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しおりを挟む「なんで裏口から入ってくるんですかびっくりしたああ」
突然後ろにいたから驚いてテーブルの足に小指をぶつけた。爽やかな笑顔でおはようございますと笑った赤羽さんに優が不思議そうな顔をする。
「どうしてここに?」
「何度か電話してたんですが繋がらず、家に迎えに行ったらすでに出かけたと言われてしまいまして」
「うわ、本当だ。すみません飛び出していったから確認が」
大丈夫と笑う赤羽さん。いつも彼はご機嫌だが、今日はさらに笑顔が多い気がして、秋が不思議そうな顔をする。
「な、なんだか嬉しそうですね」
「あの暮刃さんが包み隠さず不機嫌で理由も教えてくれなかったので不思議に思っていたんですが、でも今皆さんの話を聞いて納得しました。まさか、優さんと喧嘩って……ははっ」
あまりにも爽やかに吹き出したのでおれたちは驚いて立ち上がる。
「うえ?!笑うところですか?」
「ああ、ごめんなさい。だって暮刃さん基本的に笑顔でなんでも済ませてしまうような人だ。話した相手に興味を持つことの方が珍しいのに」
それが恋人との喧嘩と聞いたら俺からすると衝撃的です。そう言った赤羽さんを優がぽかんと見つめていた。だっておれたちの知っている先輩は真逆だ。
「あんなに情緒豊かなのに……」
「あははは!」
もうダメだと言わんばかりに、大爆笑の赤羽さん。そんなに笑わなくても。涙を溜めてようやく笑いを収めると目元に手を当てながら言う。
「今更ですけど、本当に愛されてますね」
「……それはもう重々承知です」
優が苦笑気味にそんな事を言うから、おれたちもつられて笑ってしまった。先輩達にそんな一面があったようにおれたちも今まで付き合った人とこんなふうに喧嘩なんてほとんどなかった。もともと怒るタイプでは無いし、エスコート側に居たせいもあるけど怒られるとかも経験がない。
新しい一面を引き出しているのはお互いだ。
「うん、でもなんかすっきりしたかも。ありがとうみんな」
ニッと子供みたいに笑う優も可愛くて思わず抱きつくと秋までふざけて乗っかって来た。ようやく吹っ切れたのならこれからはすべき事を。
「まずはー、今日もバイト楽しむぞー!」
「まったく関係ないけど賛成!」
「適当だなぁ」
楽しまないと何も始まらないでしょ。
騒ぎ出すおれ達に赤羽さんが微笑んだ。
「スタジオ行くんですよね。夜送るので」
「や!しばらく送り迎えは大丈夫なので!俺達だけでも平気ってところ見せないと」
「それは……ああでも」
「え?」
「送りたいから送る。なら良いんですよね」
いつから聞いていたのかはわからないけど殆どの内容をさすがの赤羽さんは理解しているようだ。しかも使い方が巧妙。優がじとりと赤羽さんを見つめる。
「赤羽さんって……ずるいなぁ」
「性分なので」
「あ、でも予定があるって聞きましたよ」
「終わらせました」
「…………お願いします」
有無を言わせないところもさすがだ。
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