妻×恋

かのん

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愛されたい

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「愛莉…愛莉!」


「あ……幸…ごめん、何?」


「いや、仕事終わったのに帰らないの?」


「あ……うん。帰ろうかな。」


「今日どうしたの、ボーっとして……体調悪いの?」


「ううん、大丈夫……」


「この間あげた下着、どうだった?」


「ごめんね、せっかくプレゼントしてくれたのに。商品自体はすごく素晴らしんだけど、身に着ける私がダメだったみたい……」


「愛莉……」


「ごめん、ちょっとお手洗いに行ってから帰るね。」


ここは会社だというのに……
泣きそうだ。
私を否定されている感じがして
もう、どこかへ行ってしまいたい。


「あ!ごめんなさいっ……」


「そんなことないですよ。」


「え?」



ぶつかったのは崇君で
次の瞬間腕を捕まれて口元に体を引き寄せられた。


「すっごいエロかったよ」


「え……?」


出かかっていた涙が
一瞬で引っ込んだ。
この時はまだ誰でもよかったから
私という女を肯定している人、言葉が欲しかった。


まだ、私は女だって、教えてくれる人が欲しくて…素直にそういう風に言われると嬉しかった。


「愛莉!飲みに行こう!」


「え!?幸!?いや、でも明日も仕事だし……旦那さんや子供は?」


「いいから、いいから!」



「いらっしゃいませ……愛莉……」


「いいかな…?」


「開店前にくるってことは、また愚痴か」


「お邪魔します~」


「あ、同僚の米田幸さん。」


「愛莉に飲みに行こうっていったら、このお店を薦められて…素敵なバーですね」


「ありがとうございます。愛莉の幼馴染の亮二です。愛莉がいつもお世話になっています」


「いえいえ、こちらこそ、いつも会社で愛莉さんにお世話になっています」


「二人とも、どんな会話しているの~」


「幸さん、こちらへどうぞ」


幼馴染の亮二は、会社の近くでバーをやっていていて
開店前に来ては愚痴って開店と同時に家に帰る。
雅人の愚痴をいつも聞いてもらっている。
子供のころから、ずっと一緒にいた亮二は兄弟みたいなものだ。


「また、雅人の愚痴か」


久しぶりのビールと大喜びの幸は
横でゴクゴク美味しそうに飲んでいるが
驚いた表情で話しかけてくる。


「え!?愛莉の旦那さんと知り合いなんですか?」


「雅人とは高校の時同じサッカー部で。」


「え?じゃあ、愛莉と旦那さんってその時から付き合っているの?」


「えっと……高校三年からかな?」


「今30だから……出会ってから12年!?長いね~どういう流れで付き合ったの?」


「え……亮二のサッカーの試合とかを観に行くうちに、雅人のこと気になってきて……」


「雅人はエースだったから目立っていたしな」


「あの頃はサッカーあんなにやっていたのに……今はボールさえ触っていないな、そういえば……」


あの頃の雅人は、サッカー部のエースで
周りにはキャーキャー言っている女の子達が大勢で……
高嶺の花だった。


ずっと、ただ見ているだけであの頃はよかったのに……
あの頃の私からしたら、きっと今は夢のような生活をしている。
好きな人と一緒の生活している。
一緒にご飯を食べて、一緒のベッドで眠る。
それだけでドキドキしていたはずなのに……


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