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我武者羅

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何て悲しい夢だ。


起きたらボロボロと泣いていた俺は目を擦りながらベッドの上で上半身だけ起き上がった。結局あの後2人の前に戻らずに白い部屋に行き寝てしまった。そもそも体も本調子じゃなかったのかもしれない。
すっかり日付も変わり次の日だ。

珍しく2人も起こしに来なかった。
メイラに戻ると思ってるんだろと言った瞬間の2人の顔。あれは図星の顔だ。やはり2人にとってはメイラが本当の俺なのだろう。


「……なんか、まだ頭いてぇし」


窓から溢れる日の光は暖かくて今日も天気が良かった。気分は良くないけど相変わらずここからの眺めはいい。


今見た夢は、メイラのものだ。結局2人の口から聞く前に、こうしてまた夢で過去を見ることになってしまった訳か。それはそれで虚しい。

しかもこの夢はどうして、俺に見せるんだよ。
これまで最初の頃の一回きりであれ以降見せなかったくせに、このタイミングで記憶を見せるなんて意地悪なものだ。


「なんか、何とかしろって言われてるみたいじゃんか……」


これは、つまりに俺にどうにかしろと、あの2人をどうにかしろとでも言いたいのだろうか。
お前に任せたって、お前に任せたんだからメイラと同じことをするなって、そう言いたいのか。

メイラの望みは俺の中で消えること。
そして本当に消えてるのか眠ってるのか分かんないけど、俺の人格を設定した理由は初早希の手紙から考えると2人のためでもあるんだろう。今の夢の感情も小さな懺悔の気持ちを感じた。

どうにかするって俺の中ではもっとみんなで仲良くお出かけがいつか出来たらいいとかぼんやり思ってたのに。監禁とか不安とかそう言う病み部分を拭えれば良いななんて、そんなのは緩い考えだったわけか。


「……愛も俺に丸投げって……それはまた、お前ってやつは……」


もはや他人事だ。
ため息が出ても許してくれ。ちょっとくらい泣いても不貞腐れて機嫌悪くなっても良いじゃないかそれくらい。

だけど、ずっとそれじゃあだめだ。
俺だってわかる。悲観してただ何もしないんじゃ、メイラと同じだ。


偽物なりに、出来ることはあるだろう。


「取り敢えず、考えるのやめ!!メイラ!お前の身体でタバコ吸ってやるからな!」


よくわからない反抗期を迎えた俺は服を着替えて顔を洗い気分をリセットし今日居るはずの知秋の元に向かう。
知秋の部屋は本とかパソコンとか四隅に筋トレコーナーとかあって、なんか出来る男の部屋って感じでマジでムカつく。初早希お前もこう言う完璧なところにムカっときたんだろ?俺もだ。

まだ寝ている彼は黒色の掛け布団にくるまってすやすやとお眠りになっている。寝顔も男前でムカつく。
横まで行った俺は両手を広げ、知秋の上に向かって大ジャンプをかます。


「知秋!!」

「うぐっ!!いってえなああ………?!」

「起きろ!!そして朝の一服を寄越せ!」

「……はあ?」


いきなり何を言い出すんだこいつと言う目で知秋が目をパチクリさせている。俺はお構いなしに知秋の上で正座をしてべしべしと掛け布団を叩きもう抗議。


「今の俺には必要なの!」


そう今の俺には、必要だ。
メイラはメイラで俺は俺、取り敢えず今は深く考えず俺がやりたい事をやってやろうじゃないか。

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