【R18】蝶々と甘い蜜。

かのん

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青いバラ

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宮園さんへ

お元気ですか?
もう10年も会っていないんですね!
日本には帰ってきているんですよね?
早く会いたいですよ~!
会社のみんなも、福田君も待っていますよ!




そう書かれたはがきの裏には
写真が印刷されていた。


「神盛さんの子供達、可愛いな~福田君に似ているかな?」


あれから、もう10年……
アメリカに行って最初は英語を勉強して
そしたら楽しくなって大学に入って研究の毎日
そして先月日本に帰ってきた。
だけど、三島と出会った場所には10年も経ったのに
帰れない。
帰ってしまったら、会いたくなってしまう。


はがきの裏の下を見ると
福田君の字でこう書かれていた。


“恋、していますか?”


「恋……か。」


今日で30代が終わってしまう。
明日、私は40歳になる。
おばさんという単語で似合ってくる年になったと
自分でも思う。


手の甲は年齢が出やすいからと
頑張ってケアをしていたのにも関わらず
年々皺皺になってきた。
留学していたころは
徹夜で勉強は研究をしていても大丈夫だったのに
今では徹夜はできない。


「シミも皺もあって…白髪もある。」


鏡を見ると色んな変化に最初は戸惑っていた30代。
今ではだんだん慣れてきてしまった。
両親も老いてきて
この頃は結婚の話や孫の話はしなくなってきた。
きっと諦めたのだろう。


両親に会うたびに
申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
あの人を…三島と出会ってしまったために、孫を抱かせてあげれないのだから。


友達の智美や神盛さんの子供たちの成長を見ていると
可愛いな、欲しいなって素直に思う。
だけど、私は――
私の子宮は三島を欲している。
この10年間、私に声をかけてくれた人は何人かいた。
付き合ったりもした。
だけど身体を重ねれば重ねるほど
三島のことを思い出してしまう。


そんな自分に嫌気がして
ここ数年お付き合いはお断りしている。


「どうしているのかな……」


まさか自分が研究職の仕事をするなんて
思ってもみなかった。
だけど今の私には研究職が向いている。
ここ、日本にいたら
なおさら三島グループのニュースは耳に入る。
だけど、仕事をしていたら
ニュースを見る暇もない。


便利な世の中だから
検索すればニュースはたくさん出てくるだろう。
だけど、あえてそれをしてこなかった。


「宮園さん、いいかな?」


「はい。」


「この研究所に興味を持ってくださる方がいらっしゃるから説明とかお願いしてもいいかな?私は大学のほうへ講義に行かないといけなくて。」


「はい、大丈夫ですよ。」


「説明終わったら帰っていいから。悪いね、よろしく頼むね。ここに資料とサンプル置いておくから。」


「は、はい…」


女性1人では運ぶのは大変そうなぐらいの量の資料
そしてガラスケースに入った一輪のバラ
よろよろしながら応接室へと向かった。


「あ……す、すいません!ドアを開けていただきたいです!」


ガラスケースを割らないように脇にかかえて
資料を両手で持っていたらドアを開けれなかった。


ガチャっとドアが開く音が聞こえてきた。


「すいません、お客様に開けていただいて……お待たせいたしました。」


「どうして……」


「え?」


「青いバラの研究を?」


資料をデスクに置く前に質問がきた。
そっとデスクに荷物を置きながら質問の答えに集中する。


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