sweet!!

仔犬

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rival!!

11

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「さっき唯斗探しているときに見つけてね。これ凄い美味しいのに開けてすらいないから、もったいないなぁって」

この家の主であり今回の騒動を起こしたおじさんは名前をヒビキさんと言うらしい。春さんがお茶と言うのでカフェに移動するのかと思ったけどキッチンを貸して欲しいと微笑めば放心しながらも好きにしていいと言ってくれたヒビキさん。

カフェ組はキッチン、リビングのテーブルには下を向いたままのヒビキさんと不機嫌な麗央さんとずっと横を向いたままの李恩の3人。
とんでもなくカオスな席が出来上がっている。ちなみにおれは李恩が土足で部屋の中に連れて行ったので靴もやっと脱いで床のお掃除だ。

そんな中秋が気を利かせて会話を提供し始めた。

「麗央さん、榊さん、ヒビキさん、この人は春さんと言っておれたちのバイト先の店長なんです」

雷那 春らいだ はるです。お好きなように呼んでください」

春さんが微笑むとゆっくりと見上げる麗央さん。李恩は相変わらず壁を見ている。

「麗央です、さっきはどうも……」

「いえいえ、雑誌でも見たけどすごい可愛い子だねえ」

「ですよね?!」

さすが春さん。
わかってくれると嬉しくて抱きついたけど、麗央さんは照れ隠しでふんとそっぽを向いている。そこも可愛いんですよ。

「麗央さん、怪我は本当にないですか?」

優が聞くと腕を組んだ麗央さん。

「……大丈夫、その人が李恩が何も持ってきてないって知って気が動転してベランダで刺されるか一緒に飛び落ちそうになったくらいで」

「れ、麗央さん……」

ああ、ヒビキさんが肩を震わせている。
この世の終わりのような顔をしたヒビキさんに追い討ちをかけているけど被害者の麗央さんに言われては仕方がない。物凄い気まずい空気の中でヒビキさんの前にティーカップがことりと置かれた。

「まあまあ。まずはこれを飲んで。温まりますよ」

微笑む春さん。
すでに良い香りが部屋を漂っている。
おれも一口飲んだけど最高に美味しいのだ。

ヒビキさんがカップを両手で掴んでゆっくりと口に運んでいく。

「……美味しい」

ぽつりと呟いた彼の目からまた涙が溢れ出る。でもさっきまでの涙じゃなくて、安心したみたいなそんな表情。

すると今度は悲しそうに頭を下げた。


「麗央さん、すまなかった……」

頭を下げたヒビキさん。静かな空間にさらに2人分の紅茶が注がれた。麗央さんの綺麗な指がティーカップを掴み香りを楽しんでから一口。

やっぱり春さんはすごい。麗央さんが微笑んじゃうんだから。

そしてカップを置き、口を開く麗央さん。

「全部を許すほど優しくない」

「……は、はい。どんな罰でもかまわ」

「でも今回、警察も来てない。見てるのはここにいる人間だけ。だから墓場までもっていくって言うなら目を瞑るよ」

「……え?」

頬杖をつく麗央さんにずっと下を向いていたヒビキさんが顔を上げた。

「不平等って存在するから。ねえ、オジサン」

「は、はい」

「なんかあんた色々引きずりそうだから、お金を渡すのやめる。ただし借金の肩代わりをお父様がしてくれる。その代わりあんたはお父様の会社で働く。ITの仕事もあるから活かせるんじゃないの」

「……い、良いのかい」

「ただし、2度と泣き言言わない!」

「は、はい!」

「あと借金で出ていくような女はこっちから願い下げ!!そんな女に執着するくらいならアゲハのお店に行くこと!」

「あ、あげは……?」

「返事!」

「はい!」

麗央さんの勢いに叫ぶように返事をしているけど最後のはちょっと違うような。いやもちろんアゲハさんのお店には行って欲しいけど。

すると麗央さんの横で李恩が鼻を鳴らした。その足は小刻みに揺れている。

「おいおい……麗央様は随分甘いなあ」

「なにイライラしてるの、それって……あの人のせい?」

ツンと言う麗央さんの言葉に固まった李恩。おれと秋と優も気になって耳を澄ませるけど李恩はなにも答えない。
唯一何も気にしてない春さんは独り言のように呟いた。

「少し顔色悪いし、彼食事もしてなさそうだし軽食を作ろうかと思ったんだけど……なんにもないなあ」

開ければ中身はすっからかんの冷蔵庫。一緒に冷蔵庫を覗けば春さんが困ったと呟く。

すると物凄いぶっきらぼうな声が後ろからかけられた。

「唯斗」

「へ?」

「車」

車?
振り向いたらやっぱり不機嫌そうな李恩の顔。テーブルに肘をついておれの反応を待っていた。これ以上口を開かせるなみたいな目で見てくるんだけど一文字をいきなり言われても。えーと、車でしょ、ここに車できて……。

「あ、そうだ!買物したんだ!春さんなんでもありますよ。おれ取りに行って」

「車の鍵持ってるの李恩でしょ。一緒に行ってあげなよ。その春さんと」

「あ?!」
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