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rival!
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アゲハさんは困ったように笑った。
「私も詳しく聞いたわけじゃないけど、麗央ちゃん氷怜くんがいままで女の人を選んでいたことを気にしていたから……だから私最初氷怜くんとまさか唯ちゃんが付き合ってるなんて思ってもみなくて……」
あ、たしかに前の時も女の人と氷怜先輩が付き合ってると思ってたってアゲハさん言ってたかも。麗央さん情報だったのか……あれでもあの時はすでに麗央さんおれと氷怜先輩との仲を知っていたはずだ。不思議に思いながらアゲハさんを見ているとハッとしたように言う。
「ってまた私ったら!!」
自分でビンタでも入れるのではないかと言う勢いで気を引き締め直したアゲハさん。丁度ボーイさんがアゲハさんに声をかけると眉を下げて立ち上がった。
「ごめんね、ちょっと外すけどまたすぐ戻ってくるからね!」
「はーい!」
にこにこ手を振ってアゲハさんを送り出す。大人気なアゲハさんは相変わらず忙しそうだ。白を基調としたこのクラブで今日も彼女は素敵なドレスを纏っている。
麗央さんとアゲハさんは仲がいいから女の人がダメってわけじゃなくて、氷怜先輩と一緒にいたのが女の人だから麗央さんが気にする、と言うのはどう言う事だろうか。
「ね、2人が麗央さんと話した時おれのことどんな風に嫌いか言ってた?」
「え?いや、特に。てか嫌いって言うよりは自分の事を責めつつなおかつ唯に許せないものがあるって感じかな」
「理由もなく嫌うタイプじゃなさそうだしね、もし嫌いならその理由があってさらに相手に直接言うタイプだと思う」
2人は人のことよく見てるからそう言うのなら間違いが無いはずだ。
「って事はおれを認められない相当な理由が麗央さんにはあるのかぁ」
難しい話だなぁ。単純だけどライバルだから嫌い、ってわけでもないのは明確だ。さて、どうやって仲良くなろうかと悩みだすと亜蘭さんが少しトーンを落としておれの名前を呼ぶ。
「唯、正直俺が口出すことでも無いけど、わざわざ距離縮める必要あんのか?それに仲良くなろうとしてる相手の恋路を応援も出来ねえ立場だぜお前は」
最近幹部メンバーたちに色々教えてもらっているから亜蘭さんはこうやってはっきり言ってくれる人だって良くわかる。周りをよく見て必要とする疑問や答えをぶつけてくれるのだ。
「もちろん、自分の立場はおれなりに分かってるつまりです。でも、その事と麗央さんの事もっと知りたいとか仲良くなりたいって気持ちはまた別なので、この気持ちは隠したりしたくないんです」
これがおれのわがままなのは分かってるけど、やっぱりしたい事とか気持ちに嘘をつくのは違うのだ。
おれがそう話すと亜蘭さんはそうかと笑った。人を安心させる良い笑顔。
「ん、ちゃんと考えてんなら良いわ。余計な事だった。悪い」
「いえ、ありがとうございます!押忍!」
おれが頭を下げると手が乗せられた。撫でる那加さんが手でぱたぱたと自分に風を送る。
「あーあっついあっつい、亜蘭の熱血が唯に移るだろー!ふわふわで良いのにもー」
「お前は適当過ぎなんだよ」
那加さんが茶化すと亜蘭さんが鼻で笑う。
みんな仲良くて面倒見良くて良い人ばかりだ。こんなふうにいつか麗央さんとも仲良くなれたらいいな。
おれの考えなど親友2人はまあこう言うやつですよと慣れっ子だ。秋はそれにしても話題を持ち出す。
「昔の氷怜先輩って言えば、たしかに氷怜先輩と一緒に歩いて噂になるとしたら女の人だったよね。こう、クールでスレンダーでモデルみたいな」
「ああ~そうだよねぇ。あれは素敵だった」
思い出したら涎が出そうなくらい目の保養だった。昔は遠くから見たことがある程度だったけど今なら鮮明に想像できるから尚更だ。
那加さんが怪訝な顔をする。腑に落ちない、そんな顔。
「……自分の男のそんな話よく穏やかに出来るな」
「変ですかね?」
「いや、変っていうか。懐が深いと言うかつくづく毒がないなって思うって感じか……」
那加さんはあるのだろうか、那加さんくらいかっこよくて男らしくて料理も天才的な人なのに。苦笑されてしまったがおれも優も秋も昔の事とか本当に気にならない。自分たちが見ている大好きな先輩達が真実なのだから。
「思えば俺たちそもそも疑うって事もしないし、疑う要素もないよな。そんな事しないって分かるしなぁ」
「まあそうだね、あんなに表情豊かで感情も分かりやすい人達だし」
秋と優におれも同感だ。笑うと可愛いわ格好いいわドキドキだわで、てんやわんやしちゃうんだから。
「表情豊か?」
「分かりやすい?」
那加さんと亜蘭さんが視線を合わせる。あり得ないものでも見たようにポカンと一言。
