上 下
4 / 88
彼等は

0.瞬間で当たり前に

しおりを挟む
赤い光が眩しくて閉じた目を少しずつ開ける。世界は変わらず酸素で満ちていた。


「何、今の……」

零蘭れいらん


いつもはのんびりな雛野ひなのの声がすっと響く。嬉しそうに。

「見て、月と太陽が隣り合ってる」


零蘭は笑っただけで何も答えなかった。

夜だったはずの世界は今は明るい。眩しくて見えないはずの太陽がなぜか見つめられる。
ベランダにいたはずなのに地面は土。小粒の石が混ざった水っけのない乾いた道だった。
左手に感じる体温は雛野に握られた手。

空を見たまま雛野はまた呟いた。

「素敵ね」


顔が見えなくても雛野が何となく笑っているのがわかった。いつもと変わらない美しく可愛らしい顔だろう。

雛野を立たせ砂を払う。自分も同じようにして今度は目を合わせた。やはり笑っている。

「夜が楽しみ」

昼間も月が出るのなら夜の太陽はどうなるのだろう。新しい情報に飛びつく癖は雛野に限ったことではない。零蘭もまた楽しげに笑っている。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

あざとかわいいとか自分で言うのどうかしてる【完】

雪乃
恋愛
「…パリスごめん…」 わたしの婚約者は今日も可憐なひとを腕にぶら下げながら困ったように言う。 「ロビーは悪くないのっ…ぼくが…っ」 …………わかってんなら、離れてくんないかな? 確実にかはんしん狙われてるのにそれに気づかず、浮気してないのに「ただの友だちだから!」真実なんだけどなぜか浮気男のような言い訳にしか聞こえない婚約者(に、まとわりつく病弱幼なじみヒロイン(♂))との攻防。 ※ゆるふわです。なんでも許せる方向け。

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

隠していない隠し部屋

jun
恋愛
真夏の深夜、庭に突然シルビオとキャルティは現れた。 そして別れを惜しむように激しいキスをする二人は、密着したまま歩いて行った・・・。 バルコニーからその二人を見ていた私。 浮気現場の目撃者も私。 そして、突然現れた二人。 絆されて結婚したエルザと、土下座して結婚してもらった夫のシルビオ。二人の結末は離婚か継続か。 そして隠し部屋は何処に⁉︎ *R15は一応保険として。 *2024・2・23 思いの外長くなってしまったので長編に変更しました。 *2024・2・23 本編完結。番外編執筆中。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

婚約破棄ですね。これでざまぁが出来るのね

いくみ
ファンタジー
パトリシアは卒業パーティーで婚約者の王子から婚約破棄を言い渡される。 しかし、これは、本人が待ちに待った結果である。さぁこれからどうやって私の13年を返して貰いましょうか。 覚悟して下さいませ王子様! 転生者嘗めないで下さいね。 追記 すみません短編予定でしたが、長くなりそうなので長編に変更させて頂きます。 モフモフも、追加させて頂きます。 よろしくお願いいたします。 カクヨム様でも連載を始めました。

処理中です...