ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。

仔犬

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光芒一線

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「……怒ってないなら、どうしたんだ」

閉じ込めたいから、外に出るなって怒ってるんじゃ無いのか?俺と言うものがお前らのものって2人は思い込んでるから外に出るなんて有り得ないって事じゃなかったのか?

来夏が今度は震え出して自分を抱きしめるように縮こまっていく。

「こ、怖いんだ僕は……」

「何が?」

「君が、居なくなることが」


それは逃げ出すから怖い、とはまた違う意味合いに聞こえた。
何だよ。何が怖いんだよ。だいたいこの高さのマンションのベランダから逃げ出すなんてしないのに。でも何でとか細かい事を今聞くのは余計に来夏を混乱させる気がしてとにかく宥める。

「来夏、悪かった。俺が軽率すぎた。2人からすりゃいくらいきなり俺が変わっても外に出したくないよな」

ブルブルと震える体をゆっくりとさすり続ける。俺がここから出る事に対して知秋と来夏の反応はやっぱり違う。知秋の死んでやると言うあの言葉は怒りに近かった。でも来夏は恐怖だ。

「ごめんな、怖かったよな。ごめん」

来夏はゆっくりと首を横に振った。
ずるずると身体が落ちていきお互い床に座り込む。今度は抱きしめると来夏もいつもみたいに抱きしめ返してくれた。


「僕も、叫んでごめんね……」

「驚いたけど全然平気。しかしそっかあ、まあ無理にとは言わないけど、今の俺はまじで普通に外の空気吸ってピクニックと言うかそんな感じのつもりだったからさあ」

「ごめん、どうしても……」

「いや残念とかじゃなくて、来夏が辛そうだからそれが辛いわ」

「え……」


知秋もだがこんなに怯えたり過剰反応を見てしまうとやはり何かしないと、と言う気持ちが大きくなる。だって俺といる限り外もベランダすらもトラウマレベルなんてやばい話だ。しかも原因は俺、これは放って置けない。


「……あ、じゃあさ。あれつけてよ。最初の足枷」


最近2人がいるからすっかり出番がなくなっていたけど、鎖がついてたら安心じゃないか。俺が原因なら回復させるのも俺じゃないとね、自分のケツは自分で拭くさ。

「あれつけたら少しは変わる?それでも怖いなら来夏が俺の事掴んでてよ。そんで一緒に食べよ?晴れててさ、風気持ちーよきっと」

来夏は綺麗な目をパチクリさせて笑う俺を見ていた。
そうだよ、見てよ。今の俺元気な上ニートで体力有り余ってる精神無敵バージョンなんだから。

「あんなにベルト嫌いだったのに….」

「え、やっぱ俺嫌がってた?まあそうだよな邪魔だし。でも俺来夏が安心するなら全然気にならんけど、てかここ繋ぐとこある?」


部屋から自分で足枷持ってきたら放心状態の来夏が戸惑いながらも白いベルトを足首につけてくれた。この部屋にも繋ぎ止める所があるようだ。
どうやらベルトはベルトでも鍵の部分がスマホで操作して開くようになっているらしい。ハイテクに関心しながらも装着してもらったので足を動かし馴染ませる。

「よし、食うかねハンバーグ。冷めちゃったかな」

取り敢えずポテトを味見。あつあつじゃあないけど火傷しない程度の程よい暖かさ。セーフだ。

ヒモのようなワイヤーのようなものを引きずりながらお皿を二つ持ち上げる。

「ほら来夏は飲み物持って」

「え、あ……待って!」

俺がベランダに先に行こうとすればすぐにパタパタと来夏が駆け出した。リモコンを持つとベランダの窓がゆっくりと開いていき、風が一気に吹き抜けた。

なんだよ最高じゃん。汚くないし超快適な部屋だけど窓開けたら余計に世界が広く感じる。

「英羅まだ、待って」

来夏は俺の手からお皿を受け取りベランダのテーブルに運んでいく。飲み物もどこからか持ってきたデザートも持ってどんどんセッティングしていくと2人掛けの椅子にようやく座った来夏。白いクッションの置かれたリゾートにありそうなイスに横向きに座り俺の座る場所を作った。

「足の間に、居てほしい……」


まだ不安げに言うがそれくらいもちろんOKだ。ゆっくり近づいて来夏の足の間に移動するとすぐに腕を引かれ胸の中に収まる。

「まだ怖い?」

「……少し」

「そっか」

それでもここまで出れたことは少しでも来夏の恐怖を変えられるかもしれない。今日だけじゃなくて、またこうして外で美味しいものを用意して楽しい思い出を増なぜばもっと安心できるのだろうか。

「ちょーっと腕伸ばすな?」

自分の行動に注意しながらハンバーグとフォークに手を伸ばす。まだお皿もあったかい。

一口サイズに切ってまずは俺がパクり。いや最高。俺の元の生活とは違って肉が格段に良いし、まあ俺の腕も有りますけどね?

もう一度一口サイズにして今度は来夏の口に運ぶ。

「来夏、あーん」

ようやく食べてくれた来夏はいつも通りへにゃって柔らかい笑顔になるかと思ったけど、まだ泣きそうな顔。

濡れた宝石みたいに瞳が潤む。



「居なくならないで……」



この部屋と足枷は俺を繋ぎとめ、2人を安心させる。
だけどこんなに悲しい顔をしている来夏を笑顔にできない。ハンバーグが足枷よりも意味の無いものになるなんて悲しい話だ。







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