「それ別人じゃねえか」
だとしたら大事件だ。
「私も詳しく聞いたわけじゃないけど、麗央ちゃん氷怜くんがいままで女の人を選んでいたことを気にしていたから……だから私最初氷怜くんとまさか唯ちゃんが付き合ってるなんて思ってもみなくて……」
あ、たしかに前の時も女の人と氷怜先輩が付き合ってると思ってたってアゲハさん言ってたかも。麗央さん情報だったのか……あれでもあの時はすでに麗央さんおれと氷怜先輩との仲を知っていたはずだ。不思議に思いながらアゲハさんを見ているとハッとしたように言う。
「ってまた私ったら!!」
自分でビンタでも入れるのではないかと言う勢いで気を引き締め直したアゲハさん。丁度ボーイさんがアゲハさんに声をかけると眉を下げて立ち上がった。
「ごめんね、ちょっと外すけどまたすぐ戻ってくるからね!」
「はーい!」
にこにこ手を振ってアゲハさんを送り出す。大人気なアゲハさんは相変わらず忙しそうだ。白を基調としたこのクラブで今日も彼女は素敵なドレスを纏っている。
麗央さんとアゲハさんは仲がいいから女の人がダメってわけじゃなくて、氷怜先輩と一緒にいたのが女の人だから麗央さんが気にする、と言うのはどう言う事だろうか。
「ね、2人が麗央さんと話した時おれのことどんな風に嫌いか言ってた?」
「え?いや、特に。てか嫌いって言うよりは自分の事を責めつつなおかつ唯に許せないものがあるって感じかな」
「理由もなく嫌うタイプじゃなさそうだしね、もし嫌いならその理由があってさらに相手に直接言うタイプだと思う」
2人は人のことよく見てるからそう言うのなら間違いが無いはずだ。
「って事はおれを認められない相当な理由が麗央さんにはあるのかぁ」
難しい話だなぁ。単純だけどライバルだから嫌い、ってわけでもないのは明確だ。さて、どうやって仲良くなろうかと悩みだすと亜蘭さんが少しトーンを落としておれの名前を呼ぶ。
「唯、正直俺が口出すことでも無いけど、わざわざ距離縮める必要あんのか?それに仲良くなろうとしてる相手の恋路を応援も出来ねえ立場だぜお前は」
最近幹部メンバーたちに色々教えてもらっているから亜蘭さんはこうやってはっきり言ってくれる人だって良くわかる。周りをよく見て必要とする疑問や答えをぶつけてくれるのだ。
「もちろん、自分の立場はおれなりに分かってるつまりです。でも、その事と麗央さんの事もっと知りたいとか仲良くなりたいって気持ちはまた別なので、この気持ちは隠したりしたくないんです」
これがおれのわがままなのは分かってるけど、やっぱりしたい事とか気持ちに嘘をつくのは違うのだ。
おれがそう話すと亜蘭さんはそうかと笑った。人を安心させる良い笑顔。
「ん、ちゃんと考えてんなら良いわ。余計な事だった。悪い」
「いえ、ありがとうございます!押忍!」
おれが頭を下げると手が乗せられた。撫でる那加さんが手でぱたぱたと自分に風を送る。
「あーあっついあっつい、亜蘭の熱血が唯に移るだろー!ふわふわで良いのにもー」
「お前は適当過ぎなんだよ」
那加さんが茶化すと亜蘭さんが鼻で笑う。
みんな仲良くて面倒見良くて良い人ばかりだ。こんなふうにいつか麗央さんとも仲良くなれたらいいな。
おれの考えなど親友2人はまあこう言うやつですよと慣れっ子だ。秋はそれにしても話題を持ち出す。
「昔の氷怜先輩って言えば、たしかに氷怜先輩と一緒に歩いて噂になるとしたら女の人だったよね。こう、クールでスレンダーでモデルみたいな」
「ああ~そうだよねぇ。あれは素敵だった」
思い出したら涎が出そうなくらい目の保養だった。昔は遠くから見たことがある程度だったけど今なら鮮明に想像できるから尚更だ。
那加さんが怪訝な顔をする。腑に落ちない、そんな顔。
「……自分の男のそんな話よく穏やかに出来るな」
「変ですかね?」
「いや、変っていうか。懐が深いと言うかつくづく毒がないなって思うって感じか……」
那加さんはあるのだろうか、那加さんくらいかっこよくて男らしくて料理も天才的な人なのに。苦笑されてしまったがおれも優も秋も昔の事とか本当に気にならない。自分たちが見ている大好きな先輩達が真実なのだから。
「思えば俺たちそもそも疑うって事もしないし、疑う要素もないよな。そんな事しないって分かるしなぁ」
「まあそうだね、あんなに表情豊かで感情も分かりやすい人達だし」
秋と優におれも同感だ。笑うと可愛いわ格好いいわドキドキだわで、てんやわんやしちゃうんだから。
「表情豊か?」
「分かりやすい?」
那加さんと亜蘭さんが視線を合わせる。あり得ないものでも見たようにポカンと一言。
「それ別人じゃねえか」
だとしたら大事件だ。
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