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逃避行。①
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今までは上手に拓也をやってきた
これからも拓也をやるつもりだったけど――
もう限界だ
琴音をつれてどこか遠くに行くんだ
「すいません、若女将はどこにいますか!?」
「あら拓也さん…どうしたのその荷物?」
ボストンを抱えて気づけば走って割烹に来ていた。
「拓也さん一度家に帰ったの?」
「え?」
「だってさっき拓也さん来てくれて若女将が一緒にいるはずですけど…」
「あ、ちょっと拓也さん!?」
従業員の声を無視して奥へ入った
「…琴音?」
廊下の向こうに琴音が歩いているのが見える
「失礼いたします。」
和也はそっと琴音が入っていった部屋をのぞいてみる
「拓也先生、お待たせいたしました。」
「今日は忙しい?」
「すいません。指名が重なってしまって…だからまたすぐ他の部屋にいかないといけないんです。」
「なんか…変わった?」
「え?そうですか?」
「うん…お客さんにも言われるんじゃない?」
「はい。表情が明るくなったとか笑うようになったって…」
琴音は胸元に愛おしそうに手をおく。
「前は…この傷が嫌だったし人が怖くなってました。だけど今はこの傷が愛おしいんです。この傷があるから拓也先生に出会えたし、拓也先生と同じ傷がある。今はこの傷に…感謝しています。」
「琴音…」
“シャラン…”
拓也はにっこりと優しい笑顔の琴音の頬を手で包み込んだ
「ッ…」
拓也と琴音がキスするぐらい顔を近づけていったのをみて最後まで見れなかった。
「ハハッ…」
そうか…やっぱりそうだよな
結局俺がカミングアウトしたって
結局は琴音は拓也のことが好きなだよな
さっき琴音がなんて言っていったかハッキリは聞こえなかったけど
もうあの胸の傷で苦しまないでいるなら
俺はもう琴音の主治医でいる必要はない――
「拓也先生、ごめんなさい。ちょっと他の部屋に…」
「うん。がんばって。」
「はい。」
琴音が部屋を出てきたところを後ろから琴音の手を繋いで勝手口へ向かった。
「え!?拓也先生!?あの…私はあっちの部屋に…」
「…」
「あの…拓也先生…」
「若女将!?拓也さん…?」
玄関で別のお客の見送りをしていた大女将も慌てて駆けつける。
「どこ行くの!?ちょっと…」
“ポンッ…”
大女将の肩を叩いたのは拓也だった
「え…え!?今拓也さんと若女将が…」
「あれは拓也じゃないんです。和也なんです。」
「…どういうことなの?若女将はその和也さん…とどこへ行ったんです?」
「どこなのか俺にもわかりません。だけど俺からもお願いします。少しだけ…彼らに時間をあげてください。」
「だけど拓也さんはうちの娘のこと…」
「好きです。だけど彼女は…僕のこと何も思っていません。」
和也からみたら幸せそうに微笑んでキスをしたように見えたけど
本当は唇を近づけた瞬間琴音の体が硬直し怖がっているように拓也には見え、唇にキスはできなかった。
容姿がいくら似ていても
一人二役をしても…
琴音の本能は
和也のことが好きだっていっている
これからも拓也をやるつもりだったけど――
もう限界だ
琴音をつれてどこか遠くに行くんだ
「すいません、若女将はどこにいますか!?」
「あら拓也さん…どうしたのその荷物?」
ボストンを抱えて気づけば走って割烹に来ていた。
「拓也さん一度家に帰ったの?」
「え?」
「だってさっき拓也さん来てくれて若女将が一緒にいるはずですけど…」
「あ、ちょっと拓也さん!?」
従業員の声を無視して奥へ入った
「…琴音?」
廊下の向こうに琴音が歩いているのが見える
「失礼いたします。」
和也はそっと琴音が入っていった部屋をのぞいてみる
「拓也先生、お待たせいたしました。」
「今日は忙しい?」
「すいません。指名が重なってしまって…だからまたすぐ他の部屋にいかないといけないんです。」
「なんか…変わった?」
「え?そうですか?」
「うん…お客さんにも言われるんじゃない?」
「はい。表情が明るくなったとか笑うようになったって…」
琴音は胸元に愛おしそうに手をおく。
「前は…この傷が嫌だったし人が怖くなってました。だけど今はこの傷が愛おしいんです。この傷があるから拓也先生に出会えたし、拓也先生と同じ傷がある。今はこの傷に…感謝しています。」
「琴音…」
“シャラン…”
拓也はにっこりと優しい笑顔の琴音の頬を手で包み込んだ
「ッ…」
拓也と琴音がキスするぐらい顔を近づけていったのをみて最後まで見れなかった。
「ハハッ…」
そうか…やっぱりそうだよな
結局俺がカミングアウトしたって
結局は琴音は拓也のことが好きなだよな
さっき琴音がなんて言っていったかハッキリは聞こえなかったけど
もうあの胸の傷で苦しまないでいるなら
俺はもう琴音の主治医でいる必要はない――
「拓也先生、ごめんなさい。ちょっと他の部屋に…」
「うん。がんばって。」
「はい。」
琴音が部屋を出てきたところを後ろから琴音の手を繋いで勝手口へ向かった。
「え!?拓也先生!?あの…私はあっちの部屋に…」
「…」
「あの…拓也先生…」
「若女将!?拓也さん…?」
玄関で別のお客の見送りをしていた大女将も慌てて駆けつける。
「どこ行くの!?ちょっと…」
“ポンッ…”
大女将の肩を叩いたのは拓也だった
「え…え!?今拓也さんと若女将が…」
「あれは拓也じゃないんです。和也なんです。」
「…どういうことなの?若女将はその和也さん…とどこへ行ったんです?」
「どこなのか俺にもわかりません。だけど俺からもお願いします。少しだけ…彼らに時間をあげてください。」
「だけど拓也さんはうちの娘のこと…」
「好きです。だけど彼女は…僕のこと何も思っていません。」
和也からみたら幸せそうに微笑んでキスをしたように見えたけど
本当は唇を近づけた瞬間琴音の体が硬直し怖がっているように拓也には見え、唇にキスはできなかった。
容姿がいくら似ていても
一人二役をしても…
琴音の本能は
和也のことが好きだっていっている
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