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死生契闊
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2人の空気が一瞬にして張り詰める。
「言いたくないって言ってたけど、やっぱり聞きたいかな」
同時に黙り込む2人を俺はナポリタン食いながら待った。なんでこんな時に食べてるかって元気アピールでもあり自分への喝でもある。だってさ入院と聞いて、あのメイラのことだ。流石にもう予想はつく。
「一応俺の予想だけど……メイラさ、死のうとしたけど失敗して入院したんじゃないか?2人は入院してて驚いたって言ってたからその場にはいなかったろうけど」
当たりのようだ。
ぴくりと反応し、驚いた表情になる2人。知秋に名前を呼ばれ顔を向けると確認するように瞳を覗いてきた。
「……思い出した訳じゃないのか?」
「んー断片的なものだから、詳しくはわかんない。思い出すと何か不都合があったのか?」
本当は初早希の手紙を読んだだけだから心情の細かい部分までは分からない。来夏が言いにくそうにそっと話す。
「その時の事話すとパニックになったり、過呼吸とか暴れたりとかしてたから……」
「だから言いたくないって言ってたんだ。なるほど、ありがとな」
「……英羅?」
訝しげに覗き込む来夏の頭を撫でると言葉がよぎる。
来夏を可愛いと思う俺は作られたものかも分からない。どうだろうか、昔の俺も残っているからこれは作られた、とはまた違うのかもしれない。
作り上げた人格の俺がいきなり何がしたいとか考えても思いつかないし、こうして変わらず2人の話を聞いて、メイラのわからない部分を紐解いていくしか出来ることがない。
「じゃあ、一緒に住んだきっかけはそれ?」
「……そうだな」
「聞かれたくない?それも、今の俺だから?」
質問攻めの俺に知秋は黙り込んだ。何を隠しているのか、何を話したくないのかわからないと何も聞けないや。
ああ、何だか疎外感。俺だけが何も知らないなんて今更なのに、自分が作り物だとわかるとこう感じるのか。
「……英羅、何を見た。なんか変だぜお前」
「今日の英羅元気ない……」
「でも元の俺はずっと変だったろ」
間髪入れずに言い返すと二人は黙ってしまう。俺が珍しく強気な口調をしたせいか嫌な空気だ。
俺のせい、うまくいかない。
何を焦ってる俺、どうでもいいじゃないか俺の人生なんて、どうせメイラのものなのだ。早く二人と仲直りでもさせて脱メンヘラのハッピーエンドじゃないか。
あれ、何で俺こんな投げやりな気持ちになってるんだろ。何でこんな悲しいんだろ。
いつの間にか手は止まっていてさっきまで美味しかったナポリタンが色あせる。誰も何も話さない空間で俺が皿を置く音が響いた。
「……ごめんやっぱり横になってるわ。片付けまかせていいか」
「え、英羅?」
何だか涙まで出そうになってきて思わず立ち上がる。初めて食べ物を残してしまった。
来夏の戸惑った顔。知秋のまた不機嫌か、という顔。
それを見たら頭にカッと血が上って口が勝手に開いていた。
「お前らは俺が明日には、いつかは、どうせ元に戻るだろうとか、そんなんこと思ってるんだろ」
「……あ?」
知秋の眉がピクリと上がる。
こんなことを言うつもりなかったのに。感情がコントロールできない。
何か言いかけた二人を無視してすぐにリビングを出て風呂場に向かいカギを閉める。その場にうずくまって膝におでこをくっつけた。
こんな不機嫌丸出しなんて、まるでメイラみたいじゃないか。
「笑える。偽物のくせに……」
「言いたくないって言ってたけど、やっぱり聞きたいかな」
同時に黙り込む2人を俺はナポリタン食いながら待った。なんでこんな時に食べてるかって元気アピールでもあり自分への喝でもある。だってさ入院と聞いて、あのメイラのことだ。流石にもう予想はつく。
「一応俺の予想だけど……メイラさ、死のうとしたけど失敗して入院したんじゃないか?2人は入院してて驚いたって言ってたからその場にはいなかったろうけど」
当たりのようだ。
ぴくりと反応し、驚いた表情になる2人。知秋に名前を呼ばれ顔を向けると確認するように瞳を覗いてきた。
「……思い出した訳じゃないのか?」
「んー断片的なものだから、詳しくはわかんない。思い出すと何か不都合があったのか?」
本当は初早希の手紙を読んだだけだから心情の細かい部分までは分からない。来夏が言いにくそうにそっと話す。
「その時の事話すとパニックになったり、過呼吸とか暴れたりとかしてたから……」
「だから言いたくないって言ってたんだ。なるほど、ありがとな」
「……英羅?」
訝しげに覗き込む来夏の頭を撫でると言葉がよぎる。
来夏を可愛いと思う俺は作られたものかも分からない。どうだろうか、昔の俺も残っているからこれは作られた、とはまた違うのかもしれない。
作り上げた人格の俺がいきなり何がしたいとか考えても思いつかないし、こうして変わらず2人の話を聞いて、メイラのわからない部分を紐解いていくしか出来ることがない。
「じゃあ、一緒に住んだきっかけはそれ?」
「……そうだな」
「聞かれたくない?それも、今の俺だから?」
質問攻めの俺に知秋は黙り込んだ。何を隠しているのか、何を話したくないのかわからないと何も聞けないや。
ああ、何だか疎外感。俺だけが何も知らないなんて今更なのに、自分が作り物だとわかるとこう感じるのか。
「……英羅、何を見た。なんか変だぜお前」
「今日の英羅元気ない……」
「でも元の俺はずっと変だったろ」
間髪入れずに言い返すと二人は黙ってしまう。俺が珍しく強気な口調をしたせいか嫌な空気だ。
俺のせい、うまくいかない。
何を焦ってる俺、どうでもいいじゃないか俺の人生なんて、どうせメイラのものなのだ。早く二人と仲直りでもさせて脱メンヘラのハッピーエンドじゃないか。
あれ、何で俺こんな投げやりな気持ちになってるんだろ。何でこんな悲しいんだろ。
いつの間にか手は止まっていてさっきまで美味しかったナポリタンが色あせる。誰も何も話さない空間で俺が皿を置く音が響いた。
「……ごめんやっぱり横になってるわ。片付けまかせていいか」
「え、英羅?」
何だか涙まで出そうになってきて思わず立ち上がる。初めて食べ物を残してしまった。
来夏の戸惑った顔。知秋のまた不機嫌か、という顔。
それを見たら頭にカッと血が上って口が勝手に開いていた。
「お前らは俺が明日には、いつかは、どうせ元に戻るだろうとか、そんなんこと思ってるんだろ」
「……あ?」
知秋の眉がピクリと上がる。
こんなことを言うつもりなかったのに。感情がコントロールできない。
何か言いかけた二人を無視してすぐにリビングを出て風呂場に向かいカギを閉める。その場にうずくまって膝におでこをくっつけた。
こんな不機嫌丸出しなんて、まるでメイラみたいじゃないか。
「笑える。偽物のくせに……」
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