ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。

仔犬

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「思えば2人は俺がいないと他の人と世間話すら出来なかったよなぁ」

「出来ないんじゃなくてする意味が無かったからしてねえだけ」

「1番ひどいだろ……」


ケーキを食べながら思い出話に花を咲かす。ソファで知秋の足の間にいながら俺の足の間には床に座った来夏が居る。来夏を撫でると気持ちよさそうに微笑んだ。


「英羅」


知秋に呼ばれると口にケーキが運ばれてきた。

いや、俺だってご飯くらい1人で食べれるし鍋はちゃんとテーブルに座って食べたとも。だけど食後のデザートはテレビ見ながらソファにしよと思ったら全員こっちにくるし、しかもどっちが俺を抱きしめるとかなんとかで喧嘩するからこれもまた交代制!と俺が断言して止めた。

なんかもう、なんだこれ。


「スキンシップが145パーに上がってんだよ……」


もう今更恥ずかしいとか無いさ、だって昔からこうだったし。レベルが上がっただけだと思えば飲み込める。ため息をつく俺に知秋が鼻で笑って言った。


「1番最初は英羅が大概だったがな」

「いや、そんな事ねぇだろ」

「僕は英羅が撫でてくれるの好きだったよ」

「え、俺そんな撫でてた?」

「普通に人の膝乗ってくるし」

「嘘だろ?!」


嘘だろと言った瞬間、夢でもない記憶が蘇った。これは俺の知らない俺ではない、確かに高校時代の俺スキンシップ、激しかったような……。


「順番は逆なんだよ、お前が人との距離がねぇから俺らも無くなってんだろ。まあお前は誰に対してもそうだし、その度にそりゃもうハラワタが煮え繰り返って仕方なかったわ」

「……や、なんか、すみません?まさか2人がそこまでの気持ちだなんて知らなかったし……だいたい嫌なら言えばいいじゃん」

「言ったら、どうしたんだ」

「え?」

肩口に知秋のくぐもった声。
高校生の時の俺なんて女の子大好きで男子は馬鹿騒ぎするものと勝手にインプットされていたからまさか親友の2人が俺に恋心を抱いているなんて思わない。
もし他のやつに触るなとか、近いから嫌だ、なんて言われても俺は気にしなかったと思う。いつも通りまた変なこと言ってるよって、それだけかもしれない。


俯く俺を来夏が覗き込む。

「あの時の英羅は人が好きだったし、僕達のことは大切にしてくれてたけど特別じゃなかった」

ケーキがテーブルに置かれた。ベリーがいっぱい乗ったチョコケーキ、男が食べるには可愛すぎるけど甘くて美味しい。だけど聞こえてくる声は酸っぱくなるほど切ないのだ。

「色んなとこを見てどこへでも行くから、俺はお前をずっとこうしたかったよ。でも、それ言ったら離れていくかも知れねぇ……」

抱きしめる力がどんどん強くなる。声も次第に低くなっていく。

「ち、知秋」

「英羅がどこかにいくなら、僕は」

来夏まで泣きそうな瞳で俺を見る。きらきらの目は夜空でも写したみたいだ。その中に俺が写っている。


俺を、俺を見ているのか。
その目は本当に俺見ているのか。



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