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rival!
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結局麗央さんとはなかなか会えず、1週間が過ぎてしまった。
いくら気合いがあったとしてもクラブで話しかけたら避けられちゃうし、麗央さんがいつもクラブにいるわけでもないからなかなか接点を増やせない。
「はあ、世知辛い」
「黄昏てるとこ悪いけど唯斗お前今日日直な」
「およ」
朝、今日も赤羽さんのお迎えで登校してみればクラス委員長の佳乃にそう言われる。あ、だから今日おれだけバイトの時間遅く入れたんだった。ちなみに日直だと号令を毎回して日誌を書いてぴよちゃんのお手伝いを放課後にする事になっているのだ。
「秋と優今日もバイト終わったらクラブ行くよね?」
「うん、てか昨日のが悔しくて休めって言われても行く」
秋が拳を握ったので思わず笑ってしまう。最近は避けるに加えて相手の動きの見方、そしてどう動くのが正解かなんてのを徹底的に教え込まれている。それでも、どんなに判断材料を頭に入れたって幹部の人達はフェイントを入れてくるからこれまた悔しい思いをするのだ。
「お前らモデルの次はスタントマンでもやるのか?」
また変なこと始めんなよ……と佳乃が腰に手を当てた。
「ううん、護身術習ってるの」
「ああ……それはやっとけ、本当に」
佳乃はなんだかんだおれたちが色んなことに巻き込まれているのを知っているのでウンウンと納得だ。おれの隣で式は不満そうに聞いていたけど、結局はアドバイスをくれたりする。優しいんだからもう。
佳乃はそんな式に日誌を渡す。
「んで、式もよろしくな日直」
「わかってるよ」
日直はいつも2人で大体が隣の席の人とペア。だから隣の席の式だ。
「式くん、号令なにが言いたい?起立、礼、おすわりのどれ?」
「ぜってえ言わねぇからな……」
当然騙されてはくれなかった。
ふと騒がしさが廊下から聞こえてきておれを呼ぶ声がした。女の子達が手を振っているので振り返すときゃーと嬉しそうにしてくれる。ああ、可愛いなぁ今日も。
最近は同じことが秋と優にも起こっている。
優と暮刃先輩の喧嘩だったり稽古だったりで周りの目を忘れがちだが未だ学校内では雑誌のモデルの話が多い。SNSで写真もずっと載せ続けてるしね。柚さんがこれまたいい写真をたくさん送ってくれるからネタが尽きないのだ。それに良いものは共有に尽きる。
女の子達がまた騒がしくなると桃花がひょっこり顔を出した。桃花が通り過ぎるとぽっと頰を赤らめたのをおれはすかさずチェック。師匠として鼻が高いです。
彼はおれたちの机まで来るとはあとため息だ。
「美人さんがため息はノンノン~」
「はいはい。唯斗さん達のモデルの話、うちのクラスでも凄いですよ」
「すごいねぇ、発売から日にちは経ってるのに」
「そりゃ大きい企画で最近は学校に事務所への勧誘まで来てるそうですからね。噂が広まってずっと新鮮なままですよ」
桃花は不満げに言うがおれとしては初耳だった。
「事務所?そうなんだ~!」
「はい、そこ緊張感持ってくださいね」
また怒られそうなので、背筋を伸ばしてぶんぶん頷いた。これじゃあどちらが付き人か分かったもんじゃない。最近はもう付き人と言うよりペットと飼い主。怒られ方はもちろんおれがペットになりつつあるけども。
優は頬杖をつき窓を見ながら呟いた。
「まあでも実際色々感じてはいるよ。クラブは元々学生だし先輩達といるから浮いてたけど、学校でさえも前よりなんかこう、まるで有名人扱いされたりするし」
「いやだから有名人だわ充分」
佳乃が突っ込むので秋は首を傾げる。
「佳乃はおれたちの事遠い存在って感じしてきた?」
「いや、日々あほさが増してるなって」
「おい!」
今度は秋が突っ込むと始業のチャイムが鳴ってしまう。桃花がまた後でと自分の教室へ戻っていくと、同じタイミングでぴよちゃんが入ってきた。
ぴよちゃんが教卓に立つと日直の出番だ。すっと息を吸って声を張る。
「起立、礼、おすわり!……あれ?」
