362 / 379
family!
3
しおりを挟む「ところで分かってはいたけど椎名はおれと氷怜先輩が付き合う時1秒も悩むとかなかったから、ちょっとびっくりしちゃったよ」
「そりゃもう唯斗は可愛く産んだし、相手が男の子でもOKって生まれた時から決めてたもの」
「う、生まれた時から……」
さすが椎名、判断が早い。
それにねと突然母さんらしい表情になる。
「人を見る目はあなたにはあると思うし、何より信じてるから。だから氷怜くんだって言われた時はもう流石私の息子!と褒め称えたくらいよ」
椎名の言葉に氷怜先輩がふっと微笑む。
そこで嬉しそうに笑うなんてずるい。
しかもおれの家に居ると余計にかっこよく見えるの何でだ。これが実家マジックか。
「光栄です」
「またプリクラとりましょうね」
「はい」
「あー!おれも撮る!春さんも!」
「プリクラかあ何年も撮ってないなあ」
4人で撮ったら秋と優に自慢しちゃお。
なんだか本当に家族みたいな平和で最高の時間はあっという間に過ぎてしまう。時計が日を跨ぐ前に春さんが立ち上がってしまう。
「じゃあ俺は氷怜くん送って帰ろうかな」
「えー、春さん今日泊まってかないの?氷怜先輩もー!」
「流石に、ねえ」
おれが駄々をこねても春さんにごめんねと言われてしまった。いやおれだっていきなりお泊まりはしないとは分かってるんだけど期待しちゃうではないか。
外まで2人を見送ると春さんが車の窓を開けた。
「そのうち、泊まりに行っても良いかな」
「いつでもどうぞ」
椎名が頷くからおれは横で小躍りだ。助手席で氷怜先輩が吹き出した。
「浮かれて眠れねぇんじゃねえの」
「そうかもしれないです……はあ、幸せ」
「良かったな」
「氷怜先輩も来てくれて嬉しいです。今度は泊まりにきてください」
ん、と頷いて軽やかな笑顔を見せてくれる。4人でいつか過ごす日が来るとか考えたらもうやばい。
「ごちそうさまでした。とっても美味しかった。唯斗はまた明日もバイトよろしくね」
「はい!」
ぶうんと音がして春さんの車は行ってしまう。見えなくなるまで見送り終わると一気に静かになってしまった。まだ車が消えた先を見つめている椎名の腕を握る。
「なんか寂しいなぁ」
「あら、私は唯斗がいれば寂しくないわよ」
「とか言って春さんに泊まって欲しかったくせに~」
「お互い様でしょー」
くすくす笑いながらエントランスの中に入っていく椎名。なんだか嬉しい事がたくさんでふと見上げる空は小さな星がいくつか見えた。
春さんと椎名が付き合って、いつか本当におれの父親に春さんがなるのかと思うとたまらなく楽しみだ。パパって絶対呼んでやるとも。
「そしたらやっと……」
ふと呟いた言葉。やっとなんだっけ?
浮かれすぎて独り言までで始めている。本当に今日眠れないかも、嬉しくて枕抱えて身悶える気しかしない。
「唯斗ー!冷えちゃうから早く戻りましょ」
「はーい」
椎名に呼ばれ駆け寄ると椎名が鼻歌歌うからおれも歌い出す。浮かれ具合は親子一緒だ。
明日はみんなに嬉しい報告ができるし、毎日がこんなに幸せで良いんだろうか。
23
お気に入りに追加
1,388
あなたにおすすめの小説
総受けルート確定のBLゲーの主人公に転生してしまったんだけど、ここからソロエンドを迎えるにはどうすればいい?
寺一(テライチ)
BL
──妹よ。にいちゃんは、これから五人の男に抱かれるかもしれません。
ユズイはシスコン気味なことを除けばごくふつうの男子高校生。
ある日、熱をだした妹にかわって彼女が予約したゲームを店まで取りにいくことに。
その帰り道、ユズイは階段から足を踏みはずして命を落としてしまう。
そこに現れた女神さまは「あなたはこんなにはやく死ぬはずではなかった、お詫びに好きな条件で転生させてあげます」と言う。
それに「チート転生がしてみたい」と答えるユズイ。
女神さまは喜んで願いを叶えてくれた……ただしBLゲーの世界で。
BLゲーでのチート。それはとにかく攻略対象の好感度がバグレベルで上がっていくということ。
このままではなにもしなくても総受けルートが確定してしまう!
男にモテても仕方ないとユズイはソロエンドを目指すが、チートを望んだ代償は大きくて……!?
溺愛&執着されまくりの学園ラブコメです。
変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。
俺は魔法使いの息子らしい。
高穂もか
BL
吉村時生、高校一年生。
ある日、自分の父親と親友の父親のキスシーンを見てしまい、平穏な日常が瓦解する。
「時生くん、君は本当はぼくと勇二さんの子供なんだ」
と、親友の父から衝撃の告白。
なんと、二人は魔法使いでカップルで、魔法で子供(俺)を作ったらしい。
母ちゃん同士もカップルで、親父と母ちゃんは偽装結婚だったとか。
「でさ、魔法で生まれた子供は、絶対に魔法使いになるんだよ」
と、のほほんと言う父親。しかも、魔法の存在を知ったが最後、魔法の修業が義務付けられるらしい。
でも、魔法学園つったって、俺は魔法なんて使えたことないわけで。
同じ境遇の親友のイノリと、時生は「全寮制魔法学園」に転校することとなる。
「まー、俺はぁ。トキちゃんと一緒ならなんでもいいかなぁ」
「そおかあ? お前ってマジ呑気だよなあ」
腹黒美形×強気平凡の幼馴染BLです♡
※とても素敵な表紙は、小槻みしろさんに頂きました(*^^*)
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
執着攻めと平凡受けの短編集
松本いさ
BL
執着攻めが平凡受けに執着し溺愛する、似たり寄ったりな話ばかり。
疲れたときに、さくっと読める安心安全のハッピーエンド設計です。
基本的に一話完結で、しばらくは毎週金曜の夜または土曜の朝に更新を予定しています(全20作)
転生したけど赤ちゃんの頃から運命に囲われてて鬱陶しい
翡翠飾
BL
普通に高校生として学校に通っていたはずだが、気が付いたら雨の中道端で動けなくなっていた。寒くて死にかけていたら、通りかかった馬車から降りてきた12歳くらいの美少年に拾われ、何やら大きい屋敷に連れていかれる。
それから温かいご飯食べさせてもらったり、お風呂に入れてもらったり、柔らかいベッドで寝かせてもらったり、撫でてもらったり、ボールとかもらったり、それを投げてもらったり───ん?
「え、俺何か、犬になってない?」
豹獣人の番大好き大公子(12)×ポメラニアン獣人転生者(1)の話。
※どんどん年齢は上がっていきます。
※設定が多く感じたのでオメガバースを無くしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる