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family!
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「本当にそっくりだよね、2人は」
春の楽しげな横顔に氷怜も頷いた。
春の車は4人乗りで白と黒のスタイリッシュな車だ。車内には彼らしい優しい花の香りが漂っている。
氷怜の中で春という存在は唯達が懐いていると言うところからの興味だったがすこし話すだけでも春の掴みどころのなさと氷怜の気にいるポイントを押してくる不思議な存在だった。あの李恩が懐くだけはある。
それに自分の恋人が大切にし、さらにはその母親の相手とくればなおさらである。
「氷怜くんのお家、大通りを抜けたとこだよね」
氷怜がはいと頷くと春は困ったように笑う。
「俺に君がそこまで丁寧に接しなくて良いのに、タメ口だと嬉しいな。李恩なんか出会い頭におっさんって言ったんだよあの子、俺当時20代前半だったんだけどなぁ」
朗らかに思い出話をする春に氷怜は小さく笑う。この誰に対しても態度を変えず、なおかつマイペースさがある所は唯斗にそっくりで気分が良い。
「じゃああんたの言葉に甘えるよ」
「うんうん、良いねぇなんだか嬉しい。椎名さんも砕けて欲しいって言ってたくらい」
それは流石にどうかと思うが椎名に気に入られるのは氷怜にとって願っても無い事。
「それに一応僕は君より大人だからね。子供らしくて良いんだよ」
これが他の大人の言葉であれば良い気はしないが春の言葉はすんなりと受け入れられる。やはり独特の人に屈しないものを感じるのは過去に何かあるからなのか、達観しているからなのか氷怜には分からなかった。
「氷怜くんはいつから1人で住んでるの?寂しくない?」
「今の家は3年前くらい……周りが騒がしいから一人の方が少ねえよ」
ため息混じりの氷怜に春はくすくすと笑った。
「そっか。それにしても君達は随分大人びてるよね……唯斗達だって子供っぽい反応はするけど子供らしいかと言えばそうでもないし……たまに寂しくなるくらい」
運転する春の目はもちろん外を見ているがその横顔は本当に寂しげだった。
氷怜は少し驚く。寂しいとまではいかないが確かに物足りなさはあった。
「いくら甘やかしても、あいつら甘えが少なすぎる」
たまに自分の方が甘えてるのでは思うくらい、少しも唯斗がわがままや寂しさを出さない。もちろんそれが嫌だと思うはずもないが、足りないのだ。
「俺からしたら君もだよ?でもそうだね、良い子達過ぎるよね。椎名さんも唯斗にそっくりで弱音とか全然聞かないしそんな所までそっくり。まあ、大人と子供じゃまた甘え方も変わるだろうけど……」
話しているうちに氷怜のマンションが見えてくる。
この辺りで大丈夫だと告げれば春は道の端に車を寄せた。
「お互い男としては物足りない悩みだね」
ふんわりと笑う春はたまに唯斗重なって見えた。唯斗が父親と春が似ていると言ったのはこう言うところでもあるのだと思う。氷怜は小さく口の端をあげる。
車を降りた氷怜に窓を開けて春が笑った。
「唯斗の事はやっぱり大事にしてるから、椎名さんも君が唯斗の相手ですごく嬉しいだって」
「……も?」
「俺も大切な子達の選んだ相手が君たちで凄く安心してる……なんてちょっと上から目線かな」
ごめんねなんて笑う春に氷怜は悪い気はしない。やはり唯斗に近い何かを感じると思わずくつくつと喉を鳴らして笑ってしまった。
それもまたお互い様かもしれない。
春の楽しげな横顔に氷怜も頷いた。
春の車は4人乗りで白と黒のスタイリッシュな車だ。車内には彼らしい優しい花の香りが漂っている。
氷怜の中で春という存在は唯達が懐いていると言うところからの興味だったがすこし話すだけでも春の掴みどころのなさと氷怜の気にいるポイントを押してくる不思議な存在だった。あの李恩が懐くだけはある。
それに自分の恋人が大切にし、さらにはその母親の相手とくればなおさらである。
「氷怜くんのお家、大通りを抜けたとこだよね」
氷怜がはいと頷くと春は困ったように笑う。
「俺に君がそこまで丁寧に接しなくて良いのに、タメ口だと嬉しいな。李恩なんか出会い頭におっさんって言ったんだよあの子、俺当時20代前半だったんだけどなぁ」
朗らかに思い出話をする春に氷怜は小さく笑う。この誰に対しても態度を変えず、なおかつマイペースさがある所は唯斗にそっくりで気分が良い。
「じゃああんたの言葉に甘えるよ」
「うんうん、良いねぇなんだか嬉しい。椎名さんも砕けて欲しいって言ってたくらい」
それは流石にどうかと思うが椎名に気に入られるのは氷怜にとって願っても無い事。
「それに一応僕は君より大人だからね。子供らしくて良いんだよ」
これが他の大人の言葉であれば良い気はしないが春の言葉はすんなりと受け入れられる。やはり独特の人に屈しないものを感じるのは過去に何かあるからなのか、達観しているからなのか氷怜には分からなかった。
「氷怜くんはいつから1人で住んでるの?寂しくない?」
「今の家は3年前くらい……周りが騒がしいから一人の方が少ねえよ」
ため息混じりの氷怜に春はくすくすと笑った。
「そっか。それにしても君達は随分大人びてるよね……唯斗達だって子供っぽい反応はするけど子供らしいかと言えばそうでもないし……たまに寂しくなるくらい」
運転する春の目はもちろん外を見ているがその横顔は本当に寂しげだった。
氷怜は少し驚く。寂しいとまではいかないが確かに物足りなさはあった。
「いくら甘やかしても、あいつら甘えが少なすぎる」
たまに自分の方が甘えてるのでは思うくらい、少しも唯斗がわがままや寂しさを出さない。もちろんそれが嫌だと思うはずもないが、足りないのだ。
「俺からしたら君もだよ?でもそうだね、良い子達過ぎるよね。椎名さんも唯斗にそっくりで弱音とか全然聞かないしそんな所までそっくり。まあ、大人と子供じゃまた甘え方も変わるだろうけど……」
話しているうちに氷怜のマンションが見えてくる。
この辺りで大丈夫だと告げれば春は道の端に車を寄せた。
「お互い男としては物足りない悩みだね」
ふんわりと笑う春はたまに唯斗重なって見えた。唯斗が父親と春が似ていると言ったのはこう言うところでもあるのだと思う。氷怜は小さく口の端をあげる。
車を降りた氷怜に窓を開けて春が笑った。
「唯斗の事はやっぱり大事にしてるから、椎名さんも君が唯斗の相手ですごく嬉しいだって」
「……も?」
「俺も大切な子達の選んだ相手が君たちで凄く安心してる……なんてちょっと上から目線かな」
ごめんねなんて笑う春に氷怜は悪い気はしない。やはり唯斗に近い何かを感じると思わずくつくつと喉を鳴らして笑ってしまった。
それもまたお互い様かもしれない。
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