sweet!!

仔犬

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kick!!

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ようやく瑠衣先輩の機嫌が戻ってスイーツを食べ出した時だった。ざわざわと騒がしくなる周りに気付きフードコート内を見渡すと入り口あたりでひとだかりができていた。よく見れば神さん才さんが丁度誰かに見事なアッパーカットを直撃させた瞬間を目の当たりにする。

「うええ、なんかすごいことになってますけど!」

パフェに乗っかっていたイチゴをパクりと食べた瑠衣先輩は興味なさげに言う。

「ほっとけばイイヨー、双子っちがいるんだし大丈夫デショ」

「いやいや、リョウもいるしちょっと行ってきます」

立ち上がれば何故かパフェを持ちながら瑠衣先輩もついてくる。

「く、来るんですか?」

「しょーがないから」

思わず笑ってしまいそうになる。
でも今の最優先はリョウ。喧嘩に参加できなくとも安全だけは確保しに近寄ろうとした時リョウの後ろに誰かが立った。
どう見ても他のお客様じゃないしすぐに駆け出したけどパフェ持った瑠衣先輩のほうが何故か早く着く。
次の瞬間には後ろの男の人だけを綺麗に蹴り上げていた。相変わらず奇跡としか言いようがない力は今は置いといてリョウの安全を確認する。

特にどこか傷を負った感じはないけど呆然としながら神さんと才さんを見ていた。あーこれは1番見せてはいけない場面だったのではないか。

数十人はいたと言うのにあっという間に片付け、倒した人の山から楽しげに下山した2人はいい笑顔だ。とても人を殴った後とは思えない。

「すみません瑠衣さん」

「いや、つい戦いに熱中しちゃって」

「とりあえず、面倒になる前に移動しませんか?」

「今?」

明らかに瑠衣先輩が不機嫌になったのはまだパフェしか手を付けていないせいだ。フードコートは諦めるしか無いので代わりを探す。

「あー、えーと、優達洋服買った後にレストラン街いるみたいで一旦ご飯でも食いませんか?」

「オレデザートが良いんだけど」

「そこになんと世界一どでかいクレープが」

「早くイコー」

クルッと方向転換して歩き出す瑠衣先輩。
よし、作戦成功。
クレープに感謝しながら未だぼーっとするリョウを引っ張るがなにも言わないのでとにかくレストラン街に向かっていく。するとショッパーをいくつか持った先輩達と親友が手を振っている。

ようやく安心するメンバーが揃うとどっと疲れがきたように感じた。優と唯にのしかかり体重を預けると当たり前のように支えてくれる。

「なんか騒がしかったけど秋達?」

「うーん、まあ……」

「あ、やっぱり?怪我してない?」

優と唯に大丈夫と伝えれば、高い位置から頭に手が乗せられた。氷怜先輩が小さく良く瑠衣の面倒見たなと労いの言葉をくれる。

うっ良い男が心に染みる。
何となくでも瑠衣先輩の事を氷怜先輩達には分かっていたようだ。
当の瑠衣先輩はそんなことお構いなしにお目当てのお店に向かう。イタリアンなのに店の入り口にどデカくクレープの置物があるあそこだ。

「な、何名さまでしょう……?」

店員さんが美形ばかりの目立つ集団に驚きつつ案内してくれた奥の席は皮張りのソファで大人数でも寛ぎやすい。ぎこちない笑顔で接客してくれる店員さんにとにかくクレープとみんなの注文をする。

「秋の服も買ってきたよ」

「おーサンキュー、また結構買ったな」

「悩んでたやつあとから先輩達が全部買ってくれてた……あはは」

流石の唯が苦笑い。
これはいつものパターン、また防げなかったらしい。甘やかしも良いとこだ。

「リョウくんは大丈夫だった?さっき」

唯が話を振るとハッとしたように頷いた。そっかそっかと唯は気にして無いけど、リョウもいざこうして同じ席に先輩達といるのが緊張してきたらしい。

先輩達はいつも通り話し出した。

「またお前甘いもん食うのかよ」

「駄々こねるのも疲れるからネ」

「いい加減にしないと捨てられるよ」

「そっちは甘やかし過ぎて飽きられるんじゃないのー」

俺たちからしたらこれ普段通りの先輩同士の会話だけどリョウにしてみたら喧嘩に見えてしまいそう。案の定目が泳いでいる。

「なら、リョウ犬の感想聞こうかー?どーだったのヨ」

俺最近気づいた事があるんだけど、瑠衣先輩が名前に適当なあだ名をつける時は案外機嫌がいい時だ。

瑠衣先輩に話を振られ、びくりと身体が震えるリョウ。さっきので怖がらせちゃったかな。だけど話し出す言葉は意外なものだった。

「し、正直俺は先輩達の事なにも知りません。でも、秋の事なら多少は分かります。懐いてるし楽しそうで、表情とか見れば先輩達の事どれだけ好きか分かるし……」

なんか先輩からニヤニヤしながら見られてるような気がするのは気のせいだ。目を逸らしたら隣に座っていたリョウの拳に力が入ったのが見えた。

「あと、俺はさっきみたいに何かあったとき秋の事守れないってのも実感しました」

「お前がそんなの気にしなくても」

そう言いながらも今自分だって何かあった時のため、少しでも動けるようにしようと足掻いているわけで、リョウの気持ちもわからなくない。大切なものは守りたいよな。

「……でも、これだけは言うって決めてます!!」

「うお!」

突然立ち上がるからびっくりしたって、最近こればっかだな。
怖がりなとこもあった弟みたいなリョウはいつのまにか男らしくなったような気がする。キッと上がった眉、そして意を決したように叫ぶ。


「秋の事、泣かせたらまじで許さないんで!!」


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