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頭のいいこの人にも脈絡がなさすぎて思考が停止したようだ。固まった表情のまま暮刃先輩が首を傾げた。
「……ん?」
その反応が面白くて、可愛くてついに吹き出すように笑う。なんだかこの感じも久しぶりで余計に楽しくなる。
結局、優しさだって欲深いのだ。
心配だって行き過ぎれば重荷だし、思いやりも枷になる時だってある。俺も暮刃先輩も同じように。
だけど俺たちは欲に素直だし、感じた事をそのまま言って、やりたい事をそのまま行動に移す。それは変わらない。
だから折り合いの終着点を変えた。
この人のために変わろうとするのは意識的にできるものじゃない。それに、喧嘩をするような事自体が俺にとっては既に大きな変化だ。それならやるべき事は、自分ができる最大限で。
「せっかく綺麗な顔なのに変な顔してますよ。だってもう、結局一緒にいるならぶつかってくしかないじゃないですか。そのままを好きでいてくれるなら最大限のお返しを、しかもそれを得意なものでってなれば今の言葉が一番だと思いました。うん、これで解決」
「ちょ、っと……待った」
片手で目を覆うと困ったような、笑い出しそうな顔の暮刃先輩。俺はもう全部話し終わってスッキリして、体から力を抜いて足も投げ出して暮刃先輩に体重をかける。
暮刃先輩の気持ちを急降下急上昇させたので少し落ち着くまで時間がかかりそう。それでもしっかり抱きしめてくれるからさすがである。
一番最初に大笑いを始めたのは勿論瑠衣先輩だ。
「暮ちんの完敗じゃん!!!アハハハハハハ!!お尻に敷かれるんじゃないのプフーー!!」
秋を抱っこしたままガタガタと震えている瑠衣先輩は呼吸困難でもうすぐ倒れそうだ。笑いすぎですと言う秋も笑いながら震えている。
「暮刃ぁ、お前全部見破られてんぞ。ははっくくっ……」
珍しく氷怜先輩まで笑い出し後ろの紫苑さんは驚いた表情。
「優ってこんなだったか……?」
「吹っ切れたって事ですよ~」
唯がにやりと笑い親友2人でうんうんと納得していたあたり、やっぱり思考回路が似てきたみたいだ。俺もすっかり見破られている。
あの先輩達の雑誌を見たときにはもう言いたい事がまとまっていた。結局離れるとか離れないとかそんな問題ではなくて、それこそ俺が単に考えすぎで。でもそれが俺の持つ性質だから、考えて考えてちゃんと吹っ切れたって事が重要なのだ。
そこからはもう、この人を喜ばせる方法を選ぶだけ。
ようやく頭が回って来た暮刃先輩は頬杖をつき、完敗だと掌を見せた。この人が似合いすぎるキザな事をするときは大抵機嫌が良い。
「なんでその答えで俺が納得すると思ったの?」
「いやだって……」
答える前にようやくスッキリした俺は無性に喉が渇いてきて豪華なドリンクに手を伸ばすとお酒だったらしい。俺を抱きしめたまま暮刃先輩がそれを取り上げ、代わりにコーラを差し出した。刺さったストローを指でつまみ暮刃先輩を見上げる。相変わらず綺麗な顔に余裕な笑みを向けるのはご愛敬。
「暮刃先輩俺にめちゃめちゃ愛されたいでしょ?」
俺の答えにキョトンとした暮刃先輩。数秒後、俺の頰に指をさし、既に爆笑している面々に言う。
「……可愛げが減った」
「成長と言って欲しいですね」
ふと俺たちがあまりにも爆笑しているせいで下がまた騒がしくなる。話題の中心の会話が気になるらしいが先輩達のイメージが崩れないか不安になるほど爆笑してるし、紫苑さんがカーテン閉めてよかったかも。
「アハッアハハ!!」
「瑠衣先輩がバイブしててめっちゃ揺れる」
「良かったねぇ仲直りして」
唯だけがにこにこと嬉しそうに笑っていて心配させていたのは明白で。氷怜先輩も笑いながらもそんな唯の頭に手を乗せた。うん、みんなにも何かお礼をしよう。
ようやく落ち着いて色んな事が考えられるようになってくると、ふと紫苑さんの視線が気になった。俺たちに向かってさっきまで見守るように微笑んでいたがカーテンの向こうの通路を見ている。
すると通路側のカーテンに隙間が空き、覗いているのは赤羽さんだった。
「みなさん、来たみたいですよ」
「ああ元凶がようやくきたか」
氷怜先輩がグラスを片手に笑うと唯が何が来るのかと首を傾げた。
そう言えばいつの間にかいなかった彼は何をしていたのだろう。彼は俺たちのこの場の雰囲気をすぐに察知したようで良かったですねと爽やかに笑った。
「心配なんてしてなかったでしょ赤羽さん」
「はい」
うん、素直な事で。
なんなら楽しんでたんでしょって言いたいけど愚問な気がする。この人だって同じ部類だから、欲に忠実な点が。
秋が赤羽さんに向けて手をあげる。
「何が来たんですか?瑠衣先輩今人に会える状態じゃ」
「あーーーダイジョウブー……アハッ……ぶっくく」
「いや、まず呼吸して。はいヒーヒーフー」
何を生ませようとしてるのか秋がぽんぽんとリズミカルに瑠衣先輩を叩く。本当にこんな状態で誰に会うのか。見上げたら暮刃先輩が微笑んだ。
「勝手に動かないでね」
「え?」
赤羽さんが道を開けるようにカーテンをよけるとこつりと靴音が聞こえて来た。
