sweet!!

仔犬

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rival!!

2

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「唯斗くん、見たよー!」

朝、クラスメイトのみーちゃんが嬉しそうに駆け寄ってきた。両腕で抱えるのはこの前麗央さんとカレンちゃんと撮影したものが載っている雑誌。柚さんがサンプルをたくさんくれたからあげるって言ったのにみーちゃんは自分で買うよ!なんて優しい事を言ってくれたのだ。

そしてようやく店頭に並んだ雑誌を持ってきてくれる。

「すごいね、しかもカレンちゃんとなんて私!大好きなのカレンちゃん!嬉しいなぁ私の彼もね、可愛いって言ってた!」


自分の事のように喜ぶみーちゃん。ぴょんぴょん跳ねるのでおれも一緒になって跳ねる。

「みーちゃんありがとうー!カレンちゃん激かわだった!しかも麗央さんも相変わらず可愛いんだからもう最高!天使が2人!」

「いや、これ唯も天使やってるじゃん」


後ろの席で秋が笑いながら雑誌を開く。天使の羽をつけたおれと麗央さん、カレンちゃん。まさしくミュープリの可愛いくて女の子が憧れるそのものを表した柚さんのカメラセンスもさすがだ。

優も笑いながら可愛い可愛いと褒めてくれる。

「で、麗央さんとは仲良くなれた?」

「えーと、少しは……なれたかなぁ、いや、うぅん……」

「相変わらず苦戦してんなぁ」

いや、珍しいと秋が楽しげに笑っていると佳乃がプリントを配りながら話題に興味を示した。


「え、なになに。唯のそのコミュ力おばけが発揮できない人間が存在すんのか」

「お、おばけ……?もっとせめて可愛い表現プリーズ!!」

うえん、と泣けば男子は全員爆笑して、みーちゃんだけがよしよしと慰めてくれる。

「恋のライバルだから、一筋縄じゃないんだよ」

優の言葉に佳乃は固まった。

「え、待った、何、好きなやつ出来たのか?」

何故か小声のその一言でみんな沈黙。
秋と優がおれに視線を送り無言で会議しながらよく考えてみれば、あれそういえばちゃんと話したことが無かったような?
クラブに来てる人なら知ってそうだけどそもそもチームの人じゃない限り高校生ってクラブに行かないよね。

「まず、恋人がいるね」

3人で手を挙げれば祝福してくれると思ったのに佳乃は喜ぶどころか一気に青ざめた。

「それ以上言うな!!!」

「うぐ!」


何故か佳乃に口を塞がれた。しかも秋も優もなのにおれだけ!く、くるしい!

「ここでお前ら3人がそんなこと言ったらショックで寝込む奴らが出るだろ?!最悪の場合は死!」

なにそれ、おれたち人の生死握ってるんですか。
佳乃の言葉に笑い混じりにいやいや、と秋が言う。

「そんなこと言われたってそりゃ俺らにも恋人できる日はいつか来るだろ、それが今だっただけで……」

「俺とみーちゃんはまだいい、だけどなぁ他の奴らはもうダメ、お前らに骨まで食われてんの!ちなみに他のクラスもな!!」

「いや食べてないから、唯はまあ仕方ないとして……」

あ、ちょっと優様おれだけまた除外したね?!てかそろそろほんとに苦しいんだからね?!

うーうーと唸っても佳乃は離してくれない。それどころかみーちゃんまで泣きそうな顔でたたみかける。

「そ、そうだよ!アイちゃんは授業中でも泣いちゃうだろうしマサタカくんとかマエタくんなんて骨と皮になっちゃうだろうし」

みーちゃんなんだか詳しいね?!みんなと仲良くていいことだ…ってもうそういう場合ではない、ドンドンと佳乃を押しても抜け出せないし。


「マエタはなるかもな……」

「あ、式おはよ」

「はよ」

秋が手をあげると眠そうな顔で式が挨拶を返す。いやほのぼのしてくれちゃってるけどおれもうほんとに窒息する!

式に助けを求め手を伸ばすと彼は不機嫌そうに言う。


「何やってんだよ、こんな時こそ習い事の成果だろ」


は、そうか。えーと?今は前から押さえられてるから、そういう時は、上へ力を流す!

「ぷはー!」

ていっと腕を押し上げてなんとか解くことに成功。呼吸を整えてようやく話題に参加することが出来る。と思ったら式が真顔でデコピン。

「判断が遅い、30点」

「いひゃい!」

相変わらず厳しい式。そこがいいのだけど。

「クラスの平穏はクラス委員長の役目だからな!ここではとにかく当分は濁せよ!お前ら誰とでも仲良いからなんとか紛れる!いいな!」

「はいはい」

「はいは一回!」

「はい!」

佳乃がビシッと言い放つので反射的に3人で敬礼。よし、と満足したのかまたプリントを配り出す佳乃。


「って言ってもバレてる人にはバレてるよね」

「まあ、それはいいんじゃねえ。隠すとかじゃなく普通にしてれば。聞かれたら答えたら良いし」

式はどうでも良さそうだけど、みーちゃんがおれたちにしか聞こえない音量でこっそり話し出す。


「3人の恋人って氷怜先輩たちだよね……?」

「お、正解。てか、わかりやすいと思うんだけどなぁ」


秋が不思議そうに言うとみーちゃんがそれは仕方ないよと微笑んだ。

「佳乃くんも言ってたけど、3人ともみんなと仲良しだから……あと、先輩と並んで恋人だって噂されてきた人ってやっぱり女性だからかなぁ」

みーちゃんの言葉に秋と優が頷いた。

「あーたしかにそう言えば俺たちも美男美女で歩いてるなぁ、とか思ってた時あったしな。そりゃ噂では男の人と……って聞いたことあったけど実際見たわけじゃないから現実味なかったんだよなぁ」

「言われてみれば……当事者になればすんなり受け入れられたけどね」


おれもそうかもしれない、と頷いたけどそこでアゲハさんと麗央さんの記憶が蘇る。

氷怜先輩が女の子と付き合っていた事を気にしていて、麗央さんも女の子だったら良かったのにと言うし。

あれはおれがだろうか?おれが女の子なら、麗央さんは何か違ったんだろうか。うーん、まだまだ何もわからない。

「式くんは知ってた、のかな?」

「まあ」

みーちゃんが式に聞くと式は頷き、ため息をついた。

「もう毎日甘々でご馳走さまって感じ」

「それはだってほら、優くんがいま言ってたよ。すんなり受け入れてるんだもんそうなっちゃうのも当然だよ~」

式の言葉にみーちゃんが嬉しそうに微笑む。

「つまり3人はほんとに先輩たちが好きなんだねぇ」

のほほんとそう言われてはさすがに照れ隠しで笑うしかない。
でも本当の事だ。元々過去が気にならない性格もあるけど、氷怜先輩がどんな人と付き合っていたって、たとえおれが女の子だったとしてもどんな自分でも氷怜先輩の事好きになってたって思う。


「ガキどもホームルーム始めんぞ!座れー」

ぴよちゃんが入ってくるとみんな一斉に席に着く。
そして開口一番にぴよちゃんが声を張った。

「まーたどっかのバカが雑誌に載りました!みんな買って欠品にしてやれ!あああくそー!!また外部対応が増えるじゃねぇかああ!」

「ぴよちゃんがんばれー!」

なんだかんだ優しい日吉郷ひよしごう先生。通称ぴよちゃんは今日もみんなに好かれています。


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