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無計画なようで確実なモノ
30.男らしさか潔さか
しおりを挟む男の子でもダメな時がある。
「……清わかるか?」
「さっぱりです」
敬紫も晫斗も無言で見つめるだけで話は進まない。
少しの間が流れた。
事の始まりは、かなりの大金が集まり写真屋は営業終了となった後である。
やはり晫斗と敬紫の写真はかなりの売れ筋商品で、女性はもちろん男性まで買っていった。それから若い頃にそっくりじゃとお爺さんまで。
懐が温まったところで買い物に出ようとすると、その前にと4人はカインに止められた。
「お前達、魔力が流れ出すぎだ。仕舞え」
敬紫は晫斗を見たが彼はやはりあくびをみせるだけで答えは出なかった。代わりに涼が発言者のカインに聞く。
「魔力って言われても俺たちにはさっぱりだ。と言うか魔法って俺たちも使えるのか?」
「使える。ただ今のままならすぐ無くなる。だから、仕舞え」
もう一度同じ事を言われ、涼が眉をひそめる。
「いやそれが分からねぇんだよ」
「……やり方を教えてよカイン」
敬紫が一歩だけ前にでてカインの前に立つ。カインの青い目は敬紫の目の色とよく似ている。ただ敬紫は雛野の目のように少しのグリーンが強い。
カインの目は敬紫から逸れる事なく口を動かした。
「……ビリビリ……シュウーン?」
「え?」
擬音語だ、敬紫はそう思ったがなんと聞き返せばいいか分からない。しかもなぜか疑問形なのだ。擬音語の疑問形で返事をされた事があっただろうか。
「ビリビリ、シュウーン、だ」
今度ははっきりとそう言われた。なぜか確信を持ち始めたカインの瞳に涼と清が敬紫の代わりに慌て出す。
「何をいってるんですか?」
「ちゃんと前後関係を説明しろって」
相変わらずカインの瞳はまっすぐで迷いのカケラもない。
「仕舞い方だ、魔力の」
言葉足らずにもほどがある。
涼と清はあっけに取られ、突っ込む事も忘れてしまう。まさか仕舞い方の感覚、しかも擬音語を伝えてくるなんて誰も思わない。
清が悲劇だと言わんばかりに頭を抱えた。
「これだから男は……」
ここにいる全員、男である。
そして冒頭に戻るのだが、
黙っていた敬紫はあの二冊の小説を記憶から呼び起こしていた。魔力の仕舞い方は載っていなかったが、たしかに魔力をビリビリと表現していたページがある。
「……なるほど」
敬紫がおもむろに呟いた。唇に手を当て首をかしげるとそのまま目を閉じた。
「敬紫」
晫斗が敬紫の様子に気付き肩に手を置いた瞬間、手から刺激が流れ込んできた。
「晫斗、それ魔力」
「……ああ」
今度は晫斗も目を閉じると、敬紫から流れる魔力の存在を掴んだ。そのうち自分の中にも同じものがあると気付き外に出ようとするそれを中に収めた。心なしかざわついていた体が静かになったような気がする。
「うむ、出来ている」
カインが晫斗と敬紫を見て頷くので清も涼も同時に振り返る。
「え?今のでわかったんですか?」
「さすがです、お二人とも!もうモノにしたのですね」
「すぐ出来るよ。よく感じたらいつもと違うものがあるはずだよ」
さらりと手伝う気は無い敬紫はすでに見守る体制に入っている。晫斗もそれに続く。
たまに冷たいのが主人であるが、試される事すら胸が高鳴る2人は嬉しそうな顔で返事をしすぐに自分の魔力を探し始めた。
それを見ていたカインが深く頷く。
「我の教え方、正解である」
この男だけの旅はツッコミが不足しがちだ。
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