ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。

暗中模索

2

俺がお前らと高校以降で初めて会ったのは本当にたまたまだった。

その時はとにかく営業回りまくっててさ、ある日ようやく掴んだ取引先から出てきたのがまさかの知秋だった。相変わらずカッコよくて、相変わらず無愛想で偉そうでさ。変わらなすぎて笑えた。

でもちゃんと社長やっててそう言うところマジでムカつくよな？俺はマジでムカついたから飯をたかった。
もう超しつこく。当時から俺のそういうところのメンタル最強なの、英羅なら知ってるだろ？まあだから営業やってんだけどさ。

知秋はすんげえ嫌そうな顔してた。
もちろん予想してよ、だってそんなの高校の時からじゃん。俺あの時も英羅だけじゃなく2人のこともかなり遊びに誘ってたんだけど揃いも揃って英羅が行かないなら行かないって毎回断られてたし。

でも大人になってまで英羅英羅とはならない筈だろ？俺その時まだ英羅と繋がりあるって知らなくて、だけどなんかすぐに帰りたがってるから、これはもしや女が出来たんじゃねえのかって。もうピンときたわけ。

知秋の女だよ？いやそりゃ見たいに決まってるじゃん。俺はその日知秋で最後の営業回りだったから、持ち前のしつこさで家まで着いて行ったよ。辿り着いたでっかいマンションでもう大きな声で話しまくって近所迷惑になる前に家入れてもらう作戦ね。

そしたら出てきたのがまずびっくりよ。
来夏だったわけ。すんげえ美人になっててさ。人間こんなに美しく育つかってツッコミ入れたいくらいだったけど、まあ来夏もこれまた俺を見てものすっごい嫌な顔して一瞬で2人で喧嘩を始めた。
あれ知秋はともかく来夏ってこんなだったっけってポカンってしてる間に本当の怒鳴り合いが始まってさ。

いや俺そこまで嫌われてんのかなって流石に思ったけどなんか2人して何か隠したがってるように見えて、あれやっぱこれ女じゃねって玄関から廊下を覗いてみた。


そこに英羅が立ってた。









「……うるさい」

「え、英羅！何で出て来て……」

「……リビングに居たんだ、部屋に入れなかったのそっちだろ」



来夏が一気にしおらしくなる。怒られた子供みたいに、少し怖がっているようにすら俺には見えた。

だけど俺ですら怖いって思うくらい声は冷たいし、それに英羅の表情は俺の知る英羅とは別人だった。


「……え、英羅、だよな？」

「……初早希か」


俺を一瞬見ただけで英羅はすぐにリビングの方に行っちゃって2人はそれを追いかける。俺も流れで部屋に上がってその光景を見てた。

英羅はバスローブ羽織ってて、そこから見える足が真っ白で元々細身だったけどもっと細くなってた。

可愛い顔でにこにこ笑うお前が一度も笑わずただ静かにソファに座って丸くなって、もう完全に別人みたいで流石の俺もびっくりして言葉が出なかったよ。

知秋と来夏が機嫌でも取るように英羅に話しかける。

「悪いないきなり、こいつがどうしてもって……」

「本当だよ、何で連れてきたの？！英羅が嫌がってる！！」

「てめえに話してねえんだよ来夏！！」


結局すぐに2人でまた喧嘩始めちゃって、俺にはなんかもう全部がギスギスしてるように見えた。知秋と来夏って一緒に居るけどすげえ仲良しって感じでもないのは分かってたけどさ、ここまでの喧嘩は見た事なかったから。

英羅は怒鳴る2人をじっと見つめて、静かにこう言った。


「……うるさくて頭痛いから向こうで話せよ。人が来たのにお茶くらい淹れたら」


その声に何故か俺が心臓飛び出そうなくらい緊張した。聞いたこともない英羅の声は感情がすっぽり抜けてるのに、その声には凄みがあった。

別人みたいなのに目が離せないところは変わってなかったよお前。