sweet!!

仔犬

文字の大きさ
上 下
306 / 379
rival!

2

しおりを挟む

空いたグラスを見つめていたら掛けられた声。一瞬唯斗を思い起こしたが声が違った。まず目の前にいた人間の名前を呼ぶ。

野島秋裕のじまあきひろ……」

秋は大袈裟に自分で身体を摩った。

「ふ、フルネームってなんかゾワゾワするから、下の名前で呼んでくれませんか……?」

「良かったら俺もお願いします。あとこれ飲みます?紫苑さんが間違えてお酒入れちゃったんで俺飲めなくて」

優が差し出したのは両手に持っていた全く見た目の同じドリンク。苺がひとつ沈んでいてその周りを気泡が細かく覆っていた。

「飲めばいいのに……」

「いや未成年ですし」

「俺もだけど」

「え」

固まった優に隣で秋が焦ったように話し出した。

「す、すみません。普通に飲んでるし麗央さん可愛いのに大人っぽいし勝手に成人済みと決めつけてました」

秋がそう言えば優まで謝ってくる。
この2人、麗央からすると不思議だった。自分の親友を完全に拒絶をしている麗央に対して驚くくらい普通に接してくるからだ。そして拒絶した本人ですら今日だって嬉しそうに近寄ってきた。

かと言って素直に仲良くできるわけもなく麗央は眉を顰めるが、少し深めに息を吐いて一旦思考をクリアにした。

「まあ、年上ではあるよ……それちょうだい。美味しそう」

「もちろん、どうぞ」

にこりと笑う優は品がいい。
髪の毛の色はミルクティー色だが、元の黒でも綺麗なものだろう。黒目でもハイトーンが似合うのはその造形が整っているからだ。凛として色気があるのは麗央にとって少し羨ましいものだった。傷んでいるようにも見えず綺麗に髪質を保っているし、見た目に出るものは中身でもあると麗央は思う。

「麗央さん、秋とか優って呼ぶの嫌ですか?」

次に笑った秋に目線を移す。
言動は男らしく、人当たりもいい。3人の中で唯一暗い髪色で1番日本人らしい見た目ではあるが、あの豹原瑠衣ひょうはらるいと並んでいても遜色がない。猫目気味なのにきつい印象もなくて、笑った時にその目尻が下がるとなんとも爽やかである。
麗央としては骨格がとにかく綺麗で見ていて飽きないものがあった。これもまた、羨ましい限りだ。


「……なんで俺に話しかけるわけ?」

秋と優はキョトンとしてお互いに確認するように目を合わせる。


「仲良くなりたいからな?」

「ね」


何を当たり前の事をと言われそうな勢いだ。それが嘘だとも思えないし、本当に裏表がない。唯だってそう感じる、それでも……と麗央はなんとも言えない気持ちになった。

「……悪いけど、今の状態じゃ無理。2人をそう呼んでも高瀬唯斗たかせゆいとの事はそう気軽に呼べないから、あいつだけ呼ばないのもそれはそれで気分が悪い。単に虐めたい訳じゃないから、フェアじゃないのは好きじゃない」