「なんだ、せっかく仲違いしてくれたと思ったのに。大団円か?」
「……ん?」
その反応が面白くて、可愛くてついに吹き出すように笑う。なんだかこの感じも久しぶりで余計に楽しくなる。
結局、優しさだって欲深いのだ。
心配だって行き過ぎれば重荷だし、思いやりも枷になる時だってある。俺も暮刃先輩も同じように。
だけど俺たちは欲に素直だし、感じた事をそのまま言って、やりたい事をそのまま行動に移す。それは変わらない。
だから折り合いの終着点を変えた。
この人のために変わろうとするのは意識的にできるものじゃない。それに、喧嘩をするような事自体が俺にとっては既に大きな変化だ。それならやるべき事は、自分ができる最大限で。
「せっかく綺麗な顔なのに変な顔してますよ。だってもう、結局一緒にいるならぶつかってくしかないじゃないですか。そのままを好きでいてくれるなら最大限のお返しを、しかもそれを得意なものでってなれば今の言葉が一番だと思いました。うん、これで解決」
「ちょ、っと……待った」
片手で目を覆うと困ったような、笑い出しそうな顔の暮刃先輩。俺はもう全部話し終わってスッキリして、体から力を抜いて足も投げ出して暮刃先輩に体重をかける。
暮刃先輩の気持ちを急降下急上昇させたので少し落ち着くまで時間がかかりそう。それでもしっかり抱きしめてくれるからさすがである。
一番最初に大笑いを始めたのは勿論瑠衣先輩だ。
「暮ちんの完敗じゃん!!!アハハハハハハ!!お尻に敷かれるんじゃないのプフーー!!」
秋を抱っこしたままガタガタと震えている瑠衣先輩は呼吸困難でもうすぐ倒れそうだ。笑いすぎですと言う秋も笑いながら震えている。
「暮刃ぁ、お前全部見破られてんぞ。ははっくくっ……」
珍しく氷怜先輩まで笑い出し後ろの紫苑さんは驚いた表情。
「優ってこんなだったか……?」
「吹っ切れたって事ですよ~」
唯がにやりと笑い親友2人でうんうんと納得していたあたり、やっぱり思考回路が似てきたみたいだ。俺もすっかり見破られている。
あの先輩達の雑誌を見たときにはもう言いたい事がまとまっていた。結局離れるとか離れないとかそんな問題ではなくて、それこそ俺が単に考えすぎで。でもそれが俺の持つ性質だから、考えて考えてちゃんと吹っ切れたって事が重要なのだ。
そこからはもう、この人を喜ばせる方法を選ぶだけ。
ようやく頭が回って来た暮刃先輩は頬杖をつき、完敗だと掌を見せた。この人が似合いすぎるキザな事をするときは大抵機嫌が良い。
「なんでその答えで俺が納得すると思ったの?」
「いやだって……」
答える前にようやくスッキリした俺は無性に喉が渇いてきて豪華なドリンクに手を伸ばすとお酒だったらしい。俺を抱きしめたまま暮刃先輩がそれを取り上げ、代わりにコーラを差し出した。刺さったストローを指でつまみ暮刃先輩を見上げる。相変わらず綺麗な顔に余裕な笑みを向けるのはご愛敬。
「暮刃先輩俺にめちゃめちゃ愛されたいでしょ?」
俺の答えにキョトンとした暮刃先輩。数秒後、俺の頰に指をさし、既に爆笑している面々に言う。
「……可愛げが減った」
「成長と言って欲しいですね」
ふと俺たちがあまりにも爆笑しているせいで下がまた騒がしくなる。話題の中心の会話が気になるらしいが先輩達のイメージが崩れないか不安になるほど爆笑してるし、紫苑さんがカーテン閉めてよかったかも。
「アハッアハハ!!」
「瑠衣先輩がバイブしててめっちゃ揺れる」
「良かったねぇ仲直りして」
唯だけがにこにこと嬉しそうに笑っていて心配させていたのは明白で。氷怜先輩も笑いながらもそんな唯の頭に手を乗せた。うん、みんなにも何かお礼をしよう。
ようやく落ち着いて色んな事が考えられるようになってくると、ふと紫苑さんの視線が気になった。俺たちに向かってさっきまで見守るように微笑んでいたがカーテンの向こうの通路を見ている。
すると通路側のカーテンに隙間が空き、覗いているのは赤羽さんだった。
「みなさん、来たみたいですよ」
「ああ元凶がようやくきたか」
氷怜先輩がグラスを片手に笑うと唯が何が来るのかと首を傾げた。
そう言えばいつの間にかいなかった彼は何をしていたのだろう。彼は俺たちのこの場の雰囲気をすぐに察知したようで良かったですねと爽やかに笑った。
「心配なんてしてなかったでしょ赤羽さん」
「はい」
うん、素直な事で。
なんなら楽しんでたんでしょって言いたいけど愚問な気がする。この人だって同じ部類だから、欲に忠実な点が。
秋が赤羽さんに向けて手をあげる。
「何が来たんですか?瑠衣先輩今人に会える状態じゃ」
「あーーーダイジョウブー……アハッ……ぶっくく」
「いや、まず呼吸して。はいヒーヒーフー」
何を生ませようとしてるのか秋がぽんぽんとリズミカルに瑠衣先輩を叩く。本当にこんな状態で誰に会うのか。見上げたら暮刃先輩が微笑んだ。
「勝手に動かないでね」
「え?」
赤羽さんが道を開けるようにカーテンをよけるとこつりと靴音が聞こえて来た。
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