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誠一VS誠二
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「兄さん……久しぶりだね。どうしたの急に実家に来るなんて。」
「誠一…どうしたの?」
「誠二が実家にいるって聞いて……母さんこそ気分はどうなの?」
「えぇ……誠二と話したら少し気分が晴れたわ…」
「ならよかった…」
一週間前ドア越しだったけど母親と話をしたときはか細い声だったけど
今日はまだ顔色もいい気がする。
だけど誠二と一体何を話したんだ……?
「じゃあ俺ホテルにいるから帰るよ。」
「誠二、あの……」
「また来るよ、母さん…今回は一時日本にいるから。」
「本当に…?」
「誠二、送っていくよ。」
「どこのホテルだ?」
「いいよ、歩いて帰るから。それより早くお義姉さんのところへ行ったら?倒れたんだしさ…」
「誠二…」
美緒のことを“お義姉さん”なんて呼んだことないくせに――
自分では他人行儀のつもりかもしれないが
それが余計に俺にとっては怪しく感じた。
「じゃあ、またね。」
「誠二!」
「……何?」
「どうして……帰ってきたんだ?」
「……だから入籍するためだって。」
「俺は騙されない。」
「は?」
「いくら離れて暮らしていたとはいえ、俺たちは双子だ。だからお前が今嘘を言っているのはわかる。10年前、お前は迎えに来るって――」
「変わったんだよ!!」
「変わったって…あの時は永一が20歳になったら美緒を――」
「兄さん。」
「え?」
「……兄さんにとってこの10年どうだった?」
「え?……長かったよ、正直。」
「どうせ言っていないんでしょ?俺が迎えに来るってことを――」
10年前のあの日――
朝早く家に戻ると誠二が荷物をまとめて外に立っていた。
『誠二…どうしたんだその荷物。』
『兄さんこそこんな朝早く帰ってきたの?まぁ、普通自分の妻がほかの男に犯されているっていうのに呑気にしてられないか。』
『それは……もう紗英みたいなことがあってはならないから。美緒がこの家で過ごしやすいためにもだ。』
『ふっ…俺たち双子なのに兄さんのことさっぱりわからないよ。』
『……お前にはわからないだろう。俺が長男だからとテレビの時間も友達と遊ぶ時間も恋愛も奪われる辛さを。』
『次男だからと家族と引き離されて言葉が通じない国へ行かされて、おまけに何もかも自分でしないといけない。愛する人も俺だってとられたんだ。』
『誠二……』
俺は勘違いしていたのかもしれない。
誠二はアメリカで俺にはない自由を堪能していると思っていた。
だけど自由ってものは誠二だってなかったかもしれない。
俺はこの家を出れば自由だと思っていた。
だけど誠二にとっては家にいて家族や紗英がいて
それが誠二にとっては自由な生活だったのかもしれない。
この家に産まれてきた瞬間から
俺たちはこの家に囚われていたんだ。
『だけど俺はもう美緒を抱くことはできない。』
『誠二?』
『俺は俺だって教えてくれた。だから美緒は紗英ではなくて美緒だ。美緒を……愛しているんだ。』
まさか誠二が……美緒のことを好きになるなんて思ってもみなかった。
しかも紗英に似ているからではなくて
美緒だから…美緒を愛しているだなんて――
俺はこんな真っすぐにも自分の気持ちをぶつける誠二に勝てるわけがない。
俺はもうこのとき誠二に敗北を感じていたんだ。
だけど、まだ俺だって諦めたくない。
美緒のことは俺だって俺なりに愛しているんだ。
『今から親父たちを説得して俺は美緒を連れてアメリカに行く。』
『待ってくれ!わかった…わかったから。だから落ち着いてくれ。』
誠二は本気だ。
本当にこのまま父親のところに行って美緒を無理やりにでも連れていくだろう……
『だけどもし美緒が妊娠していたらどうする?』
『それは……』
『無理にでもお前が美緒を連れていけば皆お前たちをずっと追っていくんだ。そんな生活を子供と一緒に生活するのは大変だろう?』
美緒がたった数日で妊娠している可能性はあまり思ってもみなかった。
だからなのか誠二も子供ができていたらということは考えないで行動していたようだ。
『一か月待ってくれ。』
『え…?』
『子供ができていなかったら、俺がちゃんと父さんを説得して離婚する。そのほうがお前たちだって好きに生きられるだろう?美緒のためだ、誠二……』
「誠一…どうしたの?」
「誠二が実家にいるって聞いて……母さんこそ気分はどうなの?」
「えぇ……誠二と話したら少し気分が晴れたわ…」
「ならよかった…」
一週間前ドア越しだったけど母親と話をしたときはか細い声だったけど
今日はまだ顔色もいい気がする。
だけど誠二と一体何を話したんだ……?
