【R18】どうか、私を愛してください。

かのん

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誠二さん、どうか私を愛してください。

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「円花さん!」



「誠一さん……」



「誠二がいなくなったって…?」



「そうなんです…美緒さんも一緒に……」



誠二と二人きりにしたのがよくなかったのか……
そんな考えが頭をよぎった。



「まさか二人……変な事考えていないですよね?」



「……大丈夫だ。誠二はわからないけど美緒はきっと止めるはずだ。」



「でももう夜中だし、一体どこへ…お財布は持って行ったみたいだけど携帯を置いて行っているのよ。」



円花から手渡された携帯に触れると画面が明るくなって文字が出てきた。
一番上には【誠一さんへ】と書かれている。



「心配しないで、必ず帰ってくるから永一をお願いしますって書かれている。」





「本当……?よかった…」



「円花さんはどこに泊まっているんだ?そこまで送っていくから。」



「まだ今日のホテルは借りていないし、いつ誠二が帰ってくるかわからないからここにいます。」



「そうか……」



「誠一さんは帰ってもいいですよ。永一君一人なんじゃないですか?」



「母に来てもらってるから大丈夫。」



「じゃあ……ちょっとそこで待っててください。」



円花が部屋から出ていって
綺麗に整えられた白いベッドを見ると
誠二と美緒はこんな風に座って話し合ったのかと想像してみた。
二人は――どういう結末を迎えるのだろうか?



「はい、お待たせ。」



円花から渡されたのは缶ビールで
袋にはたくさんのお酒が入っていた。



「俺は飲めないから……」



「じゃあなおさら飲んだほうがいいですよ。」



「なぜ?」



「飲んで本音で話し合いましょう、せっかくだから。」




「いや、ここは病院だから……」



「あ……そうだった。病院内ではダメですね。」



「……励まそうとしてくれたのか?」



「そうかもしれませんね。」



「君はどうなんだ?」



「え?」




「看護師として誠二を放っておけなかったのもわかるが、今の君は専属看護師とはいえそれ以上のことをしていると思うが……」



「……わからない。自分の気持ちなのに。」



「円花さん…」



「誠二本人のことが好きなのか、パートナーと重ね合わせているのか……」



「わかるよ、そのきもちは……」



「紗英さんって美緒さんにそっくりなんでしょ?誠二から聞きました。初めて会ったときは心臓が止まったって……」



「見た目はそっくりだよ。でも――」



「美緒さんには凛とした強さがあるんでしょ?」



「あぁ……」



「だから、離れていても、もう会えないかもしれないと思っても思い続けたんでしょうね。私なら……近くにいる優しい人に甘えたくなるもの。」



「誠二には伝えていないのか、自分の気持ち……」




「……自分の気持ちがハッキリとわからないって言ったけど、きっとたぶん誠二のことが好きなのよ。だからこそ言えないのよ。」



「後悔してもか?」



「私はね、誠二に生きてほしくて日本についてきたの。誠二を日本に連れてこないほうが後悔したと思う。」



「え…?」



「誠二は…呼吸器を嫌がっているけど私はやっぱりつけてほしい。つけて、生きてほしい。もちろん誠二の人生だから私なんかが止めれるわけがない。誠二の、美緒さんへの思いを聞いたら絶対会わせてあげたいって思ったの。美緒さんなら、誠二は変わるんじゃないかって……」



「あの二人の強い絆なら……か。」




「誠二が医師にALSって言われたとき何て言ったと思う?」



「……美緒に会いたいとか?」



「これで苦しまなくて済むって言ったわ。今まで誠二はずっと生き地獄だったの。人生で愛した二人の女性は誠一さんの妻で、ずっとずっと苦しかった。だから美緒さんにも自分を諦めてもらおうと……会ったら無理なくせに。」



手にいれたはずの紗英や美緒がそばにいるのにココロがなかった俺
ココロは手にいれても会えずに時を過ごした誠二
婚姻という紙切れに縛れた美緒



紗英と同じ過ちをしたいために
絡まった糸を一つほどいてあげればきっと皆楽になる。



美緒をこの家から出させてあげればきっと――
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