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misunderstanding!
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しおりを挟むこの辺りで個室があって充電できるカフェ。唯が前に教えてくれたお洒落なここは人気が程よくあって尚且つテーブル毎に仕切りがあるから話が聞こえにくい。もはや隠れる事をやめたのか隣の席にマキオくんも座ってくれたし、これで事情が彼にも伝わるだろう。
問題はもう1人……うん、近くには居ないし大丈夫。空いてる席ここくらいしか無かったし。テーブル横に充電器をさして少し置いて、パワーを取り戻したスマホの電源をつける。
特に先輩達から連絡は無いから変に捻れた報告が行ってない、と思う。
まあワザと連絡してこない可能性もある。俺が女の子と歩いてたくらいですぐに連絡してくるような先輩じゃないし。
適当に飲み物を頼んで未だに黙ったままの堂本兄弟に言う。
「何回も説明大変だし、これから暮刃先輩に電話するから。聞いてたらわかるよ」
困った顔でお友達勘違いさせちゃってごめんねと謝るキサちゃんに気にしないでと微笑む。通話の音を大きめにしてマキオくんがギリギリ聞こえるように、コールが始まると3コール目で繋がった。
「暮刃先輩?」
「うん」
笑ってる。これはなんか聞いてそう。
「欲しいのはあった?」
「はい、買えましたよ。可愛かった」
「それは良かった、早く着て見せて欲しい」
暮刃先輩の表情は見なくてもわかる。にっこり笑って品良く首を傾げているはず。
「もしかしてマキオくんから連絡入ってますか」
「亜蘭から面白い報告なら」
なるほど亜蘭さんにまず報告したのか。
マキオくん焦って暮刃先輩に直接連絡しちゃうかなって思ったけどまずはちゃんと直属の上司に連絡したんだ。それが良い、変なとこだけ聞いてそのまま喋ってしまったらマキオくんに被害行きそう。暮刃先輩の機嫌と言う名の雷が。
「なんて?」
「君が女の子とデートしてるって」
「それ、本気で信じてます?」
「まさか」
「ですよねぇ」
あははと笑ったけど目の前の兄弟は青い顔のまま。ごめん、ちょっとふざけてる。だって暮刃先輩、何となく察してるっぽいし。
「御目当てのお店の帰りに違うお店に寄ったんです。そしたら女の子が試着室に駆け込むのが見えて」
「うん」
「見ていたら隙間から顔を少しだけ出してあたりを見渡してるからどうしたのかと声をかけて、そしたらあまりよろしく無い感じの男に付き纏わられて怖くて逃げていたらしいんです。なのでお家まで送ろうとしたんですが、俺から見てもバレバレの尾行するヤバい人で。これは彼氏がいる事にした方が安全かなと」
「そう」
「なので人助けと言う名のデートなんですがお許しもらえますかね」
変に誤魔化すよりもデートって単語に結びつけてちゃんと申告する。これ前に学んだ事なんだよね。ちゃんと言ったほうがお互い頭使えるし、どうしたいのかその先も分かる。
電話の向こうでふっと笑った声がする。仕方ないなって茶化すように。
「それは、ちゃんとあとで俺のご機嫌を取るんだよね?」
その言葉に俺まで笑ってしまう。
「もちろん。あ、ちなみにマキオくんって腕っ節の程は?」
「待って……ああ、そう……」
電話口から声が遠ざかると誰かと話している声が聞こえた。マキオくんの事を亜蘭さんにでも聞いているのかも。
「ボクシングでプロの実力だって」
「へえ!」
人は見かけによらないって言うけどマキオくん今もプルプル震えてて可愛いのにギャップだな。ようやくマキオくんがチームに入った理由が繋がってくる。
「それなりに歩いてタイミング見計ったら、マキオくんに乗せてもらって戻りますので」
「うん。優、本当に頼らないんだね?」
多分「助けとなる人をもっとそっちに寄越そうか」って言葉がかっこでついているんだと思うけど、今回本当にそこまでじゃ無いんだよね。念のためにマキオくんのステータス確認したけど十分すぎるほどだし、もう少しデートらしい事したら向こうだって諦めて帰るだろう。
「はい。だから帰ったら、たくさん甘やかすのでたくさん甘やかして下さい」
これが一番ご褒美なこともお互い分かってる。
ため息混じりの笑い声が返ってきた。やっぱり見なくてもわかる。あのグレーの目を細めて優しく笑うのだ。
「……そういうの、こういう時だけ言い始めたらそれこそ許し出さないから」
「分かってますって」
笑い合ってそれじゃあと通話を終える。
「と、言う事です」
きゃあきゃあと目を輝かすキサちゃんともう青い顔じゃなくなっていた堂本兄弟。なんならほっぺを赤くした2人が同時に叫んだ。
「惚気か!!」
そんなつもりは微塵もない。
日常だよと答えたらまた惚気かと突っ込まれた。
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