ナチュラルサイコパス2人に囲われていたが、どうやら俺のメンヘラもいい勝負らしい。

仔犬

文字の大きさ
上 下
7 / 75
異常事態

7

しおりを挟む
瞳孔が開いて、アニメみたいに髪の毛が逆立って見えるくらい2人の雰囲気が一瞬で変わった。どうかしたのか、ここは全棟禁煙かなんて聞く間もなく立っていた俺はソファに戻され知秋に押し倒される。なんだそんなに怒ることを言ったのだろうか。

殺気とは違うけど緊張感が一気に張り詰めた。
知秋は俺を見つめたまま焦ったような怒りの声で来夏を呼ぶ。

「……来夏、こいつに変なもん飲ませてねぇよなぁ……ああ?」

「するわけないでしょ、だいたい薬使う時はお互いの目の前でってお前が言ったんだ。約束僕が破ったことある?」

「……じゃあなんでこいつからタバコなんて言葉が出んだよ?!」

「知らないよ!それにこの部屋に来た時からすでに起きてソファにいるのも珍しいし……その時から少しいつもと違ったかも......」

「違うって、何が」

「僕を見て驚いてたというか」

当たり前だ。何年ぶりに会ったというんだ。
思案する来夏に知秋が鼻で笑って返す。


「お前が仕事で居ないから裏切られたと思ってたんじゃねぇのか」

「お前だって一緒だろ!英羅は朝からうるさいお前より僕の方がいいに決まってる」

「殺してやろうかテメェ……」


あーあ、相変わらずすぐ喧嘩するなこいつら。それなのに昔から何故か2人でいるから不思議だったけど、俺は2人が一緒にいてくれて楽しかったんだよな。

それに喧嘩を止める術を俺は知っている。最初は心配ですぐ止めてたけど、この2人って喧嘩してる方が多いからだんだん慣れてきて、しかもポンポン会話するから面白くてさ。じっくり見てちゃんと楽しんでから最後に止めるんだ。

こうやって。

「知秋、落ち着けって」

上にいる知秋に両手を伸ばして首に抱きつく。びくっと身体を震わせるとおずおずと俺の背中に手が回ってきた。俺も知秋の背中をゆっくりと撫でる。

「お前は頼りになるし、うるさいとか思ってないよ」


耳元でそう言えば腕に力が入ってしっかりと抱きしめる知秋。すると知秋の肩越しに来夏と目があった。困惑しながらもちょっと悔しそうで、ちょっと寂しそうな目。知秋と仲良くしてるとこういう顔するのも変わんないなぁ。

「来夏もおいで」

片方の手を来夏に伸ばすとゆっくりと近づいて俺の手を取り頬に置き、手に擦り寄る来夏。相変わらず陶器みたいに綺麗な肌だ。さらりと撫でて笑いかける。


「2人とも、仲良くしような」



いつだってこうすれば不満げにしながらも2人の喧嘩は収まるのだ。2人から手を離すと寂しげな表情。当時から俺に引っ付いて犬みたいでかわいかったなという記憶があったけど、今もでっかい大型犬になったくらいで何も変わってない。

さてと落ち着いたみたいだしとりあえずタバコ……はまた喧嘩しそうだから朝食か。


「よし、ご飯に食べるんだろ。そんでちょっと話、聞いてくれるか?」


また2人で目を合わせると、ゆっくりと頷いてくれた。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして

かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。 でも、頼れる者は誰もいない。 自分で頑張らなきゃ。 本気なら何でもできるはず。 でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか

深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。 オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。 オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。 穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。

【完結】相談する相手を、間違えました

ryon*
BL
長い間片想いしていた幼なじみの結婚を知らされ、30歳の誕生日前日に失恋した大晴。 自棄になり訪れた結婚相談所で、高校時代の同級生にして学内のカースト最上位に君臨していた男、早乙女 遼河と再会して・・・ *** 執着系美形攻めに、あっさりカラダから堕とされる自称平凡地味陰キャ受けを書きたかった。 ただ、それだけです。 *** 他サイトにも、掲載しています。 てんぱる1様の、フリー素材を表紙にお借りしています。 *** エブリスタで2022/5/6~5/11、BLトレンドランキング1位を獲得しました。 ありがとうございました。 *** 閲覧への感謝の気持ちをこめて、5/8 遼河視点のSSを追加しました。 ちょっと闇深い感じですが、楽しんで頂けたら幸いです(*´ω`*) *** 2022/5/14 エブリスタで保存したデータが飛ぶという不具合が出ているみたいで、ちょっとこわいのであちらに置いていたSSを念のためこちらにも転載しておきます。

からかわれていると思ってたら本気だった?!

雨宮里玖
BL
御曹司カリスマ冷静沈着クール美形高校生×貧乏で平凡な高校生 《あらすじ》 ヒカルに告白をされ、まさか俺なんかを好きになるはずないだろと疑いながらも付き合うことにした。 ある日、「あいつ間に受けてやんの」「身の程知らずだな」とヒカルが友人と話しているところを聞いてしまい、やっぱりからかわれていただけだったと知り、ショックを受ける弦。騙された怒りをヒカルにぶつけて、ヒカルに別れを告げる——。 葛葉ヒカル(18)高校三年生。財閥次男。完璧。カリスマ。 弦(18)高校三年生。父子家庭。貧乏。 葛葉一真(20)財閥長男。爽やかイケメン。

傷だらけの僕は空をみる

猫谷 一禾
BL
傷を負った少年は日々をただ淡々と暮らしていく。 生を終えるまで、時を過ぎるのを暗い瞳で過ごす。 諦めた雰囲気の少年に声をかける男は軽い雰囲気の騎士団副団長。 身体と心に傷を負った少年が愛を知り、愛に満たされた幸せを掴むまでの物語。 ハッピーエンドです。 若干の胸くそが出てきます。 ちょっと痛い表現出てくるかもです。

処理中です...