21 / 34
桜先生。④
しおりを挟む
『ゴホッ…』
『ん…拓也?』
『うっ…』
『苦しいの?桜先生呼ぼうか?』
拓也が弱弱しく頷く。
“プルルルル…プルルルルッ…”
『出ない…』
夜中だろうが電話したら必ず出てくれるのに…
『僕、桜先生のところに行ってくるから。』
『うん…ゴホッ…』
柏木先生――
どうしてだろう、なんだか胸騒ぎがする
本当は僕たちは部屋から出てはいけなかったけど
この日はお父さんに怒られることなんて頭には最初からなかった
ただ桜先生に早く会いたかった
“コンコンコン…”
ノックしても返事がない
『桜先生…?』
ドアを少し開けるとドアの隙間から桜先生が粉薬を飲んでいる姿が見える。
『桜先生!』
『和也君…』
『拓也がまた苦しそうで…桜先生もどこか病気なの?』
『いや、違うんだ和也君…』
『ごめんな、和也君…』
『桜先生?』
桜先生、どうして体震えているの?
どうして泣いているの?
『男と男の約束忘れるなよ?』
琴音の主治医になること――
『うん。』
『今からお父さんくるから…拓也のことも頼んだから…お父さんがきたらこれを渡してくれる?』
渡されたのは茶色い封筒
後ろには桜先生の名前が書いてある
『もうすぐお父さん来るから…それまで拓也君のそばにいて。』
桜先生の声がどんどん細くなるにつれて顔色も悪くなっていた。
『でも先生も顔色が…』
『大丈夫だから…ほら、早く…』
桜先生にそういわれて気になりつつ先生の部屋を出ようとする。
『和也君――』
『今日見たことは秘密だよ。』
桜先生の最後の言葉だった――
『拓也!』
父親がそれから慌てて部屋に入ってきた。
父親が拓也の処置が終わるのを待ってから桜先生の手紙を渡した。
『桜から…?』
いつも怒鳴られてばっかりだったけど
この日はさらに怒鳴られた
『なぜこの手紙をもっと早く渡さない!!』
父親が形相を変えて部屋を出て行った。
いつもと違う二人の態度や表情――
子供でも何かが起こっていることがわかる…
和也は父親の後を追ってみる
『桜!!しっかりしろ!桜!!!』
ほんの少し開いている扉から桜先生の部屋をのぞいてみると父親が桜先生を抱きかかえて呼びかけていた。
だけどもう桜先生の手は床についたまま――
『馬鹿だ…コイツは本当に馬鹿だ…』
なんでいつも怒っているお父さんが肩を震わせているの?
後姿しか見えないけど…桜先生みたいに泣いているの?
じゃあ、桜先生はもう――
『はぁッ…ハァッ…』
急に死に対する恐怖が強くなって
怖くなって走って自分の部屋に戻った。
違う、桜先生は死んでない
ただちょっと気を失っているだけ
父親がきっと助けてくれる、きっと…
きっと助けてくれるって
そう思いたかった――
だけど次の日から桜先生は部屋にこなくなった。
電話しても部屋に行ってもいなかった…
『桜先生…僕をおいて行っちゃったの?どうして…』
“カサッ…”
『これ…』
和也の足元にあったのはあの日桜先生が飲んでいた粉薬の袋
中には少しだけ薬が残っている
『この薬が…』
桜先生をつれていった薬
“ガサガサ…”
本棚にはたくさんの医療の本がある
もしかしたらここから何か手がかりが…
この薬がどんなものか――
『あなた…誰?』
『え…?』
後ろを振り向くと腰まである長い髪、桜色のパジャマ――
『琴音…』
会わないように気をつけていたのに
琴音に会ってしまったんだ――
『ん…拓也?』
『うっ…』
『苦しいの?桜先生呼ぼうか?』
拓也が弱弱しく頷く。
“プルルルル…プルルルルッ…”
『出ない…』
夜中だろうが電話したら必ず出てくれるのに…
『僕、桜先生のところに行ってくるから。』
『うん…ゴホッ…』
柏木先生――
どうしてだろう、なんだか胸騒ぎがする
本当は僕たちは部屋から出てはいけなかったけど
この日はお父さんに怒られることなんて頭には最初からなかった
ただ桜先生に早く会いたかった
“コンコンコン…”
ノックしても返事がない
『桜先生…?』
ドアを少し開けるとドアの隙間から桜先生が粉薬を飲んでいる姿が見える。
『桜先生!』
『和也君…』
『拓也がまた苦しそうで…桜先生もどこか病気なの?』
『いや、違うんだ和也君…』
『ごめんな、和也君…』
『桜先生?』
桜先生、どうして体震えているの?
