初恋の人。

かのん

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花音の答え

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「花音!こっち!」






















「海斗君…」


















「こっちこっち!来てくれてよかった~はい、座って。」



「海斗君、あの――」



「花音、お誕生日おめでとう。」



「あ、ありがとう…」



「これ誕生日ケーキ。」



花音の目の前にはイチゴが乗ったショートケーキが置かれていた。



「ショートケーキ…」



まるで幼稚園の頃を思い出すようなショートケーキが…



「花音、誕生日プレゼントがあるから目をつぶってくれる?」



「あ、うん…」



花音が自分の目を手で隠す。



「はい、いいよ。」



花音が目をあけると目の前には――



「イチゴが…」



ショートケーキに乗っていたイチゴが無くなっていた。



海斗を見ると口がもごもごと動いている。



この光景、幼稚園の頃にも――




「花音…俺はさ、花音に大好きなイチゴをあげれないんだ…」



「え…?」



俺は花音に大好きなイチゴも



大好きな笑顔を引き出すこともできない…



花音の今日の表情を見てすぐわかった



俺に別れを言うためにきたんだって――



今にも泣きそうな表情だったから…



花音が言いにくいのなら、俺が背中を押してやるんだ


















それが俺の…花音への誕生日プレゼント――



















「イチゴをくれる…翔のところにいきなよ!」



「海斗君…ごめんなさい…」



「…初恋より二番目の恋のほうが幸せになれるっていうからさ、俺はそっちの道をとるよ。だけど花音はさ…」



目に涙をいっぱい溜めている花音の手を海斗が両手で握ってくる。



「初恋でも幸せになれるって俺に証明してみせてよ。」



海斗の目は優しいけどまっすぐで嘘偽りのない目をしていた。



本当に私のこと応援してくれているんだ…



「花音に出会って恋をして…俺こんなにも人のために何かができるんだって新しい自分を知れた。優しい気持ちにもなれて…だから花音の誕生日をこうやって一緒に過ごせて嬉しかった。産まれてきてくれて、ありがとう。」



「うぅ…」



「わぁ!泣くなよ!な?」



「…ッ…」



「これで最後なんだから、花音の笑顔で別れよう。」



「…うん。」



花音がゆっくりと顔をあげると海斗は優しそうに笑っているけど…



左目の端が光っているようにも見えた。



その表情をみたら、また顔を下げてしまった…



こんなにも自分のことを思ってくれてくれる人をどうして好きになれなかったんだろう――



“ギュッ…”



握っていた手を海斗が力をいれて握ってきた。



言葉はなかったけど



だけど俺は大丈夫だよって言われているようだった。



せめて最後は海斗君の希望通り笑顔で別れを――
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