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来夏がにっこり笑って答える姿にがっかりしてしまった。知秋も特に驚く様子もなく否定しないし、まじで俺は何もしてなかったらしい。何故か知秋まで来夏と真逆の隣の席に俺を挟んで座る。前がガラ空きの長テーブルなんて居心地が悪い。
「あのな、何かしろよとか怒れよ。やばいじゃん俺ヒモよりもやばい引きこもりじゃん」
「だって本当に、そうだったから」
「お前はここに居てくれるだけでいい」
「……そーですか、それがやべえって言ってんだけど、聞いてたか?」
「英羅の願いなら何でも叶える……それにお前は気分の上下が激しかったから」
パンを掴んだ知秋はちぎって口に放り投げる。
それって情緒不安定だったってことか?まあ夢の中のあの俺ならありえる話だ。
「メンヘラ英羅くんはどうだか知らないけど、今の俺はこんなに元気だから暇なんだよ。あ、じゃあせめてテレビとか見たい」
「……分かった」
知秋は頷いた。
でも俺の目を見て何かを確かめている。
「……もしかしてそのうちすぐ見なくなるって思ってる?」
「英羅は前テレビ見たいって言った後、テレビをつけてニュースを見たら怒り出してあの部屋のテレビ割ったんだ」
何故か面白そうに語る来夏の話に俺は青ざめた。
「……は?」
「だからあれは2台目で、もう見ないって言ったからアンテナにつなげてない。それでもいつか見るかと思って買い替えておいて正解だな」
なんでもない事のようにいう知秋が俺は信じられなかった。ニュース見て気分害してテレビ壊しただって??
「ご、ごめんな……」
俺じゃないけど、俺の話らしい。すげえ心痛いんだけど、え、俺やば。
「……え、英羅が謝った」
2人がポカンとしている。
おいおいおいおい、まさか俺って……。
「俺ってごめんも言えない人間だったの……」
「壊した時は話せる状態じゃなかったし……直しても、そうって言っただけでテレビにもう興味を持たなかった……」
血の気が引いていく。
自分のヤバさに俺が1番絶望してる。
「な、なんかお前らの知る俺の事こと知るの怖くなってきた……」
「でも別にそんなの関係ないよ、英羅はここに居るだけで良いんだから」
「テレビのひとつやふたつ、3つや5つどうって事ねぇよ」
ああそして笑顔でそんなこと言うこいつらもやっぱやばい。
美味しいご飯が喉を通らなくなりそうだ。いやでも食べ物を粗末にするのはもっとダメだ。食べるんだ。そして何かしよう、あんなでかい物弁償出来ないし俺ニートだけど、何か出来ることがある筈だ。
「あ、あのな、まず俺はお前らにとんでもないことをしてるからお前らは怒るべきだからなそれ」
「怒んないよそんな事で」
「いや、怒れよ!!」
こんな部屋に住むくらいだからお金には困ってないのかもしれない。だとしてもだ、物を大切にしないのはいけねぇだろ。
「俺はお前らが変な事したら叱る、お前らも俺が変な事したら怒れ。たとえムカつかなくても形式上怒れよ。いいな?」
俺越しに2人が目を合わせた。英羅が変なこと言ってる。そんな目だった。
「分かった……」
「よし」
やばいな、何から手をつけていいか分からん。だいたい本当に俺1日何やってたんだ。イカれた精神状態の俺は何をして過ごしてたんだ。
そして思い出す。
夢の俺を。あのベットに三人でいたあの夜を。
「……英羅顔が赤いけど。体調、悪い?」
来夏が固まっていた俺を覗き込んだ。
綺麗な目は今日は青が強い気がする。整った顔は王子様とお姫様の間のように美しい。でも彼はのんびりでいつも俺の話を嬉しそうに聞く可愛いところがある。
なのに夢の中の来夏はまさしく雄だった。ギラギラとこの目を輝かせ俺を求める雄の顔。
その顔が近づいてくる。
俺のおでこに来夏のおでこがくっついた。
「……熱は、無いかな」
目が、唇が近い。呼吸が聞こえる。
やばい思い出すな、あれは俺だけど俺じゃない。
俺は勢いをつけて無理矢理立ち上がった。来夏を必然的に跳ね除けてしまって椅子から落ちそうになるの腕を掴んで助ける。
「え、英羅?」
「……も、もうひとつ言い忘れた!!!」
知秋が驚いて落としたパンが白いテーブルにコロコロと転がっていく。やっぱり広い部屋に大声はよく響くのだ。
「エロい事は、無しだ!!!!」
こんな事を大声で叫ぶ日が来るなんて思っても見なかった。
