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4.お酒は飲んでもふわふわ程度で留めましょう
しおりを挟む「うー、寒い。つか今のレジやってくれた子、連絡先くれた!」
「モテモテな事で」
「いや、お前も他の店員に貰ってたじゃん」
若い子が多いせいか積極的だな。
自分も学生だけど大学4年ともなれば10代はもう若い。それに今はあまり恋愛に興味が無いなと思うと積極的な彼らに余計若さを感じる。
まあ、ドラゴンもいるしそっちに気を取られてしまうのは仕方がない。正直恋愛より確実に経験できない貴重な体験だ。
「結構飲んだなぁ」
レイガがご機嫌に酔った報告をする。足取りは覚束ない訳じゃないけどオレもオレでそれなりに良い気分。そんな中でレイガを家に送るとなると一苦労。
「タクシーで帰るか?」
「おぶってツバサ」
「え、無理。オレもそれなりだから」
「一緒じゃんか!」
笑いのスイッチも入っているらしい。ゲラゲラと笑い出しまた腰にまとわりつく。
「タクシーゴーゴー!」
「オレも~」
帰りの方向はほとんど一緒だ。
実家のオレと一人暮らしのレイガ。そもそも実家もオレの家と近いから大学への距離も一人暮らしする必要もないけど、レイガは大学からは一人暮らし!と何故か決めていた。
コイツが洗濯物干してんの想像できないけど遊びに行くといつも綺麗な事が意外だ。
「あー!」
突然叫び出すから体が跳ね上がる。やめてくれこんな時間に大声出すのは。
「なに……」
「ツバサ、さっき見逃したって言ってた映画おれんちで見よ?」
それは世界的に人気なドラゴンのファンタジー映画だ。洋画のそれはリアルすぎて、3Dで見てしまったが最後。本当にドラゴンがいると錯覚するらしい。特に子供に熱狂的な人気があっていつか見ようとは思っていたけど機会を逃していたのだ。
でもテレビで放送されると聞いてドラゴンを日常的に見る者としてはやはり見ておいた方が良いのかとぼんやり思っていたわけだが、見事に見逃していた。
「ウチきて見よーよ」
「んーこのままいくと絶対寝るなぁ」
「寝てもいーじゃん。こんないい気分の夜は帰るのもったいないだろー」
オレを支えがわりにして自分の力で立ちもしないやつにそんなこと言われても。でもレイガは腰から離れようとしないし、周りの人がクスクスと笑い出した。こうなれば折れるしか無い、レイガの言う通り帰るのもったいないと言われればそんな気もしてきた。
「じゃあ、へいタクシーしてよ」
「いえーい!」
元気いっぱいに走り出したせいでまた笑われた。まあ、酔っ払いなんてそんなものだろう。見上げた空は暗くてドラゴンは見えない。
どこかにいるんだろうか。頰を撫でる夜風が返事をした気がした。
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