初恋の人。

かのん

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花音の答え③

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「え…どこ行くの!?」



「いいから、いいから♪」



翔は花音がもう迷わないようにしっかり手を繋いで歩き出した。




「翔君の家?」



「幼稚園には持っていけなくて。」



“ガチャガチャ…”



「俺がいいよって言うまで玄関にいて。」



「わかった…」



幼稚園に持っていけないってどういうプレゼントなんだろう…



「いいよー!」



花音が奥の部屋に行くとテーブルの上に白い箱が置いてあった。



「ここ座って。」



翔があぐらをかいた自分の膝を手で叩いている。



花音は翔の横にチョコンと座った。



「ここだって。」



「ひゃあッ…」



翔は横に座っている花音を持ち上げて自分の膝の上に座らせた。




「お、重いからいいよ。」



「軽いよ。ダイエット頑張ってたもんな…」



自分のためにダイエットを…そう思うとさらに花音が愛おしかった。



後ろから見える花音の耳が真っ赤なのも



自分の腕の中にチョコンと座っている花音も可愛くて仕方ない…



「花音、開けてみて。」



「うん…」



ゆっくりと箱を開けると中からはイチゴがたくさん乗ったケーキが出てきた。



「すごい…イチゴがいっぱい…」



「喜んでくれたならよかった。」



「もしかしてこれ…」



生クリームが所々プロが作ったにはおかしかった。



「…俺の手作り。ケーキなんて作ったことなかったんだけど、イチゴでいっぱいにしたかったんだ。」



花音が前にいると花音の顔も見えないけど、真っ赤な顔の自分の顔も見られなくてすむ…



“ドキッ…”



油断していたら花音が急に振り返ってきて目があった。



「翔君、ありがとう!すっごく嬉しい…」



大事にしなきゃ…



この笑顔も



海斗の分まで――






「はい、翔君の分。」



「ありがとう。」



「あ…」



「ん?」



「翔君はイチゴ…苦手だったよね?」



「え?…俺イチゴ好きだよ?」



「え?そうなの?じゃあどうして幼稚園のときイチゴくれたの?」



「それは…」



初恋の人、花音の気を引きたかったから…



もし俺が海斗と逆の立場だったら今こうやって花音は腕の中にいてくれたのだろうか?



そう思ったら本当のこというのが怖くなった



「内緒…」



「えー!?んッ――」



「…どう?」



翔は花音の口にイチゴをいれて、花音にこれ以上詮索されないようにした。



「うん…ちょっと酸っぱいかな…」



「じゃあ、俺が甘くしてやろうか?」



「え!?そんなことできるの!?」



“コツン…”



額と額を合わせ、そのままゆっくりと翔の唇が近づいてきた。



酸っぱかったイチゴの味が



初恋の時のように甘さが加わって甘酸っぱくなった――



初めて好きになった人



遠回りもしたし



傷つけたり、傷ついたりもしたけど



これからもこのイチゴのように



時に甘く



時に切なく酸っぱい



甘酸っぱい時間を二人で過ごしていきたい――



【完】
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