あら、素で間違えた。
ぴよちゃんの怒号とみんなの笑い声。
今日もクラスは平和でよろしい。
いくら気合いがあったとしてもクラブで話しかけたら避けられちゃうし、麗央さんがいつもクラブにいるわけでもないからなかなか接点を増やせない。
「はあ、世知辛い」
「黄昏てるとこ悪いけど唯斗お前今日日直な」
「およ」
朝、今日も赤羽さんのお迎えで登校してみればクラス委員長の佳乃にそう言われる。あ、だから今日おれだけバイトの時間遅く入れたんだった。ちなみに日直だと号令を毎回して日誌を書いてぴよちゃんのお手伝いを放課後にする事になっているのだ。
「秋と優今日もバイト終わったらクラブ行くよね?」
「うん、てか昨日のが悔しくて休めって言われても行く」
秋が拳を握ったので思わず笑ってしまう。最近は避けるに加えて相手の動きの見方、そしてどう動くのが正解かなんてのを徹底的に教え込まれている。それでも、どんなに判断材料を頭に入れたって幹部の人達はフェイントを入れてくるからこれまた悔しい思いをするのだ。
「お前らモデルの次はスタントマンでもやるのか?」
また変なこと始めんなよ……と佳乃が腰に手を当てた。
「ううん、護身術習ってるの」
「ああ……それはやっとけ、本当に」
佳乃はなんだかんだおれたちが色んなことに巻き込まれているのを知っているのでウンウンと納得だ。おれの隣で式は不満そうに聞いていたけど、結局はアドバイスをくれたりする。優しいんだからもう。
佳乃はそんな式に日誌を渡す。
「んで、式もよろしくな日直」
「わかってるよ」
日直はいつも2人で大体が隣の席の人とペア。だから隣の席の式だ。
「式くん、号令なにが言いたい?起立、礼、おすわりのどれ?」
「ぜってえ言わねぇからな……」
当然騙されてはくれなかった。
ふと騒がしさが廊下から聞こえてきておれを呼ぶ声がした。女の子達が手を振っているので振り返すときゃーと嬉しそうにしてくれる。ああ、可愛いなぁ今日も。
最近は同じことが秋と優にも起こっている。
優と暮刃先輩の喧嘩だったり稽古だったりで周りの目を忘れがちだが未だ学校内では雑誌のモデルの話が多い。SNSで写真もずっと載せ続けてるしね。柚さんがこれまたいい写真をたくさん送ってくれるからネタが尽きないのだ。それに良いものは共有に尽きる。
女の子達がまた騒がしくなると桃花がひょっこり顔を出した。桃花が通り過ぎるとぽっと頰を赤らめたのをおれはすかさずチェック。師匠として鼻が高いです。
彼はおれたちの机まで来るとはあとため息だ。
「美人さんがため息はノンノン~」
「はいはい。唯斗さん達のモデルの話、うちのクラスでも凄いですよ」
「すごいねぇ、発売から日にちは経ってるのに」
「そりゃ大きい企画で最近は学校に事務所への勧誘まで来てるそうですからね。噂が広まってずっと新鮮なままですよ」
桃花は不満げに言うがおれとしては初耳だった。
「事務所?そうなんだ~!」
「はい、そこ緊張感持ってくださいね」
また怒られそうなので、背筋を伸ばしてぶんぶん頷いた。これじゃあどちらが付き人か分かったもんじゃない。最近はもう付き人と言うよりペットと飼い主。怒られ方はもちろんおれがペットになりつつあるけども。
優は頬杖をつき窓を見ながら呟いた。
「まあでも実際色々感じてはいるよ。クラブは元々学生だし先輩達といるから浮いてたけど、学校でさえも前よりなんかこう、まるで有名人扱いされたりするし」
「いやだから有名人だわ充分」
佳乃が突っ込むので秋は首を傾げる。
「佳乃はおれたちの事遠い存在って感じしてきた?」
「いや、日々あほさが増してるなって」
「おい!」
今度は秋が突っ込むと始業のチャイムが鳴ってしまう。桃花がまた後でと自分の教室へ戻っていくと、同じタイミングでぴよちゃんが入ってきた。
ぴよちゃんが教卓に立つと日直の出番だ。すっと息を吸って声を張る。
「起立、礼、おすわり!……あれ?」
あら、素で間違えた。
ぴよちゃんの怒号とみんなの笑い声。
今日もクラスは平和でよろしい。
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