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蝶が羽ばたくとき③
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「海外、行ったことないの?」
「はい…海外どころか、大学を卒業してからずっとここからどこかへ行ったことありません。」
「一泊旅行とかも?」
「……はい。」
三島にいつ呼び出されるかと思ったら
一泊でさえもどこかに行くなんて考えてもなかった。
でもこうやって人と話をしていると
私は三島に依存し続けてつまらない人間になっていたんだろうって思える。
「3か月したら、遠くに行くって決めているんです。でも、どこかはまだ決めていなくて……」
「色んなところに行くといいよ。自分の世界が広がるから……そして、かえってきたくなった時に帰ってくればいい。私みたいに。あ……彼、帰ってきたよ。」
「あ、気づきました?よかった……これ、何か食べれそうなものを。」
福田から渡されたビニール袋にはゼリーやプリン、サンドイッチ、おにぎり、お弁当、パンなど色んな食材がたくさん入っていた。
「ふふふ、これ全部食べるの大変ね。」
女性が悪戯っぽく微笑みながら話しかけてきた。
「え!?あ、賞味期限が今日のもある!すいません、俺余った分は食べますから!」
「ふふふ…あ、ごめんなさい。福田さんの気持ちが嬉しくてつい…全部食べます。食べて元気出さなきゃ。」
「笑った……」
「え?」
「宮園さんが笑った……」
大笑いしたわけじゃないけど
前笑ったのはいつだったんだろう。
自分でも忘れている。
いつも不安で、泣いている生活だったから。
「あの…お世話になりました。」
「ううん、元気になってよかった。それに素敵な彼ね。あなたのことを思っていて。」
「あ……はい。あの!お礼がしたいのですが……」
「お礼なんて……でも、今度ご飯一緒に食べに行きたいかな。割り勘で。友達がいなくて寂しかったから。」
「私でよかったら……」
連絡先を交換してお店を出たが、笑顔で手を振っていてくれる。
「綺麗な人……」
「そうですね……あ、でも自分は宮園さんのほうが…」
「ふふ……福田さん、大丈夫だよ、あ……」
「敬語、やめましょうか。」
「……そうだね。」
私は、三島の前に付き合った男の子は
1人しかいない。
その男の子とはただ一緒に帰ったりするだけで
しかもその男の子から告白してきて付き合って…
恋が何なのか、私には経験値が低くて、福田さんとどういう風に接すればいいのかわからなかった。
「宮園さん……今度、遊びに…行かない?」
「え?」
「あ、宮園さんがしたいことでいいから!例えば買い物とか、映画とか。デートって感じじゃなくて、友達と遊ぶって感じに思ってくれれば……」
「うん、じゃあ、映画観たいかな。」
「じゃあ、映画観に行きましょう!あ……」
「福田さん、敬語……」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている福田さんの顔を見ていたら
福田さんも私と同じぐらいの恋愛経験値なのかもしれないと思った。
経験値が低いなりに2人のペースでやっていけたら……
そう、思っていた。
家について、ソファに座って目を瞑っていると
携帯の着信音がなって、バックの中から急いで携帯を手に取ると
表示されている名前は『三島』だった。
「何で……」
もう終わりって言ったよね?
もしかして3か月早いから契約違反だっていうの?
やっと落ち着いていた呼吸がまた早くなっていくのが分かる。
呼吸って……どうするんだっけ?