「じゃあ俺ホテルにいるから帰るよ。」
「誠二、あの……」
「また来るよ、母さん…今回は一時日本にいるから。」
「本当に…?」
「誠二、送っていくよ。」
「どこのホテルだ?」
「いいよ、歩いて帰るから。それより早くお義姉さんのところへ行ったら?倒れたんだしさ…」
「誠二…」
美緒のことを“お義姉さん”なんて呼んだことないくせに――
自分では他人行儀のつもりかもしれないが
それが余計に俺にとっては怪しく感じた。
「じゃあ、またね。」
「誠二!」
「……何?」
「どうして……帰ってきたんだ?」
「……だから入籍するためだって。」
「俺は騙されない。」
「は?」
「いくら離れて暮らしていたとはいえ、俺たちは双子だ。だからお前が今嘘を言っているのはわかる。10年前、お前は迎えに来るって――」
「変わったんだよ!!」
「変わったって…あの時は永一が20歳になったら美緒を――」
「兄さん。」
「え?」
「……兄さんにとってこの10年どうだった?」
「え?……長かったよ、正直。」
「どうせ言っていないんでしょ?俺が迎えに来るってことを――」
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朝早く家に戻ると誠二が荷物をまとめて外に立っていた。
『誠二…どうしたんだその荷物。』
『兄さんこそこんな朝早く帰ってきたの?まぁ、普通自分の妻がほかの男に犯されているっていうのに呑気にしてられないか。』
『それは……もう紗英みたいなことがあってはならないから。美緒がこの家で過ごしやすいためにもだ。』
『ふっ…俺たち双子なのに兄さんのことさっぱりわからないよ。』
『……お前にはわからないだろう。俺が長男だからとテレビの時間も友達と遊ぶ時間も恋愛も奪われる辛さを。』
『次男だからと家族と引き離されて言葉が通じない国へ行かされて、おまけに何もかも自分でしないといけない。愛する人も俺だってとられたんだ。』
『誠二……』
俺は勘違いしていたのかもしれない。
誠二はアメリカで俺にはない自由を堪能していると思っていた。
だけど自由ってものは誠二だってなかったかもしれない。
俺はこの家を出れば自由だと思っていた。
だけど誠二にとっては家にいて家族や紗英がいて
それが誠二にとっては自由な生活だったのかもしれない。
この家に産まれてきた瞬間から
俺たちはこの家に囚われていたんだ。
『だけど俺はもう美緒を抱くことはできない。』
『誠二?』
『俺は俺だって教えてくれた。だから美緒は紗英ではなくて美緒だ。美緒を……愛しているんだ。』
まさか誠二が……美緒のことを好きになるなんて思ってもみなかった。
しかも紗英に似ているからではなくて
美緒だから…美緒を愛しているだなんて――
俺はこんな真っすぐにも自分の気持ちをぶつける誠二に勝てるわけがない。
俺はもうこのとき誠二に敗北を感じていたんだ。
だけど、まだ俺だって諦めたくない。
美緒のことは俺だって俺なりに愛しているんだ。
『今から親父たちを説得して俺は美緒を連れてアメリカに行く。』
『待ってくれ!わかった…わかったから。だから落ち着いてくれ。』
誠二は本気だ。
本当にこのまま父親のところに行って美緒を無理やりにでも連れていくだろう……
『だけどもし美緒が妊娠していたらどうする?』
『それは……』
『無理にでもお前が美緒を連れていけば皆お前たちをずっと追っていくんだ。そんな生活を子供と一緒に生活するのは大変だろう?』
美緒がたった数日で妊娠している可能性はあまり思ってもみなかった。
だからなのか誠二も子供ができていたらということは考えないで行動していたようだ。
『一か月待ってくれ。』
『え…?』
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