どうして泣いているの?
『男と男の約束忘れるなよ?』
琴音の主治医になること――
『うん。』
『今からお父さんくるから…拓也のことも頼んだから…お父さんがきたらこれを渡してくれる?』
渡されたのは茶色い封筒
後ろには桜先生の名前が書いてある
『もうすぐお父さん来るから…それまで拓也君のそばにいて。』
桜先生の声がどんどん細くなるにつれて顔色も悪くなっていた。
『でも先生も顔色が…』
『大丈夫だから…ほら、早く…』
桜先生にそういわれて気になりつつ先生の部屋を出ようとする。
『和也君――』
『今日見たことは秘密だよ。』
桜先生の最後の言葉だった――
『拓也!』
父親がそれから慌てて部屋に入ってきた。
父親が拓也の処置が終わるのを待ってから桜先生の手紙を渡した。
『桜から…?』
いつも怒鳴られてばっかりだったけど
この日はさらに怒鳴られた
『なぜこの手紙をもっと早く渡さない!!』
父親が形相を変えて部屋を出て行った。
いつもと違う二人の態度や表情――
子供でも何かが起こっていることがわかる…
和也は父親の後を追ってみる
『桜!!しっかりしろ!桜!!!』
ほんの少し開いている扉から桜先生の部屋をのぞいてみると父親が桜先生を抱きかかえて呼びかけていた。
だけどもう桜先生の手は床についたまま――
『馬鹿だ…コイツは本当に馬鹿だ…』
なんでいつも怒っているお父さんが肩を震わせているの?
後姿しか見えないけど…桜先生みたいに泣いているの?
じゃあ、桜先生はもう――
『はぁッ…ハァッ…』
急に死に対する恐怖が強くなって
怖くなって走って自分の部屋に戻った。
違う、桜先生は死んでない
ただちょっと気を失っているだけ
父親がきっと助けてくれる、きっと…
きっと助けてくれるって
そう思いたかった――
だけど次の日から桜先生は部屋にこなくなった。
電話しても部屋に行ってもいなかった…
『桜先生…僕をおいて行っちゃったの?どうして…』
“カサッ…”
『これ…』
和也の足元にあったのはあの日桜先生が飲んでいた粉薬の袋
中には少しだけ薬が残っている
『この薬が…』
桜先生をつれていった薬
“ガサガサ…”
本棚にはたくさんの医療の本がある
もしかしたらここから何か手がかりが…
この薬がどんなものか――
『あなた…誰?』
『え…?』
後ろを振り向くと腰まである長い髪、桜色のパジャマ――
『琴音…』
会わないように気をつけていたのに
琴音に会ってしまったんだ――
0
お気に入りに追加
77
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ねえ、私の本性を暴いてよ♡ オナニークラブで働く女子大生
花野りら
恋愛
オナニークラブとは、個室で男性客のオナニーを見てあげたり手コキする風俗店のひとつ。
女子大生がエッチなアルバイトをしているという背徳感!
イケナイことをしている羞恥プレイからの過激なセックスシーンは必読♡
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?
すず。
恋愛
体調を崩してしまった私
社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね)
診察室にいた医師は2つ年上の
幼馴染だった!?
診察室に居た医師(鈴音と幼馴染)
内科医 28歳 桐生慶太(けいた)
※お話に出てくるものは全て空想です
現実世界とは何も関係ないです
※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます
お見合い相手はお医者さん!ゆっくり触れる指先は私を狂わせる。
すずなり。
恋愛
母に仕組まれた『お見合い』。非の打ち所がない相手には言えない秘密が私にはあった。「俺なら・・・守れる。」終わらせてくれる気のない相手に・・私は折れるしかない!?
「こんな溢れさせて・・・期待した・・?」
(こんなの・・・初めてっ・・!)
ぐずぐずに溶かされる夜。
焦らされ・・焦らされ・・・早く欲しくてたまらない気持ちにさせられる。
「うぁ・・・気持ちイイっ・・!」
「いぁぁっ!・・あぁっ・・!」
何度登りつめても終わらない。
終わるのは・・・私が気を失う時だった。
ーーーーーーーーーー
「・・・赤ちゃん・・?」
「堕ろすよな?」
「私は産みたい。」
「医者として許可はできない・・!」
食い違う想い。
「でも・・・」
※お話はすべて想像の世界です。出てくる病名、治療法、薬など、現実世界とはなんら関係ありません。
※ただただ楽しんでいただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
それでは、お楽しみください。
【初回完結日2020.05.25】
【修正開始2023.05.08】
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる