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光芒一線
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「部活のやつくらいしかもう関わりないけど、お前らは相変わらず3人しっぽり?」
「し、しっぽり……まあ特に会ってないなぁ」
どっちの俺もクラスの人との記憶はない。
「つーかいつからここに本格的に移ったんだよ?前来た時少しの間居候って聞いたけど」
なるほど居候ってことにしてたんだ。
「最近だよ」
俺の記憶上ではだが。知秋は何も答えない。たぶん無理に俺と引き離したところで騒がれるのが分かってるからだ。俺も自分の意思でここに居るし、下手な事は言わないようにしないと。
しかしだ、さっきからブーブー言ってるそれは止めてくれ。
「あの、知秋さんさっきから携帯のバイブがやばいくらいなってますけど……」
「良い」
「良くねぇだろ、せめて誰か確認とか。仕事なんじゃねえの?」
「良い」
「社会人なめんな!」
まさしくブーメランのような言葉だがそれはそれ。知秋のポッケから勝手にスマホを取り出し画面を確認するとCMでよく見る会社の名前が出てきた。その下には名前が載っている。
「この会社の林田さんって人からだよ」
「良い」
よかねぇだろ。ずっと鳴ってんだぞ。相当緊急なんじゃねえの?!
するとにこやかに見ていた初早希が呟く。
「林田ってその会社の社長じゃん」
そんな会社と繋がりあんのかこいつは!!
「出ろ出ろ出ろ!!!!」
勝手に通話ボタンを押して知秋の耳に当てると唸った知秋は仕方なく立ち上がる。
舌打ちしてましたけど、社長さんに聞こえたのではとか思う前に知秋があろう事か叫び出した。
「うるせーな昼間っから良い加減にしろ!!あ?データ?それは昨日……無くしただあ?!ふざけんなよクソジジイ……」
本当にお前も社長ですかと言いたくなるような会話に唖然としていると舌打ちがまた聞こえ何故か俺を睨んでいる。いや初早希のことも睨んでいる。
「ぜってえ変なことすんな……」
鬼のような冷気の乗った声を発して知秋が自室に向かっていく。なるほど、俺と初早希が2人きりになるのが嫌だと。人殺しでもしそうな殺気にも初早希は飄々としている。
「ははっ、相変わらずだね。あいつ」
「……初早希がゆるくて助かったわ」
ため息をつくと初早希と視線があった。
あんまりにもマジマジと見つめてくるから驚く。
「な、何?……ニートの顔がそんな面白い?」
「自分で言った!やーやっぱり英羅だよなーと思って」
「え?や、そうだけど……」
懐かしいって意味なのだろうけど、そんなに見るか?吊り目で少し狐っぽい目は変わらない、この目は人のことをよく見ていた。気がきく分、周りへの関心が高いのかも知れない。
そんな考えを巡らしていたら耳がとんでもない言葉を拾った。
「もう俺とは寝てくれない?」
呼吸が止まった。
「……へ?」
なんて言った?いま初早希はなんて言った。固まった俺を初早希はじっと見ている。まるで心の奥でもみるようなそんな顔で。
もう俺とは寝てくれない?かだって?
その言葉はもちろん俺に身に覚えはない。でも言葉にもうが付くって事は前にそんな話があったという事だ。寝ると言う意味がソウイウ意味ならばその言葉に関係があるとしたら、それはメイラだけだ。
唐突に恥ずかしくなって、一気に顔が熱くなる。俺じゃないけど俺がこいつにそんなような事をしでかしたのかと思うと耐えきれない。
真っ赤になった俺を初早希は表情も変えずにまだじっと見ていた。俺はなんて答えて良いか分からない、なんだよ。何なんだよ。何したんだよメイラ!!
「……成功したんだな」
初早希が静かにそう呟いた。
明らかに、何かを知っているそんな目だ。まだ恥ずかしさでどうにかなりそうだが聞き逃してはいけないセリフだと心が叫ぶ。
「……せ、成功って、何?」
なんとか絞り出した言葉で、ゆっくりと確かめるように聞く。
何かを知ってるんだ。
俺のこの不思議な状況を知っているんだろうか、それとも俺とあの2人の関係を……。
「今度こんな事しやがったら取引は無くすからな!!」
その時、知秋の声がまた大きくなった。こちらに向かってきている。まだ聞きたい事があるのに。待ってくれ。
「あ……」
焦る俺に初早希は唇の前で指を立てた。小さな声で同じく小さく折られた紙を俺に渡す。
「俺もしまた英羅に会えたら、絶対にこれを渡そうと思ってた。それは隠して、見つからないように……また絶対に時間作るから、読んでも焦らないで、頼むから、壊れないでくれ」
早口で、壊れないでだけゆっくりと話し終えると初早希はすぐにいつもの笑顔に戻る。俺は咄嗟に服の中に紙を隠した。
「あのクソジジイ、俺が渡したデータゴミ箱に捨ててやがった」
「うわあ、それはたしかに怒るわ」
悪態をつきながら戻ってきた知秋が俺と初早希を交互にみると不機嫌そうに話す。
「……何もしてねぇだろうな」
「あいっ変わらず独占欲丸出しだねー知秋。そんなんじゃ英羅が嫁にいけないじゃん」
「いや、俺嫁に行くのかよ」
「ああ?!英羅はどこにもやらねえよ!!」
「あーはいはい知秋、ほら座る!初早希のいつもの冗談だから!」
なんとかいつも通りの返しができているはずだ。心臓だけがマラソン中のようにバクバク言っている。
「ま、お前らが楽しそうで良かったわ」
「ああ、まあね。元気だよ」
少し話しただけで、すぐに初早希は帰るようだ。もともと仕事なのだから当たり前だが、こちらとしては忙しない。まだ残って欲しいがどうしようも無い。
玄関まで見送ると言えば知秋が心底嫌そうな顔で俺に後ろから抱きついたままついてくる。
「知秋がもう少し大人ならなぁ」
「早く帰れ。イメージ案は渡しただろ。後わざわざ来るんじゃねえよ、毎回毎回勝手に押しかけやがって」
なるほど、もしかしたら前もこの調子で彼がこの家に来たおかげでメイラは初早希と会えたのかもしれない。
「だって良い部屋住んでんだもん。ま、邪魔者は退散しますよ……じゃあ、またな」
最後に視線が合った。
目だけが俺へ向けてまたなと言う。
その言葉が頭を何度も巡るのだ。
「し、しっぽり……まあ特に会ってないなぁ」
どっちの俺もクラスの人との記憶はない。
「つーかいつからここに本格的に移ったんだよ?前来た時少しの間居候って聞いたけど」
なるほど居候ってことにしてたんだ。
「最近だよ」
俺の記憶上ではだが。知秋は何も答えない。たぶん無理に俺と引き離したところで騒がれるのが分かってるからだ。俺も自分の意思でここに居るし、下手な事は言わないようにしないと。
しかしだ、さっきからブーブー言ってるそれは止めてくれ。
「あの、知秋さんさっきから携帯のバイブがやばいくらいなってますけど……」
「良い」
「良くねぇだろ、せめて誰か確認とか。仕事なんじゃねえの?」
「良い」
「社会人なめんな!」
まさしくブーメランのような言葉だがそれはそれ。知秋のポッケから勝手にスマホを取り出し画面を確認するとCMでよく見る会社の名前が出てきた。その下には名前が載っている。
「この会社の林田さんって人からだよ」
「良い」
よかねぇだろ。ずっと鳴ってんだぞ。相当緊急なんじゃねえの?!
するとにこやかに見ていた初早希が呟く。
「林田ってその会社の社長じゃん」
そんな会社と繋がりあんのかこいつは!!
「出ろ出ろ出ろ!!!!」
勝手に通話ボタンを押して知秋の耳に当てると唸った知秋は仕方なく立ち上がる。
舌打ちしてましたけど、社長さんに聞こえたのではとか思う前に知秋があろう事か叫び出した。
「うるせーな昼間っから良い加減にしろ!!あ?データ?それは昨日……無くしただあ?!ふざけんなよクソジジイ……」
本当にお前も社長ですかと言いたくなるような会話に唖然としていると舌打ちがまた聞こえ何故か俺を睨んでいる。いや初早希のことも睨んでいる。
「ぜってえ変なことすんな……」
鬼のような冷気の乗った声を発して知秋が自室に向かっていく。なるほど、俺と初早希が2人きりになるのが嫌だと。人殺しでもしそうな殺気にも初早希は飄々としている。
「ははっ、相変わらずだね。あいつ」
「……初早希がゆるくて助かったわ」
ため息をつくと初早希と視線があった。
あんまりにもマジマジと見つめてくるから驚く。
「な、何?……ニートの顔がそんな面白い?」
「自分で言った!やーやっぱり英羅だよなーと思って」
「え?や、そうだけど……」
懐かしいって意味なのだろうけど、そんなに見るか?吊り目で少し狐っぽい目は変わらない、この目は人のことをよく見ていた。気がきく分、周りへの関心が高いのかも知れない。
そんな考えを巡らしていたら耳がとんでもない言葉を拾った。
「もう俺とは寝てくれない?」
呼吸が止まった。
「……へ?」
なんて言った?いま初早希はなんて言った。固まった俺を初早希はじっと見ている。まるで心の奥でもみるようなそんな顔で。
もう俺とは寝てくれない?かだって?
その言葉はもちろん俺に身に覚えはない。でも言葉にもうが付くって事は前にそんな話があったという事だ。寝ると言う意味がソウイウ意味ならばその言葉に関係があるとしたら、それはメイラだけだ。
唐突に恥ずかしくなって、一気に顔が熱くなる。俺じゃないけど俺がこいつにそんなような事をしでかしたのかと思うと耐えきれない。
真っ赤になった俺を初早希は表情も変えずにまだじっと見ていた。俺はなんて答えて良いか分からない、なんだよ。何なんだよ。何したんだよメイラ!!
「……成功したんだな」
初早希が静かにそう呟いた。
明らかに、何かを知っているそんな目だ。まだ恥ずかしさでどうにかなりそうだが聞き逃してはいけないセリフだと心が叫ぶ。
「……せ、成功って、何?」
なんとか絞り出した言葉で、ゆっくりと確かめるように聞く。
何かを知ってるんだ。
俺のこの不思議な状況を知っているんだろうか、それとも俺とあの2人の関係を……。
「今度こんな事しやがったら取引は無くすからな!!」
その時、知秋の声がまた大きくなった。こちらに向かってきている。まだ聞きたい事があるのに。待ってくれ。
「あ……」
焦る俺に初早希は唇の前で指を立てた。小さな声で同じく小さく折られた紙を俺に渡す。
「俺もしまた英羅に会えたら、絶対にこれを渡そうと思ってた。それは隠して、見つからないように……また絶対に時間作るから、読んでも焦らないで、頼むから、壊れないでくれ」
早口で、壊れないでだけゆっくりと話し終えると初早希はすぐにいつもの笑顔に戻る。俺は咄嗟に服の中に紙を隠した。
「あのクソジジイ、俺が渡したデータゴミ箱に捨ててやがった」
「うわあ、それはたしかに怒るわ」
悪態をつきながら戻ってきた知秋が俺と初早希を交互にみると不機嫌そうに話す。
「……何もしてねぇだろうな」
「あいっ変わらず独占欲丸出しだねー知秋。そんなんじゃ英羅が嫁にいけないじゃん」
「いや、俺嫁に行くのかよ」
「ああ?!英羅はどこにもやらねえよ!!」
「あーはいはい知秋、ほら座る!初早希のいつもの冗談だから!」
なんとかいつも通りの返しができているはずだ。心臓だけがマラソン中のようにバクバク言っている。
「ま、お前らが楽しそうで良かったわ」
「ああ、まあね。元気だよ」
少し話しただけで、すぐに初早希は帰るようだ。もともと仕事なのだから当たり前だが、こちらとしては忙しない。まだ残って欲しいがどうしようも無い。
玄関まで見送ると言えば知秋が心底嫌そうな顔で俺に後ろから抱きついたままついてくる。
「知秋がもう少し大人ならなぁ」
「早く帰れ。イメージ案は渡しただろ。後わざわざ来るんじゃねえよ、毎回毎回勝手に押しかけやがって」
なるほど、もしかしたら前もこの調子で彼がこの家に来たおかげでメイラは初早希と会えたのかもしれない。
「だって良い部屋住んでんだもん。ま、邪魔者は退散しますよ……じゃあ、またな」
最後に視線が合った。
目だけが俺へ向けてまたなと言う。
その言葉が頭を何度も巡るのだ。
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