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無計画なようで確実なモノ
28.商売か貢ぎか
しおりを挟む「涼、写真は売れましたか?」
「ああ、割と売れたけど……」
集まりはしたがその価値が分からない、このメンバー唯一の博識であろうカインに問う。
「これ、どれくらいだ?」
じゃらりと集まった売り上げをカインに見せる。コインは二種類、金と銀、それから色の違うお札の3種類あった。カインはしゃがみこむとコインからお札を種類ごとに並べ始めた。コインから指差しお札までずらして行く。
「単位はロル。100から一桁ずつ上がる。その量なら食費のみ。防具、武器、日用品揃えるならばその三倍は必要だ」
「次の街までの期間は?」
「王都アルカナまでは20日」
晫斗と敬紫がその言葉に反応したのを清と涼は見逃さなかった。目が、オーラが変わるのだ。そしてだいたいその時は零蘭と雛野が関わっている。細胞なのか運命なのか、全てが呼んでいるのだお互いを。
「良かったですね。次の街にお2人がいるようで」
「うん」
ここに来てから一度も口角が上がらなかった敬紫の顔に始めて反応が見られた。それに思わず清は微笑む。晫斗の視線も城の先、さらに向こうを見てそれを感じるのだ。絆よりも確かなそれを。
「と言うか清、その荷物はなんだ?」
「ああ、そう言えば食費は大丈夫そうですよ。これは涼が持ってください」
白い大きな布で出来たショルダー型のバックには大量の食料が。果物や野菜、干し肉らしきものに、飲み物だった。
「どうしたんだこれ……言葉も通じないのに」
「歩いてたら差し出してきたよ」
「ああ……」
思えば元の世界でもよく目にする光景だった。どこに居たとしても敬紫も晫斗も目を惹くどころか、跪きたくなる衝動にかられるのだ。ある者は名刺をある者は連絡先をしまいには小切手。それは雛野も零蘭も同様だった。
まるで自分の事のように隣の清が得意げに話し出す。
「敬紫さんに跪いた者がいたので代わりに受け取ったところ、次々と他の人間も真似しだしたのでありがたく頂きました」
彼女たち2人は笑顔で愛想よく可憐に反応を返すが、敬紫も晫斗もまるで目の前に何も居ないように進んでいくのだ。一度本人達に聞いたことがあるが、気付かなかったの一言で終了した。目にも止まらないとはこの事である。
「さすがです……」
「写真も見本が売れたようですし、どの世界でもその尊さは変わらない」
清がまるで恋する乙女のようになってきたので、涼は煙たがる。涼もまた、大袈裟ではないにしろ心の中では感嘆の域だ。
清はスマホを手に取りまた敬紫と晫斗を撮り始める。今度は大量に、ペアとソロのバリエーションと角度も変えて。相変わらず無表情でもどんな有名画家の書いた絵よりもその価値は高い。正直売りたくもないほどであるが、姫のためならば仕方ながない。
「……お前たちのも撮りなよ」
清と涼も自分の主人を褒めるばかりだが、食べ物も写真も清と涼の成果とも言える。彼等も人並みはずれた整い方の容姿であることに変わりはない。敬紫の言葉に2人は喜んで自らの写真を撮っていく。
「ではもう少し写真で儲けますかね」
「我も手伝おう。値段はもっと高くして3枚合わせて200ロル安くするといい」
カインは意外と商売上手だ。
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