迷って、迷って……迷っているうちに
携帯の着信音は消えた。
これでいい。
これで三島のことを少しづつ忘れていけばいい。
三島の携帯の番号を消して
クローゼットを勢いよく開けて
三島と会う時に着ていた服をごみ袋にいれていく。
「スーツしかないじゃん……」
10年間会い続けていたのだから、残っているのはスーツだけ。
10年の月日の重みを知った……
下着もアクセサリーも靴もバッグも全部捨てて
新しいのを買おう。
ありがたいことなのか
普通のカップルなら携帯に写真とかもたくさん思い出が残っているだろう。
だけど、私と三島には写真が1枚もなければ
プレゼントされたものは現金だけ。
10年付き合ったわりには捨てたい思い出は少ない。
私と三島の間に思い出の物は確かに少ない。
だけど……三島は私の身体にたくさんの思い出をつけている。
「んっ……」
シャワーを身体にあてるだけで敏感になってしまった肌
くすぐったくて声が自然と漏れてしまう。
もう、三島にこれから触ってもらうことはない。
そう思ったら、ないものねだりで身体が急にほてってくる。
これから自分で……慰めるしかないのだろうか。
「あっ……ふっんっ……ふあっ…」
シャワーを強めにして自分が一番感じるところにあててみる。
三島がいなくたって……私は自分で慰めることができる。
だから、今、羽ばたくときなんだ。
「はい…海外どころか、大学を卒業してからずっとここからどこかへ行ったことありません。」
「一泊旅行とかも?」
「……はい。」
三島にいつ呼び出されるかと思ったら
一泊でさえもどこかに行くなんて考えてもなかった。
でもこうやって人と話をしていると
私は三島に依存し続けてつまらない人間になっていたんだろうって思える。
「3か月したら、遠くに行くって決めているんです。でも、どこかはまだ決めていなくて……」
「色んなところに行くといいよ。自分の世界が広がるから……そして、かえってきたくなった時に帰ってくればいい。私みたいに。あ……彼、帰ってきたよ。」
「あ、気づきました?よかった……これ、何か食べれそうなものを。」
福田から渡されたビニール袋にはゼリーやプリン、サンドイッチ、おにぎり、お弁当、パンなど色んな食材がたくさん入っていた。
「ふふふ、これ全部食べるの大変ね。」
女性が悪戯っぽく微笑みながら話しかけてきた。
「え!?あ、賞味期限が今日のもある!すいません、俺余った分は食べますから!」
「ふふふ…あ、ごめんなさい。福田さんの気持ちが嬉しくてつい…全部食べます。食べて元気出さなきゃ。」
「笑った……」
「え?」
「宮園さんが笑った……」
大笑いしたわけじゃないけど
前笑ったのはいつだったんだろう。
自分でも忘れている。
いつも不安で、泣いている生活だったから。
「あの…お世話になりました。」
「ううん、元気になってよかった。それに素敵な彼ね。あなたのことを思っていて。」
「あ……はい。あの!お礼がしたいのですが……」
「お礼なんて……でも、今度ご飯一緒に食べに行きたいかな。割り勘で。友達がいなくて寂しかったから。」
「私でよかったら……」
連絡先を交換してお店を出たが、笑顔で手を振っていてくれる。
「綺麗な人……」
「そうですね……あ、でも自分は宮園さんのほうが…」
「ふふ……福田さん、大丈夫だよ、あ……」
「敬語、やめましょうか。」
「……そうだね。」
私は、三島の前に付き合った男の子は
1人しかいない。
その男の子とはただ一緒に帰ったりするだけで
しかもその男の子から告白してきて付き合って…
恋が何なのか、私には経験値が低くて、福田さんとどういう風に接すればいいのかわからなかった。
「宮園さん……今度、遊びに…行かない?」
「え?」
「あ、宮園さんがしたいことでいいから!例えば買い物とか、映画とか。デートって感じじゃなくて、友達と遊ぶって感じに思ってくれれば……」
「うん、じゃあ、映画観たいかな。」
「じゃあ、映画観に行きましょう!あ……」
「福田さん、敬語……」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしている福田さんの顔を見ていたら
福田さんも私と同じぐらいの恋愛経験値なのかもしれないと思った。
経験値が低いなりに2人のペースでやっていけたら……
そう、思っていた。
家について、ソファに座って目を瞑っていると
携帯の着信音がなって、バックの中から急いで携帯を手に取ると
表示されている名前は『三島』だった。
「何で……」
もう終わりって言ったよね?
もしかして3か月早いから契約違反だっていうの?
やっと落ち着いていた呼吸がまた早くなっていくのが分かる。
呼吸って……どうするんだっけ?
迷って、迷って……迷っているうちに
携帯の着信音は消えた。
これでいい。
これで三島のことを少しづつ忘れていけばいい。
三島の携帯の番号を消して
クローゼットを勢いよく開けて
三島と会う時に着ていた服をごみ袋にいれていく。
「スーツしかないじゃん……」
10年間会い続けていたのだから、残っているのはスーツだけ。
10年の月日の重みを知った……
下着もアクセサリーも靴もバッグも全部捨てて
新しいのを買おう。
ありがたいことなのか
普通のカップルなら携帯に写真とかもたくさん思い出が残っているだろう。
だけど、私と三島には写真が1枚もなければ
プレゼントされたものは現金だけ。
10年付き合ったわりには捨てたい思い出は少ない。
私と三島の間に思い出の物は確かに少ない。
だけど……三島は私の身体にたくさんの思い出をつけている。
「んっ……」
シャワーを身体にあてるだけで敏感になってしまった肌
くすぐったくて声が自然と漏れてしまう。
もう、三島にこれから触ってもらうことはない。
そう思ったら、ないものねだりで身体が急にほてってくる。
これから自分で……慰めるしかないのだろうか。
「あっ……ふっんっ……ふあっ…」
シャワーを強めにして自分が一番感じるところにあててみる。
三島がいなくたって……私は自分で慰めることができる。
だから、今、羽ばたくときなんだ。
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