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しおりを挟む「喧嘩しちゃったんだ?」
穏やかな春さんには優が何かあった事なんてすぐにお見通し。店内が少し落ち着いたら、さりげなく優に聞き始めた。さりげなくてもそうでなくても春さんにはなんでも話してしまうおれたちは報告会を始める。
「彼ら多分そんなの気にしないと思うけど」
「今は良いかもしれないですけど続いたら結構大変な事ですよ……それにあの人達との本質のずれがすごいし」
「おれらも優に気にすんな!って言いますけど、優の言ってる事も正しいからたしかになぁ、とも思います」
くすぶる表情の優におれと秋が苦笑い。春さんは変わらず微笑むと、ふと思い当たる節があったようだ。思い出し笑いのようにくすくすと。
「君達はちょっと俺に似てるねぇ」
「春さんに?」
「俺もこんな感じだから結構怒られた事あるよ。みんな仲良くしたいけどそれが傷つけちゃう、とかね」
春さん、モテモテすぎてお店がとんでもない事になったことあるもんな。情けないねと困った笑いの春さんのそんな姿も癒されるが、心配でもある。
「春さん……女の子の扱い上手すぎて下手ですもんね」
「下手ってひどいなぁ……」
春さんは察しが良い分いろんな事をしてあげてしまう。それが勘違いしたりとか、きっぱり突き放せなくてってそれ、おれも昔あったなぁ。
「その点で言えば息子の方が成長したね、中学から考えると。あ、女の子に関してはね」
「うん、お任せあれ!」
「女の子に関してはね」
「あはは、二回言われてるよ。唯斗」
他に何があると言うのだ。首を傾げたところでにこにこ春さんと秋と優の呆れ顔。そして春さん息子発言はいいんですか?パパって呼びますよ?
「でもそれ、優の悩みって根本的な解決は難しいよね。トラブルはさ、行動の数だけ絶対的に増えるから、動かなくなるなんて事君達向いてないだろうし。あと、想いの形なんてひとそれぞれだからね、どんなに好きでも」
さすが春さん。
愛まで優しく話してくれちゃうところも好き。マイナスイオンで癒されながらおれも一緒に考え込む。
「それなんですよねぇ、せめて先輩が安心できれば良いんだけどなぁ」
「うーん、それは難しいと思うよ。可愛い後輩で恋人なんだから心配されて当然だ、もちろん俺もね?」
「春さん……好きい」
男前な発言も愛してる。
それでもいくら春さんに感動しても問題の解決にはならず、秋も優も黙り込む。キッチンで話し込んでいたおれ達を覗き込んだのはバイトくん。
「お前ら目当てのお客様きたけど」
「ほいほい!」
「最近増えたね。すっかり人気者だ……とか言いたいけどもともとみんな目当ての人多かったよ」
「春さんもね!でもおれたちバイト入りすぎってだけですよ」
最近始めたSNSのおかげかこうして会いにきてくれる人が増えてきた。殆ど女の子が多いけど優の服と秋のダンスが広まって来てからは男の人に話しかけられる事も増えてきたかも。単純に嬉しいよねぇ、知らない人まで見てもらえるの。
もともと知り合いが多かった事やクラブでも大量に知り合い増えた。そして幹部の1人、SNS界隈で超絶人気の紫苑さんがおれたちのアカウントをさらっと紹介してくれたら怒涛の勢いでフォロワーが増えた。さらにはクラブのカメラマンの柚さんが写真を撮ってくれるようになってからは鰻登りだ。
「でもまだそんな実感ないんですよねー、こうしてたまに声かけられるようになったなぁとかくらいで」
「いきなりどーんと来るかもね」
「流石にそれは……」
ホールに向かいながらそう答える優にふと過ぎる。
これ逆に使えるんじゃ無いだろうか。
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