sweet!!

仔犬

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rival!!

3

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土曜のお昼過ぎ。夜はクラブに行く予定だけどそれまでは今日もバイト充。

「じゃあこれ、買い物リストね」


春さんから渡された手のひらサイズのメモにはカフェで使う材料と備品がずらりと並んでいる。とは言っても1人で運べる量なので問題はなし。

「何か必要なのあったかなぁ、ほかに」

「大丈夫だと思いますよ、最近こまめに行ってますし」

今も変わらないここの人気はこのカフェのスタッフとして誇り高い。
新規のお客様ともどんどん仲良くなれてこれ以上楽しいバイトって今のところ他には無い。撮影も楽しいけど、やっぱり春さんのいるここが好きだなぁ。

「1人で持てる?大丈夫?」

「最近コーチ付きの修行してるんで力持ちになってるはずです!」

「ああ、珍しくシフト減らしてたもんね」

「う、それも心苦しいですが……この前もいきなり抜けちゃってすみません」

思わず謝るが春さんはむしろ君たち入れすぎだから丁度いいんだよと微笑んだ。

「あと、唯が出る雑誌嬉しくて買っちゃった」

「春さん今日もラブ……!」

照れながら嬉しそうに言われちゃうなんて春さんファンのおれは拝みたくなる案件だ。いやもう自然に拝んでた。

「はあ、やっぱりバイトは春さんとこに限ります」

「それは嬉しい」

にこにこで聞いてくれる春さんにへにゃんとなるおれ。30半ばだと言うのになんでも着こなす若々しさだけど、その年齢に見合った色気持ちの眉目秀麗。今日もマイナスイオン絶好調過ぎて愛が止まらない、どうやったらこんな人が生まれるのか。

秋がキッチンから顔を出した。

「俺もいこっか?」

「んーん、大丈夫!」

バイト着の上からコートを羽織るとちょうど休憩の優が控え室に入ってくる。メモを持ったおれに気づくと待って待ってと駆け寄ってきた。

「春さん、新しいカウンタークロス欲しいんです」

「そうだ!忘れてた。ありがとうね優」

メモにまた書き足した春さんはカフェ用のお財布を持たせてくれる。
そしてマフラーまで巻いてくれた。まだまだ寒いからねぇとにこにこで。
なにこれ幸せ家族計画の第一歩ですか。まだ椎名から春さんとのラブ進捗聞いてないけどちょこちょこ出かけたりしているようだし、なんだか良い気分。

「ほら巻けたよ」

「ありがとうございます!」

感動しているおれに優が人差し指を立てて腰に手を当てる。

「寄り道しない、変な人について行かない事」

「子供扱い!」

怒りながらも裏口のドアに手をかけると笑いながらみんな手を振って送り出してくれる。アットホームなバイト最高。

外は肌寒いけど晴天だし日差しは暖かい。それにスーパーまでは5分もしないので一瞬だ。

「パパッと終わらせちゃお」

見えてきたスーパーはおれもよく使うので、どこに何があるかもほとんどわかる。30分もかからない筈と見込んで、いつも通りカートにカゴを入れて買い物スタート。うちではランチも出してるので食材もリストに入っている。


「えーと、まずは野菜……レタス、あった。あと玉ねぎ……」


買い物の時独り言しちゃうんだけど、この癖が中々治らない。一緒に玉ねぎを見ていた奥様にくすりと笑われてしまった。

「すみません、うるさくて。あはは」

奥様の腕には小さな女の子が巻きつくようにしがみついていてひょっこり後ろから顔を出している。おれをじっと見ているなと思えば髪色が気になったらしい。

「おねえちゃんピンク、かわいいね」

お兄ちゃんだけど。
おれはちょっとだけしゃがんで微笑む。

「ありがとう~、君も可愛いね」

おれが褒めるとその子は嬉しそうに笑ってこっちの方が美味しそうと丸々とした玉ねぎを渡してくれる。

「あらあらこの子ったら。それじゃなくても良いのよ、ごめんなさいね」

「いえ!これ美味しそうなので、ありがとうねー」

バイバイと手を振って2人とお別れ。
可愛い、萌えた。

「スーパーって癒される……」

「やばいなお前、その調子でたまたま人間と関わってるって考えると騒がしくなるのも頷けるわ」

「へ?」

隣から低い声がかかる。同じ低い声でも氷怜先輩では無い、だけど聞き覚えのある声にもらった玉ねぎをカゴに入れていたおれは目線をあげる。

やっぱり今日も黒い服だ。少しキツめの蛇みたいな目はすっかり慣れたけどこの人とまさかこんなところで出会うとは。

「榊さん……?」

「別にさん付けじゃなくて良いぜ」

彼は特に驚く事もなく、手に持ったカゴにひょいひょいと野菜を入れていく。ピンク頭の学生が1人で昼間からスーパーなんてのも珍しいけど、いつも真っ黒で喧嘩がとても強いというイメージばかりの人がスーパーに居るのもすごく不思議だ。


「なんだか、スーパー似合わないですねぇ……」
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