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スケッチブックの秘密。③
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「お母様。」
「あ…永一、入って。」
ドアの向こうから永一の声が聞こえてきて
永一に中に入るように促すと
ゆっくりと誠二さんをちらちらと見ながら入ってきた。
「あの……さっきはありがとうございました。」
「え…?」
「僕のことを守ってくれて……」
「この傷?」
「うん……あと……僕のお父さんなんですか?」
長い沈黙が流れて誠二さんも窓のほうに目をやって何も答えなかった。
きっと答える言葉を探しているのだと思う。
誠二さんは何て答えるのかな……
私も永一もひたすら誠二さんの言葉を待った。
「永一……お前を守ったのは俺じゃないよ。」
「え…?」
「お前を守ったのはお前のお母さんとお父さんだよ。」
「え?だから誠二叔父さんが…」
「あの時お母さんがお前のことを抱きしめて突き放した。お前のことを巻き込まないように――そして兄さん…お前のお父さんはお前のところに叔父さんが行かないように体を張って止めたんだ。お父さんもお母さんもお前のことを思って行動したんだ。」
「じゃあ誠二叔父さんは…?」
「俺はただただ叔父さんが持っているナイフのことしか考えていなかったから――親はいつも子供のことを思っているもんだよ。」
「本当?お母様?」
「……うん。」
誠一さんだって永一のこと本当に大事に思ってくれている。
それは誠二さんにもきっと伝わったんだと思う。
あの時大きな声で永一と叫んでいた声が私にも聞こえてきたから――
「俺はお前に愛情をあげることはできない。だけど叔父として自由を――お前がしたいことができるようにしてあげたいって思う。」
「これは……」
誠二さんのポケットから出された紙切れには永一と誠一さんが親子関係だと書かれている。
「あの紙は嘘でこっちが本物だ。俺は父親なんかじゃない。だから、お前は自信をもって夢に立ち向かうんだ。」
「はい!!」
これでいいんだ――
これでいい、もうこれからこの子にしてあげることはないんだから。
最後に父親らしくこの子を守り、この子のこれからの人生を守ってあげられるのならこれでいいんだ。
「このことは内緒だよ。」
「はい。」
最後の最後に美緒と永一と俺の三人家族の秘密をが持てたことが素直に嬉しい。
「誠二さん、あの紙――」
「永一が大きくなったら怒るだろうな。偽物だからあれは――」
「永一に言わなくてよかったんですか?」
「いいんだ、これで――これでいい。自己満足だけどこれでいい。」
永一は誠一さんと家に帰ってしまい、
誠二さんとまた二人きりになった。
消灯時間だから私も帰らないといけない。
だけどまだ話は終わっていない。
「美緒、お願いがあるんだ。」
「何ですか?」
「ここから俺を連れ出して。」
「え…?」
「今は一分一秒でも美緒といる時間が惜しいんだ。」
前は私が連れ出してほしいと言ったのに
なんだか不思議な気分だけど二人で病室を出た。
病気のことを忘れて、どこか遠くへ、二人だけで行きたかった。
「あ…永一、入って。」
ドアの向こうから永一の声が聞こえてきて
永一に中に入るように促すと
ゆっくりと誠二さんをちらちらと見ながら入ってきた。
「あの……さっきはありがとうございました。」
「え…?」
「僕のことを守ってくれて……」
「この傷?」
「うん……あと……僕のお父さんなんですか?」
長い沈黙が流れて誠二さんも窓のほうに目をやって何も答えなかった。
きっと答える言葉を探しているのだと思う。
誠二さんは何て答えるのかな……
私も永一もひたすら誠二さんの言葉を待った。
「永一……お前を守ったのは俺じゃないよ。」
「え…?」
「お前を守ったのはお前のお母さんとお父さんだよ。」
「え?だから誠二叔父さんが…」
「あの時お母さんがお前のことを抱きしめて突き放した。お前のことを巻き込まないように――そして兄さん…お前のお父さんはお前のところに叔父さんが行かないように体を張って止めたんだ。お父さんもお母さんもお前のことを思って行動したんだ。」
「じゃあ誠二叔父さんは…?」
「俺はただただ叔父さんが持っているナイフのことしか考えていなかったから――親はいつも子供のことを思っているもんだよ。」
「本当?お母様?」
「……うん。」
誠一さんだって永一のこと本当に大事に思ってくれている。
それは誠二さんにもきっと伝わったんだと思う。
あの時大きな声で永一と叫んでいた声が私にも聞こえてきたから――
「俺はお前に愛情をあげることはできない。だけど叔父として自由を――お前がしたいことができるようにしてあげたいって思う。」
「これは……」
誠二さんのポケットから出された紙切れには永一と誠一さんが親子関係だと書かれている。
「あの紙は嘘でこっちが本物だ。俺は父親なんかじゃない。だから、お前は自信をもって夢に立ち向かうんだ。」
「はい!!」
これでいいんだ――
これでいい、もうこれからこの子にしてあげることはないんだから。
最後に父親らしくこの子を守り、この子のこれからの人生を守ってあげられるのならこれでいいんだ。
「このことは内緒だよ。」
「はい。」
最後の最後に美緒と永一と俺の三人家族の秘密をが持てたことが素直に嬉しい。
「誠二さん、あの紙――」
「永一が大きくなったら怒るだろうな。偽物だからあれは――」
「永一に言わなくてよかったんですか?」
「いいんだ、これで――これでいい。自己満足だけどこれでいい。」
永一は誠一さんと家に帰ってしまい、
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だけどまだ話は終わっていない。
「美緒、お願いがあるんだ。」
「何ですか?」
「ここから俺を連れ出して。」
「え…?」
「今は一分一秒でも美緒といる時間が惜しいんだ。」
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なんだか不思議な気分だけど二人で病室を出た。
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