64 / 66
先生ver.
運命の人②
しおりを挟む
「先生、すいません、俺…」
川端から奈々がいる高校を教えてもらって、今度のみにいこうという約束をして電話をきった。
いい報告だけを待っていると言われながら――
「私も君の幸せを願っているよ。」
奈々を先生にみてもらった日
母親が俺の幸せを願っていたと教えてくれた
やっぱり先生には小さいころからお世話になっているから
母親にどこか似ている俺をずっと見てきたから
俺の本当の気持ちが何も言わなくてもわかったいたのだろう
あの日みたいに何もかも悟った笑顔で言ってくれた。
「…ありがとうございます!」
たまたま二日連休でよかった
会社にも迷惑をかけずに奈々にやっと会いにいける――
どんなに離れていても教師をやっていれば繋がっていられる気がする
奈々のいうとおりだよ
奈々が教師をしてくれていたから――
こうやってまた会えることができる
俺たちの関係は確かに磁石のように
何度もくっついては離れての繰り返しだった
だけど今度こそは
この関係を終わりにする小さな“証”をもって
奈々を堂々と迎えに行くんだ
「早瀬先生は今の時間だとこちらにいると思います。」
職員室にいって教頭先生が案内してくれたこの場所――
「実験室…」
「早瀬先生、今化学部の顧問しているんですよ。ただ生徒はあまり来ないみたいですけどね。きっとこの部屋の奥の準備室にいると思います。いや~恩師の方が尋ねてくるなんて早瀬先生うれしいでしょうね。」
「いえ、恩師だなんて…」
「化学部の顧問誰もやらなくて…でも早瀬先生が自分から一年目だけどやりたいって言ってきた意味がわかりましたよ。じゃあ、私はこれで…」
教頭先生に深く一礼してから、あまり生徒は来ないとはいわれたもののそっとドアを開けてみた。
「懐かしい…」
長方形のテーブルに背もたれのない木の椅子
木の椅子には生徒が彫った文字が色々刻まれている
古臭いといえば古臭い
だけど大人になった俺にとっては懐かしい
色あせたカーテンも教師をしていたあの頃を思い出させてくれる
奥の白いドア
ここに奈々がいる
あんなに会いたいと願っていた人がこの扉の向こうにいるかと思うと急に不安になった
どんな顔して会えばいいんだ?
もう遅いとか言われるのだろうか…
色々と考えたら怖くなって足が立ち止まってしまった
あんなに会いたいと今まで突っ走ってきたくせに――
“パリン…”
何かが割れる音が準備室から聞こえる
やっぱり中には奈々がいるのだろうか?
「しまった…」
微かに奈々の声が扉の向こうから聞こえた
奈々がきっと何かを割ってしまったのだろう・・・
「奈――」
確かこのシーン・・・
俺はあのときビーカーを割ったんだ
立場は前とは違うけど同じシーン
再会するこの日に同じシーンだなんて
こんな日を運命といわずにいつ運命といえるのだろう?
扉を開けるならきっと“今”だ
“今”を逃したらいけない、そう思えたら迷っていた手がドアをノックしていた。
“コンコン…”
「はい…」
奈々の不安そうな声が聞こえてくる。
たしかに俺もあの時は生徒に備品を割ったところなんてみられたらなんて思ってちょっとビクビクしていた。
“ガチャ…”
扉を開けると白衣を着て、落としたビーカーの破片を座って拾っている奈々が目に入ってきた
「先生、ビーカー割ったんですか?」
あの日も俺はビーカーを落としたんだ
まさか本当に同じビーカーを落とすなんて…
何で俺はさっきまで奈々がいまだに俺を思ってくれているのかなんて不安に思ったんだろう
奈々は俺があげた赤いメガネをかけて
そのメガネの向こうにある目はどんどん涙が滲んできて――
唇をキュッと結びながら目の前にいる俺から目を離さずに涙を流しながらも真っ直ぐみている
言葉じゃなくて奈々の表情をみればよくわかる
今でもこんな俺を想ってくれていること
