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その後の話
秘密。①
しおりを挟む「誠二を…助ける方法はないの?」
「これからどんどん手足の筋肉は動かなくなります。そして呼吸が…自分でできなくなります。」
「そんな……」
「呼吸器をつければ長く生きれるかもしれない。だけどきっと誠二君は…」
「はい、拒否しています。」
「どうして誠二は拒否しているの!?お金ならあるわ!!」
「お金の問題じゃありません!!!」
お金で解決できるような問題なら
そんなのとっくに解決しているし
この病気で苦しんでいる人はいなくなる。
誠二は……こんな人たちに囲まれて育ったんだ。
だから、誠二のことを真剣に考えて
愛してくれる美緒さんのことを自分以上に大事に思っているんだ。
「小さいころからほったらかしでしたよね?誠二から聞きました…初恋の人はお兄さんと結婚して自殺、二番目に好きなった人とは跡取りのために……でも好きになっちゃって、子供と美緒さんの幸せを願っているから会えないって…ずっと一人で我慢していたんです。」
美緒さんは涙を一筋流していたけど
真っ直ぐ私の方を向いて話を聞いてくれた。
この人の凛とした強さには、誠二だけじゃなくて
私も……心から憧れるよ。
「呼吸器をつけたら、介護の負担が増えます。誠二は、私でさえ介護されるのを嫌がっていました。だけど日本に帰りたいっていうので無理やり今回ついてきたんです。婚約者と名乗って――」
「誠二さん……」
だから、私のことなんて気にしなくていい。
ううん、もう美緒さんは気にしていないだろうけど。
「あとは美緒さんです。」
「私…?」
「病気を公にしたら美緒さんは誠二の介護をするっていうかもしれないって…美緒さんは誠一さんと家庭があるし、子供もいるから負担になりたくないし、自分と同じ経験をさせたくないって……」
「同じ経験って…?」
「愛する人を亡くす経験です。愛する人を亡くした悲しみを抱えて生きるのはつらい時もたくさんあります。私も……パートナーをALSで亡くしました。」
「円花さんが……」
「誠二は呼吸器をつけることを望んでいません。誠二は最後に美緒さんと子供に会ったら、自分を諦めるようにしてアメリカへまた帰る予定でした。だけど――」
「私がいけないの…私がっ――」
「慶子さん…?」
「母さん……弘樹が言っていたことは本当なの?誠二は本当にAB型なの?俺は…?俺も父さんの子じゃないのか?」
「慶子さん、もしかして……」
「誠一…あなたはあの人の子供よ。だけど誠二は…峰行さんのっ……」
「まさかっ……そんな…じゃあ俺の子がっ……」
「産まれたとき二人の血液型が違ってわかったわ。だけど誰にも言えなくて……だって峰行さんとは一度きり、夢だったお医者さんになったばかりだったし……」
誰もが違う形ではあるけど
誰かの幸せを願っていた。
誰かの幸せを願っているのに届かなくて
他の誰かを傷つける結果になってしまったなんて――
ほんの少しの歯車で
色んな人の人生がくるってしまったんだ。
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