sweet!!-short story-

仔犬

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ダイエットも色々ある

ダイエットも色々ある

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ダイエットも唯の得意分野だ。




「…………やっぱ、太った」


優の涼しげな顔が今日はご機嫌ななめ。チームの誰かが見つけ、連れて来させた時からすでにこの表情だ。いつもより広い部屋にはチームの幹部がそろって居た。常に楽しげな3人にしては珍しい不機嫌な優少し戸惑い気味になるが、構わず秋と唯が優に群がる。


「んー、おなか見せて?」

「なんか食欲が出ちゃって……忙しかったから甘いものも多めに取ったのがだめだった」

「まあ少しじゃん」


とは言っても十分細い。


「無理」

優が太るのは珍しいことで元々細身だが服を綺麗に着るために努力しているのだ。
お腹をぷにぷにしながらそうかそうかと相槌を打つと唯が顔を上げた。

「じゃあ今日からダイエットしよっか」

「んーあれは?アプリで確かダイエットのやつ……えーと」

すぐに調べ出した秋はこれだ、と目を光らせる。1日おきにダイエットの宿題が出され、それをグループ設定すると共有ができるシステムらしい。

「当分太りたくないから負荷重くする」

「おーやる気だなぁ。じゃあねぇおれはダイエット食作るよ~カフェで使えそうだし」


トントン拍子に決まっていき、いつもの事のように予定は組まれ3人でどう動くかを決めていく。幹部のメンバーとしては最近のこの3人の微笑ましさには癒され幼稚園でも見守るような感覚だった。


「じゃあ今日からね!」

「じゃあ俺たちのディナー要らないって言ってくるか、家でそれ用に作ろうぜ」

いつものごとくご馳走を頂く事になっていたので秋が料理担当の人に話をつけに言った。それを呆然と見ていた桃花がやっと口を開く。

「て、手慣れてますね」

「桃花もやる?とりあえず二週間コースかな。筋肉もつくと思う」

「参加します!」

真面目な桃花は唯の申し出を断ることもなく。やった事もないダイエット……と呟いた。彼の体質的に今まで必要なかったのだろう。


「なあに優、太ったの?」


戻ってきた秋が暮刃を連れてきた。
面白そうに笑った暮刃に優が不満げに呟く。

「甘いもの食べ過ぎました……」

「今で十分だけどなぁ、こっちおいで」

ソファに座った暮刃が手を広げると流れるように優が近づいた。腰を拾って自分の足の上に座らせ、撫でるようにお腹と足を滑っていく。


「むしろ痩せ過ぎじゃない?」

「俺の中にも理想があるもので」

「随分ご機嫌斜めだね」


くすくすと笑い、優の額に唇を落とすと少しだけ優の表情が和らいだ。突然の甘い雰囲気に目をそらす者が幹部の中で数名。
ダイエットの予定を立て上げた秋と唯が嬉しそうに近づいてくる。


「じゃあ腹筋、背筋、スクワットね!全部100回」

「ん」

「え、意外とやるんだね」

「やる時はこれくらいやらないと」

暮刃が驚くと優が立ち上がりすぐに動きやすい服に着替えていく。


「はい、今日の分始め!」


すでに始まったダイエットに桃花も慌てて参加する。意外にも全員それくらいは朝飯前だった。幹部の1人がすごいと褒めると嬉しそうに笑う3人にまた癒される。


「何やってんだお前ら……」


VIPルームに戻ってきた氷怜がギョッとして、暮刃が手を振るとその横に立って4人を眺める。


「ダイエットだって」

「……必要ねぇだろ」


その通りなのだが、本人たちは至って真面目にやっている。喧嘩こそできないが秋たちなりに男子として筋トレはやっていた。さらりと一通りこなすと次何をするか話し始める。


「あの細さにどこに筋肉付いてんだろな」

「不思議だよね」

「なに、ナニーお祭?」

騒ぎを聞きつけた瑠衣が特有の含み笑いで覗きにきた。その後ろからついて来た式が今日のディナーを持って来ている。

「今日は特に凝った料理したって……なんでお前らジャージに着替えてんの」

「ちょうどヘルシーな鳥料理さすが料理長!」

料理長と言うが唯が勝手に呼んでいるだけで、チーム中で料理好きな人間に氷怜達がいつも作らせているだけだ。

手元をひょっこり覗いた唯が喜び、不思議に首を傾げた式に笑った。

「ダイエットするの」

「誰が」

「おれたち」


また馬鹿なことを、としっかり顔に書いた式はもう何も言わずにテーブルに料理を運んでいく。今日は幹部も食事に交わるのでいつもより大所帯だ。


「あれ、みんなの分までヘルシー料理だね?」

どこから聞きつけたのか、不思議だが体に良さそうなものばかり作られている。

「ふっ……ははっ巻き添え食らったな」

「え、ごめんなさい」

「いや、良い。あいつが作ったやつはなんでもうまいからな」

「料理長さんまじで料理上手いですもんね」


みんながそれぞれ好き勝手に食べ始める。瑠衣が秋をいじりながらフォークを宙に動かしんーと唸りながら記憶を蘇らせた。


「ダイエットとかした事ないかモ」

「それ女の子に言ったら怒られるやつですよ。女の子は浮腫みやすいし男より太り安いですから」

「そんでダイエットまで調べたんだ?マメだねぇ唯ちん」

「お前までダイエットしなくてもいいと思うけどな」

唯の細さを心配した氷怜が頰をつまむ。柔らかさに思わず笑ったが、唯はダイエットは1人よりみんなと意気込む。相変わらずのサービス精神は見上げたものだった。


みんなでかぁと呟いた暮刃が優の頰に手を回した。するりと頭の後ろまで移動すると甘く微笑む。

「別に俺は痩せてほしいとも思わないけど、どうせなら違う方法でダイエット手伝ってあげようか」

「え?」

「気持ちよくさ」

優に向けて突然色気の猛威を奮った暮刃がさらりと言うので式と秋が同時に吹き出した。桃花は赤面し、まさか暮刃がそんな冗談を言うとは思ず驚愕する。

「……先輩ってたまにそういうこと言いますよね」

優がため息を吐くと、瑠衣が秋をべしべし叩いて爆笑する。

「暮ちん!!あはははは!」

「え、どんなダイエットですか?」

「ほら唯が理解してないし、食いついちゃいますから!」

「唯斗さん何でもないですから」


焦った式と桃花が唯にフォローしたが、あろうことか氷怜に聞きにいく。


「さすがに、自分で考えろ……」


氷怜が苦悩し始めるともう瑠衣は耐えられないと落ちるように笑い転げるが、周りにいた幹部の心境としてはそもそもここまで我慢している上司は見たことがない、と冷静な感想だった。

 

「あ、マッサージだ!」

「…………そうだな、そんなもんだな」



目を輝かせた唯にもうどうにでもなれという氷怜の顔が忘れられない一日となった。
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