この日をずっと一人で待っていてくれたんだ
過去を振り返らず、二人のいつかくる未来の運命の日を――
「先生ッ…」
奈々の瞳から涙がひとつ零れるたびに今までのことを思い出す
奈々の真っ直ぐなところに惹かれた日
準備室で交わしたもどかしいキス
妻の友達とわかりつつも気持ちが止められなかった日々
奈々が書いたメモの“運命”を待っていたこと
涙を流しながらも優しい笑顔をしている目の前にいる奈々のことが
ずっと…ずっと、ずっと大好きだった――
やっとこうやって堂々と奈々に両手を広げて迎えにこれた
“パリン…パリン…パリンッ…”
あの頃は俺たちはビーカーの破片を踏んでまで
相手のところに飛び込む勇気はなかった――
たくさんの人を傷つけた
だけどやっぱり奈々のことがずっと、ずっと忘れられなかった
今腕の中にいる奈々を
傷つけた人の分、応援してくれた人の分
大事にしていきたい
禁断の恋に終わりを告げて
永遠の愛を君に――
【完】
このあとは
「先生を忘れたい…」の応援特典へと続きます♪
エブリスタで公開中です
川端から奈々がいる高校を教えてもらって、今度のみにいこうという約束をして電話をきった。
いい報告だけを待っていると言われながら――
「私も君の幸せを願っているよ。」
奈々を先生にみてもらった日
母親が俺の幸せを願っていたと教えてくれた
やっぱり先生には小さいころからお世話になっているから
母親にどこか似ている俺をずっと見てきたから
俺の本当の気持ちが何も言わなくてもわかったいたのだろう
あの日みたいに何もかも悟った笑顔で言ってくれた。
「…ありがとうございます!」
たまたま二日連休でよかった
会社にも迷惑をかけずに奈々にやっと会いにいける――
どんなに離れていても教師をやっていれば繋がっていられる気がする
奈々のいうとおりだよ
奈々が教師をしてくれていたから――
こうやってまた会えることができる
俺たちの関係は確かに磁石のように
何度もくっついては離れての繰り返しだった
だけど今度こそは
この関係を終わりにする小さな“証”をもって
奈々を堂々と迎えに行くんだ
「早瀬先生は今の時間だとこちらにいると思います。」
職員室にいって教頭先生が案内してくれたこの場所――
「実験室…」
「早瀬先生、今化学部の顧問しているんですよ。ただ生徒はあまり来ないみたいですけどね。きっとこの部屋の奥の準備室にいると思います。いや~恩師の方が尋ねてくるなんて早瀬先生うれしいでしょうね。」
「いえ、恩師だなんて…」
「化学部の顧問誰もやらなくて…でも早瀬先生が自分から一年目だけどやりたいって言ってきた意味がわかりましたよ。じゃあ、私はこれで…」
教頭先生に深く一礼してから、あまり生徒は来ないとはいわれたもののそっとドアを開けてみた。
「懐かしい…」
長方形のテーブルに背もたれのない木の椅子
木の椅子には生徒が彫った文字が色々刻まれている
古臭いといえば古臭い
だけど大人になった俺にとっては懐かしい
色あせたカーテンも教師をしていたあの頃を思い出させてくれる
奥の白いドア
ここに奈々がいる
あんなに会いたいと願っていた人がこの扉の向こうにいるかと思うと急に不安になった
どんな顔して会えばいいんだ?
もう遅いとか言われるのだろうか…
色々と考えたら怖くなって足が立ち止まってしまった
あんなに会いたいと今まで突っ走ってきたくせに――
“パリン…”
何かが割れる音が準備室から聞こえる
やっぱり中には奈々がいるのだろうか?
「しまった…」
微かに奈々の声が扉の向こうから聞こえた
奈々がきっと何かを割ってしまったのだろう・・・
「奈――」
確かこのシーン・・・
俺はあのときビーカーを割ったんだ
立場は前とは違うけど同じシーン
再会するこの日に同じシーンだなんて
こんな日を運命といわずにいつ運命といえるのだろう?