窓の外は晴天。気持ちがいい朝のはずなのに反響した自分の言葉が恥ずかしすぎて堪らない。
「あのな、何かしろよとか怒れよ。やばいじゃん俺ヒモよりもやばい引きこもりじゃん」
「だって本当に、そうだったから」
「お前はここに居てくれるだけでいい」
「……そーですか、それがやべえって言ってんだけど、聞いてたか?」
「英羅の願いなら何でも叶える……それにお前は気分の上下が激しかったから」
パンを掴んだ知秋はちぎって口に放り投げる。
それって情緒不安定だったってことか?まあ夢の中のあの俺ならありえる話だ。
「メンヘラ英羅くんはどうだか知らないけど、今の俺はこんなに元気だから暇なんだよ。あ、じゃあせめてテレビとか見たい」
「……分かった」
知秋は頷いた。
でも俺の目を見て何かを確かめている。
「……もしかしてそのうちすぐ見なくなるって思ってる?」
「英羅は前テレビ見たいって言った後、テレビをつけてニュースを見たら怒り出してあの部屋のテレビ割ったんだ」
何故か面白そうに語る来夏の話に俺は青ざめた。
「……は?」
「だからあれは2台目で、もう見ないって言ったからアンテナにつなげてない。それでもいつか見るかと思って買い替えておいて正解だな」
なんでもない事のようにいう知秋が俺は信じられなかった。ニュース見て気分害してテレビ壊しただって??
「ご、ごめんな……」
俺じゃないけど、俺の話らしい。すげえ心痛いんだけど、え、俺やば。
「……え、英羅が謝った」
2人がポカンとしている。
おいおいおいおい、まさか俺って……。
「俺ってごめんも言えない人間だったの……」
「壊した時は話せる状態じゃなかったし……直しても、そうって言っただけでテレビにもう興味を持たなかった……」
血の気が引いていく。
自分のヤバさに俺が1番絶望してる。
「な、なんかお前らの知る俺の事こと知るの怖くなってきた……」
「でも別にそんなの関係ないよ、英羅はここに居るだけで良いんだから」
「テレビのひとつやふたつ、3つや5つどうって事ねぇよ」
ああそして笑顔でそんなこと言うこいつらもやっぱやばい。
美味しいご飯が喉を通らなくなりそうだ。いやでも食べ物を粗末にするのはもっとダメだ。食べるんだ。そして何かしよう、あんなでかい物弁償出来ないし俺ニートだけど、何か出来ることがある筈だ。
「あ、あのな、まず俺はお前らにとんでもないことをしてるからお前らは怒るべきだからなそれ」
「怒んないよそんな事で」
「いや、怒れよ!!」
こんな部屋に住むくらいだからお金には困ってないのかもしれない。だとしてもだ、物を大切にしないのはいけねぇだろ。
「俺はお前らが変な事したら叱る、お前らも俺が変な事したら怒れ。たとえムカつかなくても形式上怒れよ。いいな?」
俺越しに2人が目を合わせた。英羅が変なこと言ってる。そんな目だった。
「分かった……」
「よし」
やばいな、何から手をつけていいか分からん。だいたい本当に俺1日何やってたんだ。イカれた精神状態の俺は何をして過ごしてたんだ。
そして思い出す。
夢の俺を。あのベットに三人でいたあの夜を。
「……英羅顔が赤いけど。体調、悪い?」
来夏が固まっていた俺を覗き込んだ。
綺麗な目は今日は青が強い気がする。整った顔は王子様とお姫様の間のように美しい。でも彼はのんびりでいつも俺の話を嬉しそうに聞く可愛いところがある。
なのに夢の中の来夏はまさしく雄だった。ギラギラとこの目を輝かせ俺を求める雄の顔。
その顔が近づいてくる。
俺のおでこに来夏のおでこがくっついた。
「……熱は、無いかな」
目が、唇が近い。呼吸が聞こえる。
やばい思い出すな、あれは俺だけど俺じゃない。
俺は勢いをつけて無理矢理立ち上がった。来夏を必然的に跳ね除けてしまって椅子から落ちそうになるの腕を掴んで助ける。
「え、英羅?」
「……も、もうひとつ言い忘れた!!!」
知秋が驚いて落としたパンが白いテーブルにコロコロと転がっていく。やっぱり広い部屋に大声はよく響くのだ。
「エロい事は、無しだ!!!!」
こんな事を大声で叫ぶ日が来るなんて思っても見なかった。
窓の外は晴天。気持ちがいい朝のはずなのに反響した自分の言葉が恥ずかしすぎて堪らない。
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