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我武者羅
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だいたい俺に託すくらいならもっと明確にあのメモに目的とか書いておけよ。親友に恋しろ!とか、サイコパス治せ!とか、脱メンヘラ!とか脱ニート!とかさあ。
人間目標がないと生きがいねえぞって、俺が言っても説得力はないけど。
今朝は考えるのやめ!とか決意したくせにやはりあれこれ考えてしまう。自分の在り方とか、2人の事、それからメイラの事。
だけど逆に、俺は作られた人格って意識してから第三者目線で見ることも出来るようになった。
親友2人は相変わらず俺が大好きで、大好き過ぎて少しイカれてて、だけどそれを嫌いになるとか今更思わない。
そうなんだよな、サイコパスの一面見ても気持ち悪いとかないな、そりゃたまに怖いけど絶縁したいとか全く思わない。
この感情はメイラのおかげではない、と思う。
なんとなくだけど、元々人が好きでそれぞれの個性だよな、なんて深く考えない性格だったからだ。それに親友だった2人をそう簡単に嫌うほど薄情な人間ではない。
「そのページ、そんなに面白いか」
「……え?」
知秋が後ろから指差した先に俺が読んでいた本がある。膝の上で開いて読んでいるうちにまた考え事をしてしまったらしい。
朝ご飯も食べ終わり、昼までのまったり時間は読書なんてする事にしたのは知秋の部屋にたまたま置かれていた小説があったからだ。イケメン俺様で読書家とはこれまた憎たらしい。
例のごとく知秋は俺を後ろから抱きしめながらスマホを弄っていたが俺の指が停止したことが気になったらしい。
「考え事しちゃってたわ」
「……倒れてからずっとだろ」
まあ、そうなのだが。
考えないようにとか思っても考えちゃうよなぁ。
知秋は案外こう言う時に、俺に踏み込んで来ない。そう思ったのは来夏は俺が考え事をしてると何を考えてるか聞いてくるんだけど、知秋は本当に必要な時にしか質問してこない。興味がないとかではなく、わざとそうしているようにも感じる。もしくは俺から言うのを待っているのか、とにかく慎重さを感じる。
でも確かに考えてるだけじゃダメだ。気になることは聞いてみよう。たとえばそうだな……。
「なあ、なんで2人は俺だとちょっとの事で慌てるの?」
俺の質問の意図が読めなかったのか知秋が小首を傾げた。
「たとえば何だ」
「うーん、ベランダに出たいっていった時とか、初早希が来た時なんて俺が頭打ったと思って慌てて入ってきただろ。その時は疑問に思わなかったけど……その、夢でメイラがベランダに立った時は慌ててなかったから」
夢で見た記憶を話すべきか迷ったが、2人だって認識している記憶のはずだ。話すくらい良いだろう。
「……そこを思い出したのか」
「思い出したってか、夢で見た。来夏も、まあ柵に寄りかかるのは嫌がってたけどそこまで慌ててなかったし。なんでかなって」
「なんで……」
俺が質問しているのに知秋が不思議そうな顔をした。自分でも気が付いてなかったのか?
「……何で、だろうな」
「いや知らんよ」
本当に自分では気が付いていないらしい。この感じからすると来夏も無意識なのだろう。2人ともメイラと俺では態度が少し違うがするのだ。
あ、エロスイッチ入った時はまた別の話だが。三代欲求はあれこれ考えても男だししょうがない、と言うことにする。俺も大人になったものだ。
「おわ!」
すると突然、俺の膝裏に手を入れ腰に手を回し自分に向き合うように一回転させられる。いや良いけど、でも今はやめてほしい気持ちでいっぱいだ。胸板にぴったり抱き寄せられるし、もうなんか美形ちっか。
マジでこう言うのをメイラはあの死んだ目でスンッて態度してたって事だろ。メンヘラなのにその辺の精神は鉄製か?さすがビッチは格が違う。
でもいつもの余裕の笑みかと思ったら、イケメンが苦笑気味に歪められてた。しかも黒の瞳が悲しげに揺れているから思わず焦る。
「何、また俺なんかやった?てか言った?」
覗き込むと、すっぽり埋まるように抱きしめられた。
「たまに」
「え?」
くぐもった声と同時にギュッと強くなる腕の力。
「お前が笑ってると……不安になる」
置いていかないで。
誰も何も言ってないのにそんな声が耳の奥で聞こえてきた。
人間目標がないと生きがいねえぞって、俺が言っても説得力はないけど。
今朝は考えるのやめ!とか決意したくせにやはりあれこれ考えてしまう。自分の在り方とか、2人の事、それからメイラの事。
だけど逆に、俺は作られた人格って意識してから第三者目線で見ることも出来るようになった。
親友2人は相変わらず俺が大好きで、大好き過ぎて少しイカれてて、だけどそれを嫌いになるとか今更思わない。
そうなんだよな、サイコパスの一面見ても気持ち悪いとかないな、そりゃたまに怖いけど絶縁したいとか全く思わない。
この感情はメイラのおかげではない、と思う。
なんとなくだけど、元々人が好きでそれぞれの個性だよな、なんて深く考えない性格だったからだ。それに親友だった2人をそう簡単に嫌うほど薄情な人間ではない。
「そのページ、そんなに面白いか」
「……え?」
知秋が後ろから指差した先に俺が読んでいた本がある。膝の上で開いて読んでいるうちにまた考え事をしてしまったらしい。
朝ご飯も食べ終わり、昼までのまったり時間は読書なんてする事にしたのは知秋の部屋にたまたま置かれていた小説があったからだ。イケメン俺様で読書家とはこれまた憎たらしい。
例のごとく知秋は俺を後ろから抱きしめながらスマホを弄っていたが俺の指が停止したことが気になったらしい。
「考え事しちゃってたわ」
「……倒れてからずっとだろ」
まあ、そうなのだが。
考えないようにとか思っても考えちゃうよなぁ。
知秋は案外こう言う時に、俺に踏み込んで来ない。そう思ったのは来夏は俺が考え事をしてると何を考えてるか聞いてくるんだけど、知秋は本当に必要な時にしか質問してこない。興味がないとかではなく、わざとそうしているようにも感じる。もしくは俺から言うのを待っているのか、とにかく慎重さを感じる。
でも確かに考えてるだけじゃダメだ。気になることは聞いてみよう。たとえばそうだな……。
「なあ、なんで2人は俺だとちょっとの事で慌てるの?」
俺の質問の意図が読めなかったのか知秋が小首を傾げた。
「たとえば何だ」
「うーん、ベランダに出たいっていった時とか、初早希が来た時なんて俺が頭打ったと思って慌てて入ってきただろ。その時は疑問に思わなかったけど……その、夢でメイラがベランダに立った時は慌ててなかったから」
夢で見た記憶を話すべきか迷ったが、2人だって認識している記憶のはずだ。話すくらい良いだろう。
「……そこを思い出したのか」
「思い出したってか、夢で見た。来夏も、まあ柵に寄りかかるのは嫌がってたけどそこまで慌ててなかったし。なんでかなって」
「なんで……」
俺が質問しているのに知秋が不思議そうな顔をした。自分でも気が付いてなかったのか?
「……何で、だろうな」
「いや知らんよ」
本当に自分では気が付いていないらしい。この感じからすると来夏も無意識なのだろう。2人ともメイラと俺では態度が少し違うがするのだ。
あ、エロスイッチ入った時はまた別の話だが。三代欲求はあれこれ考えても男だししょうがない、と言うことにする。俺も大人になったものだ。
「おわ!」
すると突然、俺の膝裏に手を入れ腰に手を回し自分に向き合うように一回転させられる。いや良いけど、でも今はやめてほしい気持ちでいっぱいだ。胸板にぴったり抱き寄せられるし、もうなんか美形ちっか。
マジでこう言うのをメイラはあの死んだ目でスンッて態度してたって事だろ。メンヘラなのにその辺の精神は鉄製か?さすがビッチは格が違う。
でもいつもの余裕の笑みかと思ったら、イケメンが苦笑気味に歪められてた。しかも黒の瞳が悲しげに揺れているから思わず焦る。
「何、また俺なんかやった?てか言った?」
覗き込むと、すっぽり埋まるように抱きしめられた。
「たまに」
「え?」
くぐもった声と同時にギュッと強くなる腕の力。
「お前が笑ってると……不安になる」
置いていかないで。
誰も何も言ってないのにそんな声が耳の奥で聞こえてきた。
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