扉を開けるならきっと“今”だ
“今”を逃したらいけない、そう思えたら迷っていた手がドアをノックしていた。
“コンコン…”
「はい…」
奈々の不安そうな声が聞こえてくる。
たしかに俺もあの時は生徒に備品を割ったところなんてみられたらなんて思ってちょっとビクビクしていた。
“ガチャ…”
扉を開けると白衣を着て、落としたビーカーの破片を座って拾っている奈々が目に入ってきた
「先生、ビーカー割ったんですか?」
あの日も俺はビーカーを落としたんだ
まさか本当に同じビーカーを落とすなんて…
何で俺はさっきまで奈々がいまだに俺を思ってくれているのかなんて不安に思ったんだろう
奈々は俺があげた赤いメガネをかけて
そのメガネの向こうにある目はどんどん涙が滲んできて――
唇をキュッと結びながら目の前にいる俺から目を離さずに涙を流しながらも真っ直ぐみている
言葉じゃなくて奈々の表情をみればよくわかる
今でもこんな俺を想ってくれていること
この日をずっと一人で待っていてくれたんだ
過去を振り返らず、二人のいつかくる未来の運命の日を――
「先生ッ…」
奈々の瞳から涙がひとつ零れるたびに今までのことを思い出す
奈々の真っ直ぐなところに惹かれた日
準備室で交わしたもどかしいキス
妻の友達とわかりつつも気持ちが止められなかった日々
奈々が書いたメモの“運命”を待っていたこと
涙を流しながらも優しい笑顔をしている目の前にいる奈々のことが
ずっと…ずっと、ずっと大好きだった――
やっとこうやって堂々と奈々に両手を広げて迎えにこれた
“パリン…パリン…パリンッ…”
あの頃は俺たちはビーカーの破片を踏んでまで
相手のところに飛び込む勇気はなかった――
たくさんの人を傷つけた
だけどやっぱり奈々のことがずっと、ずっと忘れられなかった
今腕の中にいる奈々を
傷つけた人の分、応援してくれた人の分
大事にしていきたい
禁断の恋に終わりを告げて
永遠の愛を君に――
【完】
このあとは
「先生を忘れたい…」の応援特典へと続きます♪
エブリスタで公開中です
0
お気に入りに追加
180
あなたにおすすめの小説
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
小野寺社長のお気に入り
茜色
恋愛
朝岡渚(あさおかなぎさ)、28歳。小さなイベント企画会社に転職して以来、社長のアシスタント兼お守り役として振り回される毎日。34歳の社長・小野寺貢(おのでらみつぐ)は、ルックスは良いが生活態度はいい加減、デリカシーに欠ける困った男。
悪天候の夜、残業で家に帰れなくなった渚は小野寺と応接室で仮眠をとることに。思いがけず緊張する渚に、「おまえ、あんまり男を知らないだろう」と小野寺が突然迫ってきて・・・。
☆全19話です。「オフィスラブ」と謳っていますが、あまりオフィスっぽくありません。
☆「ムーンライトノベルズ」様にも掲載しています。
お知らせ有り※※束縛上司!~溺愛体質の上司の深すぎる愛情~
ひなの琴莉
恋愛
イケメンで完璧な上司は自分にだけなぜかとても過保護でしつこい。そんな店長に秘密を握られた。秘密をすることに交換条件として色々求められてしまう。 溺愛体質のヒーロー☓地味子。ドタバタラブコメディ。
2021/3/10
しおりを挟んでくださっている皆様へ。
こちらの作品はすごく昔に書いたのをリメイクして連載していたものです。
しかし、古い作品なので……時代背景と言うか……いろいろ突っ込みどころ満載で、修正しながら書いていたのですが、やはり難しかったです(汗)
楽しい作品に仕上げるのが厳しいと判断し、連載を中止させていただくことにしました。
申しわけありません。
新作を書いて更新していきたいと思っていますので、よろしくお願いします。
お詫びに過去に書いた原文のママ載せておきます。
修正していないのと、若かりし頃の作品のため、
甘めに見てくださいm(__)m
ウブな政略妻は、ケダモノ御曹司の執愛に堕とされる
Adria
恋愛
旧題:紳士だと思っていた初恋の人は私への恋心を拗らせた執着系ドSなケダモノでした
ある日、父から持ちかけられた政略結婚の相手は、学生時代からずっと好きだった初恋の人だった。
でも彼は来る縁談の全てを断っている。初恋を実らせたい私は副社長である彼の秘書として働くことを決めた。けれど、何の進展もない日々が過ぎていく。だが、ある日会社に忘れ物をして、それを取りに会社に戻ったことから私たちの関係は急速に変わっていった。
彼を知れば知るほどに、彼が私への恋心を拗らせていることを知って戸惑う反面嬉しさもあり、私への執着を隠さない彼のペースに翻弄されていく……。
10 sweet wedding
国樹田 樹
恋愛
『十年後もお互い独身だったら、結婚しよう』 そんな、どこかのドラマで見た様な約束をした私達。 けれど十年後の今日、私は彼の妻になった。 ……そんな二人の、式後のお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる