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仔犬

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「納得いかない俺に暮刃先輩はみんなに聞いたら良いって言うけど、俺から始めた話だからこのままじゃ一緒に悩ませるから嫌だって話して……じゃあとにかく俺は好きなようにするからって暮刃先輩に言われた。分かりましたって答えた所でもう体力が限界を迎えてみんなの居る部屋に向かった……こんなところかな」


優が話し終わる頃にはティーカップは空で微かな香りが部屋に残っているだけだった。

聞いて思った事、まずひとつ挙げるなら。


「「やっぱ優が悪い」」

「いや、はい……ごめん」


優自身もわかっているようだ。だから今日も暮刃先輩が送り迎えをつけると言った時折れたのだろう。

わざと残酷な言い方をしてその問題を目の当たりにさせたわけだ。そりゃ暮刃先輩だって怒るよね、しかもタイミングも悪かった。優って気になる事があるとその場で行動するタイプだからな。

「そりゃおれたちも悩むけど、出来る事なんてやれる事やってくしかないんだよ。先輩達はおれたちがやりたいようにさせてくれてるんだし、それにおれ達も先輩には好きにして欲しいじゃん」

「そうなんだけどね、あまりにも想いの質が違い過ぎるなって痛感しちゃったんだよ。色々ね」

想いの質かあ、いくら仲良しでも人間がそもそも違うんだから仕方ないとも思う。でも珍しく優が無防備な事をして、暮刃先輩の怒りに触れて、あまりの気持ちの差に愕然とした。
そんな所だろうか。

苦笑いの秋が片腕で頬杖をついた。

「優ってたまにそういうとこでループ入るよな。白黒つけたいと言うか」

視線を横に流した優は少しだけ眉間に力を込めた。

「ね……ほんと悪い癖だよね。しかも最終的には暮刃先輩には頼りにならないって思われてるみたいだって違うポイントに刺さっちゃって」

「2次被害がひどいなぁ。2人とも頭いいから変に広い範囲が見えるんだな」


やりとりを聞きながらもうひとつ思っていた事は、優って自分で優しくないとか言うけどかなり優しいって事。いやそんなのずっと知ってたけどさ、今回さらにさ感じさせてくれた。

先輩の事も考えて、おれたちの事も考えて、なんなら1人でどうにかしようとして。

「愛だねぇ」

「いやいや、まとめ方適当か」

「もう優様好きーって感じが止まんないんだもん。でもさあ、やっぱ飛び出して正解だった」

おれの言葉に怪訝な顔をした優。それとは逆に秋がニヤリと笑った。

「だな」

「何言ってんの、2人まで気にしてなかった事気にする必要ないし。しかもなんで先輩達に謎の宣言してきたの」

「みんな優しいから」

「え?」

「2人が俺らのために何も言わないし、平行線たどりそうな問題だったから優も余計に話さなかった訳でしょ」

おれの言葉にうんうんと頷いた秋が続ける。

「だったら俺らはこれまで通りやりたい事をやりたいようにするわけ。優が真面目すぎるからショック療法じゃないけどなおさら今まで通りにしないと」

「なんで……?」

「やり通して大丈夫でした!って先輩に言えるようになればいいし、これだけ先輩達に自分を預けてるんだって分かりやすいでしょ。遠慮してたら余計に伝わりにくいって」

「だから暮刃先輩もやりたいようにするって言ったんでしょ?」

「……うん」


優が静かに頷いた。
お互いが考えてる事が分かりすぎて動けないって言うのもあるのかな。それでも暮刃先輩がしたいようにしたと言う事はそうして欲しい、と言うことでもあるはず。

「でも具体的には?」

「あれやる!これやる!それは大丈夫ですって宣言していけばお互い動きやすいし良いかなって」

「……それで先輩達のとこ飛び出してきたわけ?」


呆れ気味の優だけどおれ達の言葉が響いたようで小さく笑い出した。あほだなって思うけど、本当にあほなんです。平和の国の住人なんで。


「なるほど、だから俺の連絡も見てもらえなかった訳ですね」

「へ」


どうしてあなたはいつも、知らぬ間にそこにいるのでしょう。赤羽さん。




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