ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。

仔犬

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真相究明

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「……で?何、つーか俺はどこから聞けば良いんすかね英羅さんよ」

おっきなため息の後、脱力しながらも話を聞いてくれるそうだ。なんていいやつ初早希。

「ああもうお前が友達で本当良かったわ」

「一生感謝しろやー。さっきもマジで殺されるかと思った」

あー緊張したわーとソファにずるりと深く座り込む初早希。そりゃそうだよなあ。俺ですらあの2人の愛、つかそれ以上のデカい想いの勢いに驚いてたし流石のコミュ力高い初早希も黙るしかないだろう。

「いやほんとスンマセンネ……ずっとあいつらあんな感じで俺も俺で慣れてきてるとこあるわ……」

「慣れたらまた、この前までの英羅に戻んの……?」


初早希ってマジで状況把握能力上手いよな。しかも人の感情読みとんのも上手い。

「それがさ、なんでメイラが……あーメイラってこの前まで初早希が会ってたメンヘラクソビッチど畜生ニート英羅の略な」

喉が渇いたのか来夏が持ってきてくれた飲み物を飲んでいた初早希がお茶を吹き出した。顔にかかりましたが。

「ゲホッ……ま、マジかよ……お前仮にも自分にそのあだ名つけんのイカれてるぞ」

「あんな奴はそれで良いの!初早希があの紙渡してくれただろ?そっから何やかんやあって対面切って話してやろって思って」

「ちょい待て!なんやかんではしょるな!」

律儀な彼は俺の話を1から聞いてくれるようだ。5分以上は話していたけど知秋が来夏を引き止めてくれているのかベランダで2人が言い争うような光景が見える。すまんがもう少し待ってくれ。

とにかく、ごちゃごちゃながらも全部話した。初早希は静かに聴きながら時折不足を質問する。

手紙を読んで頭が痛くなったこと、そして夢で見た過去のこと。母さんが死んで父さんも死んで、俺は居なくなってズタボロになってメイラになっていったこと。父さんと母さんが絶対に助からない病気だったと知っていたことも死のうとして死ねなかった事、知秋と来夏が何に怒り、歪んでいったこと。そうして今ここに住んでいるのを。

広い部屋のせいで沈黙をすごい感じる。初早希は驚いた顔をしていたけどだんだん泣きそうな顔をして最後には俯いてしまうから焦るは俺の方だ。

「おーい初早希、お前が落ち込むところなんて一つもないよ。こうして俺の前に現れてくれて世話焼いてくれるやつがそんな顔すんなよ」


3秒くらい初早希は固まったままで俺がまた口を動かそうとしたその瞬間、耳がキーンとするくらいバチンと音をたてて自分の頬を両手でブッたたいた。

「は、初早希......?」

「悪い、俺ほんとに何も知らないのに勝手にいろいろして……過去も今もなんも知らなかった」

「いやだからそれも初早希が謝ることじゃ...」

肩に手をかけようとしたらその手を強く握られた。


「だから話してくれてありがとな」



やっぱこいつはいいやつ過ぎる。
真っ直ぐに俺を見抜く瞳は初早希がいつもする飄々とした目ではない。本気の男らしくて優しい目だ。


「俺も、聞いてくれてありがとう」


なんか泣きそうになって情けない笑顔になった。
最後はお互い気恥ずかしくて吹き出した瞬間バンッとベランダから音がした。そこには知秋が今にも飛び出しそうな来夏を押さえている。押さえている知秋も眉間にシワ、額に青筋......我慢の限界か?


