ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。

仔犬

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「今度また短期バイトすんだ~」

何気なく言った言葉だったのに2人は何故か固まってしまう。バイトなんてずっとやってるし、あいてる時間の掛け持ちだったと言うのに。

すぐに慌て出した2人からいつどこで何をするのと質問責めが来たので期間は2週間ハロウィンまでで、特別ブースにお菓子の販売を駅前でやるよと伝えた。

そしてバイト当日になって行ってみたら2人がいたのだ。目立つほど整った顔が同時にこちらを向く。

「な、なんで……?」

「英羅がやるって言うからだろ」

「うん」

2人は何でもないように言ったけど、その時は流石にびっくりした。だってこいつらバイトした事ないはずだし、しかも性格的に向いてなさそうな接客業で、さらにハロウィンコスプレの制服なのだこのバイトは。


「絶対無理だろ……愛想笑いできんの?ちょっとやそっとで怒っちゃだめだよ?」

「俺に出来ないことなんて無い」

自信たっぷりの知秋の横で来夏も頷いた。本当かよ。お前ら基本他人無視じゃん。

「俺お前らの面倒見ないからな……」

俺はため息を吐きながら用意された制服に着替えていく。ちなみに俺は悪魔の格好でツノのついたカチューシャと黒いエプロンに黒いシャツと黒いパンツ。真っ黒全身コーデに尻尾付きだ。
ふむ、思ったよりもマシかも。もっと派手なコスだったらどうしようかと思っていたけど、ツノと尻尾とれば普通と大差ない。

全身真っ黒だけど元々アーモンドみたいに明るい瞳とアッシュベージュの髪色のおかげで根暗には見えないから助かった。髪も整えると、ツノと尻尾さえ無ければバーテンダーにいそうだな。

そして2人は……と振り返ったらこれまたよく似合う。こんだけ顔が良ければそりゃそうか。
小さな黒いリボンをワイシャツの襟に巻き、黒いスラックスに大きなマント。牙をつけたらドラキュラの完成だ。知秋の黒髪と男らしさが品よく纏まっててそれこそ映画に出てきそう。

「おお似合うじゃん」

「当たり前だろ……にしても動き辛えなこれ」

「ほらだから不機嫌出すなよ。せっかく格好いいんだから」

知秋が嫌そうにマントを乱暴に払うのでずれを直してあげると不満げにしながらも大人しくしてくれる。

「てか、来夏は何やってんの」

「これ着方分かんない……」


俺たちとは対照的に真っ白な服に身を包んだ来夏は翼を持って立ち尽くしていた。なにこれみたいな顔をしているので仕方なく着替えを手伝ってあげる。翼は白のタキシードのようなものの上から背負うらしい。あっという間に天使様の出来上がり。

「これまた美少年に合う良いもの選んだな」

「……似合う?」

「そりゃもう」

知秋もなんだかんだ俺が褒めると嬉しそうだし、来夏もへにゃって可愛く笑うから結局2人の面倒見ちゃうんだよなぁ。

着替えたところで丁度今回のバイトの店主が顔を出した。


「おお良いね!似合う似合う。いやあ今年は君たちみたいなイケメンが来てくれて助かったよ」

「今年は……?」

「去年は人数が多い代わりに全員ラグビー部の子でね。愛想は良いんだけど、こうなんというか、屈強過ぎたと言うか……」


お菓子を売ってるとは思えないほどの筋肉のせいで近寄り難かったと。なぜ雇う前に気が付かないのか不思議だがそれに比べたらまともだろう。知秋と来夏に愛想笑いができるのであれば。

「ちなみにそのラグビー部には何着せたんですか?」

「色んなの着せてあげたかったけど、なんせ筋肉で着れるものがなくて……結局大きめの作りだった囚人のコスプレを色違いで……」

「それはまた、屈強な囚人を生みましたね……」



俺なら絶対に近寄れない。




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