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しおりを挟む勢い余って捨て台詞のようなものを笑いながら残してしまったので二階にいた優を捕まえて先輩たちの制止も聞かずシェアハウスから飛び出した。
バイト先までは久しぶりに電車に乗って、訳がわからない顔の優に秋と2人で笑えてきて過呼吸寸前だった。
だっておれたち悪い子かも。怒られた次の日にこんな事してる。
「だからさ、優も一緒に欲まみれになろう?」
「馬鹿なの?」
おれたちの話を聞いたら優は優様モードが発動した。ああやっぱりこれだよね。もはや心地いい。
出勤時間よりも早く出てしまったためカフェの控え室を借りた。
春さんは相変わらず優しくてなんだかテンションが高いおれたちにもくすくす笑いながら裏に通してくれて新作の紅茶まで出してくれる。これだから春さん好きが止まらない。
おれ達まで悩ませると言うなら、そもそも一緒に悩みたいわけだ。1人でなんてさせない。
「それで、どうしたの突然」
椅子に優を座らせておれは腰に手を当てる。
「だって優ったら、親友に内緒でひとりで悩むなんてずるい!」
「ずるいも何も悩ませないために……」
「やりたいことやんのが俺達だろ」
「……はあ」
大きくため息。
でも仕方なさそうに笑ってくれる。
「だけど推測で飛び出してきたから詳細プリーズ」
「……ほんとバカ」
ついに笑い出した優。
それでも、頭のいい彼は数秒考えると話をまとめたようだ。
「まあ、先ずは酔って熱くて外にでて、寝ちゃったらしくて、そしたらあの榊が車に拾ってくれてた」
「それは優が悪いな」
昨日怒られた仲間が言うことでは無いけど、普通に危ないよね。
優もその事に対しては飲んだ時からわかっていたはずだ。
「俺もそれは謝った。問題はそこからでね、俺多分……榊李恩の確信ついたんだよね」
「と言うと?」
「俺に興味ないのに興味あるって言うから、その先に見てるものって俺じゃなくてその結果に意味があるんじゃ無いかと思って」
「んーー」
優の頭の中では図式に組み込まれているのかも知れないけど、おれたちとしてはなんのこっちゃだ。秋と2人で首をかしげる。
「……いや、あいつの事は後で話すよ。や、キスされたのは本当にムカつくし思い出したら胃がむかむかしてきた……」
「お、おお。落ち着いて」
春さんの紅茶を差し出すとその香りの良さで目つきが優しくなる。春さんの癒し効果は絶大だ。
「美味しいこれ……」
ことりとティーカップを置いたら、静かで全てを見る目が輝いた。おれが好きな優の目だ。
「実際問題、榊李恩がどうとかじゃないんだよね。起こった事に対してどう思うかどうするのか、どうしたいのかって事の方が問題で、それが暮刃先輩とズレてる事に気づいて」
その後聞いた話はなんとも2人らしい会話だった。
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