sweet!!

仔犬

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dance!

11

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「え、みみみ見たい!!」

「……言うと思った、でもダメだから。俺には分かる、たいていそう言う時にトラブルが来るから」


おれの腕をガシッと掴んだ美少女、じゃなくて麗央が大人しくしてる事!と可愛く言ってくれるのでおれの暴走が勢いを止めた。麗央はこの可愛い顔で苦労したことがたくさんあると話は聞いていたし尚更だ。


「だけど氷怜先輩にオーラ似てるってなかなか聞かないから、そんなにすごい人なのかなあとは思ってしまうよね……」

「まあ、確かに……でも居ないから!氷怜さん以上にすごい人は!」

分かった?!と念入りに言う麗央にこくこくと頷く。麗央も気にはなっているが危機管理能力を全開にしている感じだ。

「そんなに気になるなら、上の階から覗く?私フロアでも2人の写真撮りたいと思ってたし……女の子の格好なら2人だって分かりづらいでしょ?」

「いや、でも……」

アゲハさんの提案に麗央は迷いを見せる。やっぱり気になってるんだろう、だって同じく氷怜先輩大ファン仲間なのだから。

それに、よく考えてみたら今日は安心なことに本人がいるではないか。

「こう言う時は氷怜先輩ジャッジ!」

「何をだ」

拳を握ったおれをいつのまにか戻っていたのか氷怜先輩が不思議そうに見つめている。

「あら噂をすれば……まあ、どちらにしろ私たちは一階の1番大きな席を使うから上からなら見えるわよ。じゃあねアゲハ」

「ええ、よろしくね」

微笑みながら氷怜先輩と入れ違いに出て行くキラネさんの後ろに蝶子さんもバイバーイと緩く手を振りながら着いていく。視線だけで2人が出ていくのを確認すると李恩が口を開いた。

「で、何がなんだって?つーかすげえなその格好……」

もはやドレスのことを忘れていたが氷怜先輩の後ろから覗いた李恩がおれたちの格好を見下ろす。

「氷怜さんにオーラ似てるお客がくるって言うから上から覗きたいなって話になって」

麗央がそう言うと李恩は一瞬黙る。

「……お前に似てるなんてそりゃ怖え世の中もあるもんだな」

くつりと笑う李恩を無視して氷怜先輩は緩く首を傾げた。目線がおれに来るので手を合わせとても気になってます、覗きたいですの目線だけ送ってみる。

「……覗くくらいなら好きにしろ」

「やった!お店でも撮るわよ~!」

アゲハさんはお客さんよりもフロアでおれたちが撮れることを喜んでいるが氷怜先輩に似てる人が覗けるのはおれも嬉しい。
へにゃっとした顔になってしまったのか氷怜先輩がゆっくりとおれの前にくると頬を緩く摘んだ。男前で整いすぎた顔がニヒルに笑う。

「なんだ、本物よりそいつが気になんのか」

「へ?!や、えと、氷怜先輩の雰囲気だけでも似るってどんな感じなんだろうって思ったら……」

「へえ?」

「ほ、本物の方が心臓バクバクするのでその笑顔やめて下さぃぃ」

しゃがんで近くなった超絶美形に意味ありげに微笑まれては顔が真っ赤になると言うものだ。似てるって言うだけで興味はあるがそれは本物がいてこそだ。

最後に満足そうに小さく笑って氷怜先輩は後ろに振り返った。

「まあ、ちょうどあいつもいるしな」

「最悪だ……他の生徒に合わせんなよおい」

誰も居ないと思っていた出口から居心地悪そうに出てきた男の人。
初めて見るラフな格好はさらに若く見える。それにしても休日まで先生に会うなんて、しかもこんなところで。


「ぴよちゃん!なんでどうしてー!?」

嬉しくてダッシュしたら来るなとばかりに一歩下がられた。生徒にそんな態度を取るなんてひどい。

「ぴよちゃんもこう言うところに来るのかーそっかー」

「にやにや嬉しそうな顔すんじゃねえよ!!しかもその格好なんだ……すげえな男かよお前ほんとに」

「女の子になれてたら嬉しいです」

アゲハさんが可愛く着せてくれたので似合わないなんて事態はあってはならないのだ。ぴよちゃんはおれが笑うと眉を顰めた。


「似合ってるのが問題だってお前は気づいた方がいいかもな……」

「へ?」


おれがキョトンとするとぴよちゃんの視線は後ろの氷怜先輩に向いていた。何故か視線をずらした氷怜先輩はゆるりと立ち上がる。

「とにかく郷の奢りらしいから、行くなら準備しろ」

「あ?誰が出すか」

「サクラの機嫌が実物だな」

「なんだ教師って案外給料少ねえのか?」

「……てめえら言いたい放題だなあおい」


李恩まで氷怜先輩と一緒にぴよちゃんをいじると言うことはいつの間にか仲良くなったのかも知れない。


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