【R18】どうか、私を愛してください。

かのん

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その後の話

引き寄せるカギ

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遥人がいなくなって
新居に住むのはつらくなって……
だけど遥人の温もりは感じたい。
自分でも矛盾なことを言っているのはわかっているけど
まだ遥人への思いを整理できずにいた。



遥人の両親は今の家に住んでいるの辛いと
遥人にとっての実家を手放して日本へ帰ってしまった。



うちの両親はずいぶん前に離婚をして母親だけ日本へ戻っていた。
父親はまだ現役で仕事をしていたけどまた日本へ戻ることになった。




「お前も日本に一緒に戻らないか?」



日本へあれだけ戻りたいと願っていたのに
戻ろうという気にはならなかった。



日本へ戻ったら遥人との思い出はないからすべて消えてしまいそうで怖かった。



「私、帰らない。」




遥人との思い出が詰まったあの家に帰るのも辛いけど
まだこの新居よりはいい。
この新居は遥人と一緒に暮らした部屋だから思い出がありすぎる。



引っ越すにしても遥人のものも片づけないといけなくて
ついついこんな風に独り言を言ってしまった。



「遥人、これいるの?」



話しかけたって返事は返ってこないのに……
遥人のは全部持って行こう。
まだ捨てる勇気がないから――




“ビ―――”




「はい……あ…圭吾……」




圭吾は私たちのあとに小学校にきた日本人で
遥人とは友達でバスケも遥人は圭吾の影響で始めた。



結婚する前は三人でよく遊びにも行ったりしたな……






「上がって。散らかっているけど。」



「本当に引っ越すんだな。」



「うん……」



「あの家に帰っても辛くないか?」



「……コーヒーでいい?インスタントしか今ないんだけど。」



「あぁ……うん。」



話題をそらしたのは明らかだったけど
何となくそらしたかった。
辛いと言ってもどうにかなるものではない。




「お葬式、来てくれてありがとうね。仕事忙しいのに。」



「いや……」



「あ、今日はどうしたの?」



「……あのさっ…」



「うん。」



「……まだ辛い時に渡すのどうかと思うんだけど、俺明日からまた仕事が忙しくて会えなくなるから。」




「何……これ?」



テーブルの上に差し出されたのは白い封筒で
【円花へ】と書かれている。
この字……わかってる。



遥人の字だってこと。



「嫌だ……いらないっ…」



「ごめんっ……まだそんな気持ちじゃないよな。けどこれ中身は鍵が入っているって言っていたんだ。」



「鍵……?」



「遥人の家のどこかにあるって……あの家売りに出ているんだろ?それなら早い方がいいと思ってさ…」



恐る恐る手を伸ばして封筒を開けてみると
中身は圭吾の言う通り鍵しか入っていない。



おもちゃの箱の鍵みたいな――



「円花に渡せばわかるって言って…俺がいなくなったあとに渡してほしいって言ってさ。」



「圭吾……」



圭吾だってこの手紙を渡されたときどんな気持ちだったんだろう?
友達だった人からいなくなった後に渡してほしいだなんて――
今日だってこの家にくるのは気が重かったはずだ。



そう思ったら自分の気持ちも少しは落ち着いてきた。



「さっきはごめんね、圭吾。」



「いや、当たり前だよ。だけど、そのカギ……心当たりあるのか?」



「……わかんない。でも急いで探さないと。」



「引っ越しもあるのに大丈夫か?」




「うん、大丈夫。忙しい方が気がまぎれるから。」



遥人の家の中に鍵がついている扉なんてなかった。
扉の鍵じゃないとなると一体何のカギなんだろう……
円花なら知っているってことは小さい頃に――
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