自分でも馬鹿らしくなるほどこの気持ちが抑えられない。認められないものには自分が納得いくまで距離を置くしかないのだ。まるで、子供みたい。

「……麗央さんって」

「幼稚って言いたいなら」

「最高ですよねぇ」

「はあ?」





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

そばにいてほしい。

15
BL
僕の恋人には、幼馴染がいる。 そんな幼馴染が彼はよっぽど大切らしい。 ──だけど、今日だけは僕のそばにいて欲しかった。 幼馴染を優先する攻め×口に出せない受け 安心してください、ハピエンです。

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

異世界に転生してもゲイだった俺、この世界でも隠しつつ推しを眺めながら生きていきます~推しが婚約したら、出家(自由に生きる)します~

kurimomo
BL
俺がゲイだと自覚したのは、高校生の時だった。中学生までは女性と付き合っていたのだが、高校生になると、「なんか違うな」と感じ始めた。ネットで調べた結果、自分がいわゆるゲイなのではないかとの結論に至った。同級生や友人のことを好きになるも、それを伝える勇気が出なかった。 そうこうしているうちに、俺にはカミングアウトをする勇気がなく、こうして三十歳までゲイであることを隠しながら独身のままである。周りからはなぜ結婚しないのかと聞かれるが、その追及を気持ちを押し殺しながら躱していく日々。俺は幸せになれるのだろうか………。 そんな日々の中、襲われている女性を助けようとして、腹部を刺されてしまった。そして、同性婚が認められる、そんな幸せな世界への転生を祈り静かに息を引き取った。 気が付くと、病弱だが高スペックな身体、アース・ジーマルの体に転生した。病弱が理由で思うような生活は送れなかった。しかし、それには理由があって………。 それから、偶然一人の少年の出会った。一目見た瞬間から恋に落ちてしまった。その少年は、この国王子でそして、俺は側近になることができて………。 魔法と剣、そして貴族院など王道ファンタジーの中にBL要素を詰め込んだ作品となっております。R指定は本当の最後に書く予定なので、純粋にファンタジーの世界のBL恋愛(両片思い)を楽しみたい方向けの作品となっております。この様な作品でよければ、少しだけでも目を通していただければ幸いです。 GW明けからは、週末に投稿予定です。よろしくお願いいたします。

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

【BL】男なのにNo.1ホストにほだされて付き合うことになりました

猫足
BL
「浮気したら殺すから!」 「できるわけがないだろ……」 相川優也(25) 主人公。平凡なサラリーマンだったはずが、女友達に連れていかれた【デビルジャム】というホストクラブでスバルと出会ったのが運の尽き。 碧スバル(21) 指名ナンバーワンの美形ホスト。博愛主義者。優也に懐いてつきまとう。その結果、恋人に昇格。 「僕、そのへんの女には負ける気がしないから。こんな可愛い子、ほかにいるわけないしな!」 「スバル、お前なにいってんの…?」 美形病みホスと平凡サラリーマンの、付き合いたてカップルの日常。 ※【男なのになぜかNo. 1ホストに懐かれて困ってます】の続編です。

俺にはラブラブな超絶イケメンのスパダリ彼氏がいるので、王道学園とやらに無理やり巻き込まないでくださいっ!!

しおりんごん
BL
俺の名前は 笹島 小太郎 高校2年生のちょっと激しめの甘党 顔は可もなく不可もなく、、、と思いたい 身長は170、、、行ってる、、、し ウルセェ!本人が言ってるんだからほんとなんだよ! そんな比較的どこにでもいそうな人柄の俺だが少し周りと違うことがあって、、、 それは、、、 俺には超絶ラブラブなイケメン彼氏がいるのだ!!! 容姿端麗、文武両道 金髪碧眼(ロシアの血が多く入ってるかららしい) 一つ下の学年で、通ってる高校は違うけど、一週間に一度は放課後デートを欠かさないそんなスパダリ完璧彼氏! 名前を堂坂レオンくん! 俺はレオンが大好きだし、レオンも俺が大好きで (自己肯定感が高すぎるって? 実は付き合いたての時に、なんで俺なんか、、、って1人で考えて喧嘩して 結局レオンからわからせという名のおしお、(re 、、、ま、まぁレオンからわかりやすすぎる愛情を一思いに受けてたらそりゃ自身も出るわなっていうこと!) ちょうどこの春レオンが高校に上がって、それでも変わりないラブラブな生活を送っていたんだけど なんとある日空から人が降って来て! ※ファンタジーでもなんでもなく、物理的に降って来たんだ 信じられるか?いや、信じろ 腐ってる姉さんたちが言うには、そいつはみんな大好き王道転校生! 、、、ってなんだ? 兎にも角にも、そいつが現れてから俺の高校がおかしくなってる? いやなんだよ平凡巻き込まれ役って! あーもう!そんな睨むな!牽制するな! 俺には超絶ラブラブな彼氏がいるからそっちのいざこざに巻き込まないでくださいっ!!! ※主人公は固定カプ、、、というか、初っ端から2人でイチャイチャしてるし、ずっと変わりません ※同姓同士の婚姻が認められている世界線での話です ※王道学園とはなんぞや?という人のために一応説明を載せていますが、私には文才が圧倒的に足りないのでわからないままでしたら、他の方の作品を参照していただきたいです🙇‍♀️ ※シリアスは皆無です 終始ドタバタイチャイチャラブコメディでおとどけします

浮気な彼氏

月夜の晩に
BL
同棲する年下彼氏が別の女に気持ちが行ってるみたい…。それでも健気に奮闘する受け。なのに攻めが裏切って…?

兄弟がイケメンな件について。

どらやき
BL
平凡な俺とは違い、周りからの視線を集めまくる兄弟達。 「関わりたくないな」なんて、俺が一方的に思っても"一緒に居る"という選択肢しかない。 イケメン兄弟達に俺は今日も翻弄されます。

処理中です...