「ああ、これだわ悪い悪い」

初早希がぱっと手を離すと来夏と知秋がキッと睨みそしてまた二人で喧嘩を始めた。つまり触れるなと言いたかったらしい。


「か、変わってねえなあ...あの嫉妬深さだけは高校の時と変わらないから安心するわ」


安心すんのかよと思ったがそれよりも今は話を進めるほうが大事だ。いつまでもあの二人が待ってくれるとは思わない。初早希も真面目な顔になって俺が話したことを口に出して反復し始める。


「……つまりだ、まず今更だけどさお前はちゃんとあの英羅が作った人格なわけだよな。それはほんとに驚いたよ」

そんな素振りは見せなかったけど初早希なりに人格が入れ替わったことは衝撃だったらしい。それでも今の俺にああして手紙を寄越したこいつはさすがだ。

「いきなり目を覚ました俺は最初まじで魔法でも起こったのかと思ったけどな……」

「そりゃそうだよ、むしろあの2人と馴染んでるとこがさすが英羅」

「最初は良かったけどなぁ……あの二人もちょっとおかしいのも分かってくるし、手紙もらってから全部ありのままを話したいんだけどあの二人を傷つける気もするし、なにが正しいのかわかんない上にあの二人が傷つきそうなことを言おうとすると割れるほど頭痛くなる。訳わかんないだろ?」

「だからお前は自分の中のもう1人に...あークソビッチ会おうとしたって事か?すげえな……」

改めて他人からそういわれると慌ててしまう。

「ク、クソビッチだけ拾うなよ、来夏が嫌がるからメイラなメイラ…...とにかく、俺の事作れるんだから会えるかなって……まあその前まで悩みすぎてパンクしたから勢いでいけたとも言えるんだけど」

そう言うと初早希が眉を下げた。ごめんなと謝りそうな勢いだったのですぐに言葉を続ける。

「初早希には感謝してるからな。お前の気持ちはすごい有難いしなんでこうなったのかわからないまま、楽しく3人で過ごしていけるとは思わないし」

「……そうか、でもごめん。そんでさ、立ち上がってくれてありがとうな」

「おう」


ニッ笑い合ってわだかまりが取れた気がした。でもやはり時間がなさそうだから話を続ける。


「たださ結局のところメイラに会ったら余計に意味がわからん事言われて。初早希もさ、多少メイラはあの2人の事好きなんじゃないかとか思わんかった?2人の事を親友として見てる俺を作ったからには情があって申し訳ないと思ってるって」

「……それは、あんな冷たい顔しててもそこだけは捨てられなかったんだろ」

「俺もそう思うよ。だってこうして監禁状態だけど、俺2人の事を嫌うとかそういう思考にならなかったわけだし……さっきも言ったけど来夏と知秋が傷ついたりするとすんげえ頭が痛くなんの、涙も出るしずっと泣いてんのよ心が。だからそんなに嫌ならお前が直接話して決着つけろよ!!ってメイラに言いに行ったのに……いざ会ったらどうだ。好きにしろ、俺には関係ない。泣いてないし騒いでもない。しかもその言葉に嘘もなく本気でそう言っているように見えた」

「え……でもそんな強靭な精神にも見えなかったわ。なんか壊れそうで、辛そうだった」


まるで目の前に居るみたいに俺を心配する表情で見つめる初早希に思わず慌てる。

「初早希、俺とメイラは違うからいまはそんな顔すんなって!まあ、でもとにかく初早希が見た通り知秋と来夏のことだけは強気で冷徹になのかと思ったら俺の中にいたメイラはもっとスンとしてた……そんで最後に無理やり心から追い出されそうになった時にさ、見えたんだわもう1人のボロクソに泣いてる高校生くらいの俺が」


もう1人居る、と聞いた初早希が目を丸くする。

「お前3人で構成されてんの……?」

「そう、びっくりして逆に吹っ切れたね。そんで見ただけで納得もした。ずっと俺の頭痛くしてたのも泣いてたのもそいつで……高校生くらいの俺はどうやら来夏と知秋のことがちゃんと好きらしい」




自分の精神世界は思ったよりも真っ暗でそこには俺以外に2人いた。とにかく死にたい俺と親友の事が好きな俺が。



「どうしたら良いかな、国語の先生にも聞いた覚えねえわ」


まるで物語みたいだろと茶化しても初早希は悲しそうな顔をするだけだった。



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