【R18】秘密。

かのん

文字の大きさ
上 下
9 / 34

サクラ。

しおりを挟む
「拓也先生、大丈夫かな…」



ストーリーが始まろうとした時――



“フワッ――”



私が嫌いだった…



でも好きになった消毒液の匂い



「拓也先生…」



「悪い…」



「いえ、戻ってきてくれて嬉しいです。」



よかった…ちゃんと戻ってきてくれて…



“トン…”



肩にかすかに触れる拓也先生の右腕が何だかくすぐったい…



さっきまで空席だった席にちゃんと拓也先生がいる



目の前には大好きな恋愛映画が大スクリーンで流れているのに



ちっとも内容が頭に入らない



友達もいなかった私が付き合ってほしいといってくれるこんな素敵な男性と映画だなんて…



「スーッ…」


左肩を見ると拓也がスヤスヤと寝息をたてながら気持ちよさそうに寝ている。



拓也の髪の毛が頬に触れてあまりに近くにいることに驚いて肩を動かしてしまった。



「ん…」



起こしちゃう!



動かないようにしないと…



余計に映画の内容が頭に入らない



左肩は重いけど



この重さが心地がいい



ずっと映画が終わらなきゃいいのに…



映画にも恋にも始まりがあれば終わりもある



だけど終わりのない恋を



拓也先生としたい――



「…先生…拓也先生。」



「ん…」



「映画終わりましたよ。」



「え…?寝てた?」



「はい。気持ちよさそうに…」



「ごめん…」



“ぐぅぅぅ…”



「…お腹空いたんですか?」



「朝から食べてなくて。」



「ふふ、ご飯食べに行きませんか?行ってみたいお店があるんです。」



琴音は映画館の近くのハンバーガーショップに入ろうとする。



「ここ?」



「はい。ハンバーガーが食べてみたくて…」



「食べたことないのか?」



「母がこういうの許してくれなくて…家では板前さんのご飯をまかないで食べるし…拓也先生は嫌いですか?」



「いや…別にいいけど。」



「じゃあここで♪」


琴音は嬉しそうにお店の中に入っていく。



「大人の初デートでハンバーガーショップって…」



普段は着物を着て大人っぽい琴音も子供っぽいところもあるんだな…



本当は俺も



俺の知らない琴音を知れて嬉しかったんだ



「ん~」



「どう?」



「た、食べにくいです…」



琴音は食べるのになれていないからか顔にはケチャップもマスタードもついていた。



「フッ…」



「え?」



「顔にいっぱいついてる。」



「え!?あぁ~今度はこっちが…」



今度はハンバーガーの中身が下に落ちてしまった。



「ハハッ…何やってんだよ。」



「すいません…」



「とりあえずハンバーガーは置いて。」



「はい。」


「ハンバーガーは中身がでないように袋で包んだまま食べるんだよ。」



「あ~だから拓也先生も袋から出していないんですね。」



「…これでいいだろう。」



頬についたケチャップやマスタードは拓也が手でぬぐってくれた。



「ありがとうございます…」



「また付くんだろうな。」



「そんなことないですよ…たぶん。」



「まぁ食べたいように食べればいい。またとってやるから。」



「…はい!」



周りからみれば私達は普通のカップルに見える二人だった。



「拓也先生、ご馳走様でした!」



「いや、ファーストフードとか別に…」



「美味しかったです♪」



「ならよかったけど…」



プラプラと歩いていると露店に髪飾りが置いてあった。



「拓也先生見てもいいですか?」



「あぁ…」



「これ可愛い…よいしょ…難しい…」



「何してるの?」



「あ…仕事のときに髪飾り探しているんですけど、髪の毛アップするからアップして確認してみたくて…」



“サラッ…”



「これでいい?」



「あ、ありがとうございます。」



拓也が琴音の髪の毛を持ち上げるのを手伝ってくれる。



「これは…?」



「え?」



拓也が髪の毛に刺したのは桜の花びらのかんざしだった。



「サクラ…」



「琴音にピッタリかなって…」



「これにします!」



「おじさん、これください。」



「兄ちゃんプレゼントかい?姉ちゃん、よかったな~」



おじさんが拓也からお金を受け取る。



「拓也先生いいんですか…?ありがとうございます!大事にします!」




あの日



あなたと色んな経験したこと



昨日のことのように思い出します



今日も



あなたにプレゼントしてもらった



このサクラのかんざしを頭にさして



私は若女将をしています



このかんざしをさしていると



あなたと一緒にいられる気がするんです…
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

〈社会人百合〉アキとハル

みなはらつかさ
恋愛
 女の子拾いました――。  ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?  主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。  しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……? 絵:Novel AI

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

処理中です...