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桜先生。⑤
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『パパの本で…何しているの?』
『あ…』
琴音に見られまいと薬をポケットにしまう。
『えっと…その…』
『パパ、どこに行ったか知ってる?』
『え…?』
『パパもママも昨日からお部屋に来てくれないの。』
『ママも…?』
そういえば琴音のお母さんも病院にいて…
『看護婦さんも先生も誰も教えてくれない…だから寂しくて…』
琴音の大きな瞳から涙がぽろぽろとこぼれだす。
『あ、な、泣かないで、ね?』
『うぅぅ~』
『ホラ…』
琴音に桜先生の机にあったティッシュを差し出す。
“ビクッ…”
琴音は近づいてきた和也に萎縮してしまう。
桜先生に琴音は同年代の子が苦手なことを言われていたのを思い出す。
『琴音、これ、見て。』
『え?』
『ほら、僕も同じ傷があるんだ。』
和也は自分の胸の傷を自分から見せる。
自分も同じ傷を持っているからこそ桜の痛みも少しはわかるつもりだということを示したかった。
『僕と琴音は仲間だよ。だから怖がらないで。』
『…うん。』
和也がもう一度琴音の頬に手を伸ばすと今度は萎縮せずに涙を拭かせてくれた。
『…もしかして和也君?』
『え?』
『だって私の名前知ってるし、パパの電話から聞こえてきた声と同じ…』
和也という名前は捨てたはずなのに
和也と名乗るべきなのか――
『僕――』
『そこで何をしている!?』
『お父さん…』
『桜の部屋に勝手に入っては…ッ!?君は桜の…』
『パパのこと知っているの?パパとママはどこなの…?』
『…大丈夫だよ。もう少ししたらママが迎えにきてくれるよ。』
『パパは…?』
『パパは…ちょっと遠くに行っていて…』
『すぐ帰ってくる?』
『…さぁ、部屋にもう戻ろう。』
『…拓也も戻るんだ。』
『はい…』
そうだ、俺はこの人の前では拓也なんだ――
『拓也君…?』
琴音が不思議そうに俺を見つめている。
『バイバイ。拓也君。』
そうだ、この日から俺のことを琴音は拓也って呼び始めたんだ
本当は和也だって声を大にして言いたかったけど
自分が選んだ道――
桜の中で短い間でも和也がいれてよかった…
『あ…』
琴音に見られまいと薬をポケットにしまう。
『えっと…その…』
『パパ、どこに行ったか知ってる?』
『え…?』
『パパもママも昨日からお部屋に来てくれないの。』
『ママも…?』
そういえば琴音のお母さんも病院にいて…
『看護婦さんも先生も誰も教えてくれない…だから寂しくて…』
琴音の大きな瞳から涙がぽろぽろとこぼれだす。
『あ、な、泣かないで、ね?』
『うぅぅ~』
『ホラ…』
琴音に桜先生の机にあったティッシュを差し出す。
“ビクッ…”
琴音は近づいてきた和也に萎縮してしまう。
桜先生に琴音は同年代の子が苦手なことを言われていたのを思い出す。
『琴音、これ、見て。』
『え?』
『ほら、僕も同じ傷があるんだ。』
和也は自分の胸の傷を自分から見せる。
自分も同じ傷を持っているからこそ桜の痛みも少しはわかるつもりだということを示したかった。
『僕と琴音は仲間だよ。だから怖がらないで。』
『…うん。』
和也がもう一度琴音の頬に手を伸ばすと今度は萎縮せずに涙を拭かせてくれた。
『…もしかして和也君?』
『え?』
『だって私の名前知ってるし、パパの電話から聞こえてきた声と同じ…』
和也という名前は捨てたはずなのに
和也と名乗るべきなのか――
『僕――』
『そこで何をしている!?』
『お父さん…』
『桜の部屋に勝手に入っては…ッ!?君は桜の…』
『パパのこと知っているの?パパとママはどこなの…?』
『…大丈夫だよ。もう少ししたらママが迎えにきてくれるよ。』
『パパは…?』
『パパは…ちょっと遠くに行っていて…』
『すぐ帰ってくる?』
『…さぁ、部屋にもう戻ろう。』
『…拓也も戻るんだ。』
『はい…』
そうだ、俺はこの人の前では拓也なんだ――
『拓也君…?』
琴音が不思議そうに俺を見つめている。
『バイバイ。拓也君。』
そうだ、この日から俺のことを琴音は拓也って呼び始めたんだ
本当は和也だって声を大にして言いたかったけど
自分が選んだ道――
桜の中で短い間でも和也がいれてよかった…
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