんて。
紫の瞳が真っ直ぐに自分を見つめる。
何でこの瞳を見ていると、こんなにも心がざわつくのだろう。
なんとなく、このおかしな人間が言うことが気になって、試しに一つ瞬きをしてみた。
紫の髪の人間は固唾を飲んでじっとこちらを見つめてくる。
不思議な色合いのその瞳をもっと近くで見てみたい。
ググっとその人間の近くに寄りながら、もう一度瞬きをしてみた。
近くで見てみると、その紫色の瞳が大きく揺らいでいる。
(ああ、また──)
葵は最後にもう一つ瞬きをする。
「葵!!」
大きく腕を広げたフェイロンの胸の中にフワリと飛び込むと、思ったよりも力強く抱きしめられた。
「フェイロンったら──、また泣きそうになってるじゃないか」
自分こそ何だか泣いているような声が出てしまった。いつの間にか硬い鱗から柔らかな肌へと変化した手でフェイロンの頬を撫でる。
「泣きそうにもなるだろう。お前とまた再会出来たのだ」
フェイロンは優しい声音で葵を胸に抱きながら、額に優しく唇を落とした。
懐かしく芳しい紫龍草にも似たその香りを胸いっぱいに吸いながら、暫しその感触に酔いしれる。
二人でしばらく見つめ合った後、ずっと気になっていた疑問を口にした。
「今まで何処にいたの? それに、何故朱雀に乗って…… 」
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