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その後の話
幸せの崩壊。
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「誠二!どうしたの!顔色が真っ青だよ!」
誠二がなかなか帰って来ないから
きっと美緒さんとうまくいっているのだろう
そう思っていたが、誠二の手の怪我
そして顔の血色の悪さが
わたしの選択は間違っていたのだと痛感した。
「誠二!ソファで横になろ!」
ホテルまで気力で歩いていたようで
誠二は私に倒れ掛かってきた。
美緒さんの優しい香りと共に――
「……絵はすべて燃やしてきた」
手の怪我を治療していると
誠二がポツリとささやいた。
「そっか……」
「アメリカに――」
「誠二?」
アメリカに帰ろうと言うと思っていたが
左手で目を覆いながら、涙が眼のふちから流れていた。
「帰れない……いや……っ」
「何も言わなくていいよ」
「…………帰れないっ」
私は何があったかは聞かされていなかったから
この時は、ただ、美緒さんのことが恋しくなったのだと思っていた。
だけど、美緒さんと愛し合った後
実は、弘樹さんとあんなことがあったなんて――
あれから1週間、誠二は熱を出して寝込んでしまった。
色々と疲れも出てしまったようだ。
体はきついはずなのに、顔は以前より明るい感じがする。
「円花、本当にありがとう。こんな、身体まで拭いてもらって」
「当たり前でしょ、私はあなたの専属看護師よ」
「だけど、俺、円花に何もしてやれない」
「してあげることだけが、感謝の伝え方じゃないと思う。こうやって、言葉だったり、私がずっと人生で引っかかっていたことを、あなたと美緒さんは成し遂げてくれるんじゃないかって……そしたら私も、前に進める気がするの」
「円花、俺――」
誠二が何かを言いかけた瞬間、誠二の携帯が鳴った。
着信先は、誠一さんだった。
「電話、出れる?私が出ようか?」
「兄さんからってことは、緊急だと思うから」
誠二が電話に出ると、どうやら美緒さんも寝込んでいて、元気がないようだ。それで、せめて電話だけでも声を聴かせてほしいという内容だ。
誠一さんていう人は……すごく頭のいい冷静な人なのだろう。
だけど、今はきっとすごく傷ついている。
自分の力の無力さを感じているはずだ。
「美緒……?」
誠二が電話で美緒さんに話しかけてから
私は側にいないほうがいいと外に出ようとしたら――
誠二が私の手をギュッと握ってきた。
誠二の手が震えていて、手汗もすごい。
「美緒…美緒……」
誠二が頑張ろうとしているのだから
私も応援してあげたい。
大丈夫だよ、誠二。
何があっても、きっと、2人なら、3人なら
乗り越えられるんだよ。
ギュッと手を握り返して
誠二の顔を見つめた。
「愛しているんだ。」
この顔を美緒さんに見せてあげたかった。
誠二の目には涙が溢れ出ていて
美緒さんへの愛が止まらない。
誠二、頑張ったね。
私の役目は終わった。
それから、誠二の手を離して
私はコンビニや薬局に買い出しに行こうと準備をしていたら
「美緒、行って!!」
突然大きな声で驚いたが
電話の向こうできっと何かがあったのだろう。
あっけにとられていたら、今度は誠二が痙攣し始めたのだ。
「誠二!誠二!!!」
誠二がなかなか帰って来ないから
きっと美緒さんとうまくいっているのだろう
そう思っていたが、誠二の手の怪我
そして顔の血色の悪さが
わたしの選択は間違っていたのだと痛感した。
「誠二!ソファで横になろ!」
ホテルまで気力で歩いていたようで
誠二は私に倒れ掛かってきた。
美緒さんの優しい香りと共に――
「……絵はすべて燃やしてきた」
手の怪我を治療していると
誠二がポツリとささやいた。
「そっか……」
「アメリカに――」
「誠二?」
アメリカに帰ろうと言うと思っていたが
左手で目を覆いながら、涙が眼のふちから流れていた。
「帰れない……いや……っ」
「何も言わなくていいよ」
「…………帰れないっ」
私は何があったかは聞かされていなかったから
この時は、ただ、美緒さんのことが恋しくなったのだと思っていた。
だけど、美緒さんと愛し合った後
実は、弘樹さんとあんなことがあったなんて――
あれから1週間、誠二は熱を出して寝込んでしまった。
色々と疲れも出てしまったようだ。
体はきついはずなのに、顔は以前より明るい感じがする。
「円花、本当にありがとう。こんな、身体まで拭いてもらって」
「当たり前でしょ、私はあなたの専属看護師よ」
「だけど、俺、円花に何もしてやれない」
「してあげることだけが、感謝の伝え方じゃないと思う。こうやって、言葉だったり、私がずっと人生で引っかかっていたことを、あなたと美緒さんは成し遂げてくれるんじゃないかって……そしたら私も、前に進める気がするの」
「円花、俺――」
誠二が何かを言いかけた瞬間、誠二の携帯が鳴った。
着信先は、誠一さんだった。
「電話、出れる?私が出ようか?」
「兄さんからってことは、緊急だと思うから」
誠二が電話に出ると、どうやら美緒さんも寝込んでいて、元気がないようだ。それで、せめて電話だけでも声を聴かせてほしいという内容だ。
誠一さんていう人は……すごく頭のいい冷静な人なのだろう。
だけど、今はきっとすごく傷ついている。
自分の力の無力さを感じているはずだ。
「美緒……?」
誠二が電話で美緒さんに話しかけてから
私は側にいないほうがいいと外に出ようとしたら――
誠二が私の手をギュッと握ってきた。
誠二の手が震えていて、手汗もすごい。
「美緒…美緒……」
誠二が頑張ろうとしているのだから
私も応援してあげたい。
大丈夫だよ、誠二。
何があっても、きっと、2人なら、3人なら
乗り越えられるんだよ。
ギュッと手を握り返して
誠二の顔を見つめた。
「愛しているんだ。」
この顔を美緒さんに見せてあげたかった。
誠二の目には涙が溢れ出ていて
美緒さんへの愛が止まらない。
誠二、頑張ったね。
私の役目は終わった。
それから、誠二の手を離して
私はコンビニや薬局に買い出しに行こうと準備をしていたら
「美緒、行って!!」
突然大きな声で驚いたが
電話の向こうできっと何かがあったのだろう。
あっけにとられていたら、今度は誠二が痙攣し始めたのだ。
「誠二!誠二!!!」
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