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覚えている快感④
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「愛莉……今まで辛かったな」
頭を撫でられるのは
何年振りだろう。
優しく頭をなでて、おでこにキスをしてくる。
この人はいつもそう。
いつも優しくて、欲しい言葉もくれて、大事にしてくれる。
だけど――
“ピリリリリッ”
「……はい。あ、うん……え?今から?」
そうだ、別れた理由を思い出した。
春樹は私にすごく優しくて彼氏としては申し分なかった。
だけど、誰にでも優しかった。
今の電話だって女の子が泣いて電話してきている。
きっと、この娘も春樹のことが好きなんだ。
春樹が電話をしている間に起き上がって
身支度を整えて、バッグを手に取った。
「愛莉?」
「春樹……ごめんね、今日は迷惑をかけて。私帰るね」
「ちょっと待って!」
「春樹…今から電話してきた子のところに行くんでしょ?」
「そうだけど……」
「春樹のそういうところが好きで、大好きで……大嫌いだった」
「愛莉!」と名前を呼んでいる声が聞こえたけど
振り返らずに部屋から出た。
私、何しているんだろう。
セックスレスだからって、元カレに言い寄られて
フラフラと……こんな自分が嫌になる。
街には色んな人がいる。
お酒を飲みすぎて私みたいに歩けなくてうずくまっている人。
友達と一緒にワイワイ言いながら楽しそうに歩いている人。
泣きながら歩いている人。
あきらかに不倫だとわかるカップル
今日の私は、元カレをホテルに行ってキスをして……
私も不倫と思われても仕方ない行為をしてしまった。
離婚もしてくれない
でもセックスもしてくれない。
春樹の言う通り、紙切れ一枚のせいで
男の人と抱き合う喜びを知ることができなくなる。
誰かに必要とされることも
もう、ないのかな……
「ん……」
「やっと起きた」
「亮二……痛っ」
「ほら、水」
「ありがと……え?何で、お店?」
誰もお客のいないバーカウンターでうつ伏せで寝ていたらしく、顔をあげると身体のあちこちが痛い。
頭もガンガンに痛いけど……
「覚えていないだろうな……閉店後、愛莉が自分でこの店に来たんだよ」
「え!?今何時!?」
「7時だよ」
携帯を見ると7時過ぎていて……だけど悲しいのは妻が朝帰りだというのに夫からの着信もラインも何もないことだ。
「朝ごはん食う?」
「ううん……亮二、ごめんね迷惑かけて」
「お前はさ……」
「え?」
「いっつも謝ってばっかだな」
「だって、実際迷惑かけているし……」
「俺は、嬉しかったよ」
「え?」
「高校の時から、ずっと好きだった、愛莉のこと」
「でも、私と雅人のことを……」
「そうだよ、ずっと応援してきた。愛莉が幸せなら……雅人ならきっと愛莉を幸せにできるからって、自分に言い聞かせてきた」
「亮二……」
「だけど、もう我慢しない。俺は絶対愛莉を幸せにするから」
「でも、私……」
「すぐに離婚できないんだろ?俺は待っているから。だから、考えてほしい。今度2人で出かけよう」
「2人でって……私まだ雅人と……」
「身体の関係を持つわけじゃない。ただ、俺のことを男として意識してこれからを考えてほしいんだ」
「でも、そんなの、亮二にも雅人にも悪いよ」
「プラトニックな恋でもダメ?」
離婚もできない、セックスもできない。
でも、プラトニックな恋なら……?
このまま寂しい人生を送るなんて悲しすぎる。
亮二の言う通り、せめて誰かに愛されて、必要とされたい。
恋ぐらい、したい。
一般的にはダメかもしれないけど
今の私は、すがりたいの。
頭を撫でられるのは
何年振りだろう。
優しく頭をなでて、おでこにキスをしてくる。
この人はいつもそう。
いつも優しくて、欲しい言葉もくれて、大事にしてくれる。
だけど――
“ピリリリリッ”
「……はい。あ、うん……え?今から?」
そうだ、別れた理由を思い出した。
春樹は私にすごく優しくて彼氏としては申し分なかった。
だけど、誰にでも優しかった。
今の電話だって女の子が泣いて電話してきている。
きっと、この娘も春樹のことが好きなんだ。
春樹が電話をしている間に起き上がって
身支度を整えて、バッグを手に取った。
「愛莉?」
「春樹……ごめんね、今日は迷惑をかけて。私帰るね」
「ちょっと待って!」
「春樹…今から電話してきた子のところに行くんでしょ?」
「そうだけど……」
「春樹のそういうところが好きで、大好きで……大嫌いだった」
「愛莉!」と名前を呼んでいる声が聞こえたけど
振り返らずに部屋から出た。
私、何しているんだろう。
セックスレスだからって、元カレに言い寄られて
フラフラと……こんな自分が嫌になる。
街には色んな人がいる。
お酒を飲みすぎて私みたいに歩けなくてうずくまっている人。
友達と一緒にワイワイ言いながら楽しそうに歩いている人。
泣きながら歩いている人。
あきらかに不倫だとわかるカップル
今日の私は、元カレをホテルに行ってキスをして……
私も不倫と思われても仕方ない行為をしてしまった。
離婚もしてくれない
でもセックスもしてくれない。
春樹の言う通り、紙切れ一枚のせいで
男の人と抱き合う喜びを知ることができなくなる。
誰かに必要とされることも
もう、ないのかな……
「ん……」
「やっと起きた」
「亮二……痛っ」
「ほら、水」
「ありがと……え?何で、お店?」
誰もお客のいないバーカウンターでうつ伏せで寝ていたらしく、顔をあげると身体のあちこちが痛い。
頭もガンガンに痛いけど……
「覚えていないだろうな……閉店後、愛莉が自分でこの店に来たんだよ」
「え!?今何時!?」
「7時だよ」
携帯を見ると7時過ぎていて……だけど悲しいのは妻が朝帰りだというのに夫からの着信もラインも何もないことだ。
「朝ごはん食う?」
「ううん……亮二、ごめんね迷惑かけて」
「お前はさ……」
「え?」
「いっつも謝ってばっかだな」
「だって、実際迷惑かけているし……」
「俺は、嬉しかったよ」
「え?」
「高校の時から、ずっと好きだった、愛莉のこと」
「でも、私と雅人のことを……」
「そうだよ、ずっと応援してきた。愛莉が幸せなら……雅人ならきっと愛莉を幸せにできるからって、自分に言い聞かせてきた」
「亮二……」
「だけど、もう我慢しない。俺は絶対愛莉を幸せにするから」
「でも、私……」
「すぐに離婚できないんだろ?俺は待っているから。だから、考えてほしい。今度2人で出かけよう」
「2人でって……私まだ雅人と……」
「身体の関係を持つわけじゃない。ただ、俺のことを男として意識してこれからを考えてほしいんだ」
「でも、そんなの、亮二にも雅人にも悪いよ」
「プラトニックな恋でもダメ?」
離婚もできない、セックスもできない。
でも、プラトニックな恋なら……?
このまま寂しい人生を送るなんて悲しすぎる。
亮二の言う通り、せめて誰かに愛されて、必要とされたい。
恋ぐらい、したい。
一般的にはダメかもしれないけど
今の私は、すがりたいの。
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